山口経済レポート連載記事 – ページ 7

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山口経済レポート

院長が2013年から山口経済レポート(http://www.ykr.co.jp/index.html)に毎月掲載している過去のコラムを掲載しています。腰痛を中心に様々な整形外科の疾患や情報を発信していますので順次アップしていきます。

1/19山口高校健康の日に「ゼロから始めるケガ予防」という講演をしましたのでそのポイントをお話しします。ケガの種類としてケガは不注意などのため、体に傷を負うもので、キズは切ったり打ったりして、皮膚や肉を損じたものです。傷の治療の基本は切り傷は、出血は圧迫と挙上と固定を行い、深い時は医療機関で縫合します。汚染がある時は、水道水でまず十分洗浄して、汚染なくなれば湿潤療法を行いますが、汚染があれば局所麻酔後にブラッシング後に湿潤療法を行います。スポーツ傷害はスポーツ外傷とスポーツ障害があり、スポーツ外傷は一回の外力で起こるケガで、スポーツ障害は故障やオーバーユースが原因で生じます。高校生では足関節、膝関節、手関節、手指のケガが多いのが特徴です。スポーツ傷害は、ラグビー、柔道、バスケ、サッカー、体操、バレーの順で多く、疾患としては骨折、脱臼(関節)、靭帯損傷(捻挫)、肉離れ(筋肉の損傷)、腱断裂が代表的疾患であり、特に脱臼は緊急性があります。症状は腫脹、発赤、熱感、疼痛、機能障害(炎症)が特徴的です。足首の捻挫は実は靭帯損傷であり晴れや内出血がひどいほど重症と考えたほうがいいです。外傷の応急処置として、RICE(Rest:安静、Icing: 冷却、Comppression:圧迫。Elevation:挙上)が有名ですが、それに加えて最近ではPRICEと言って、Protection:保護、固定(松葉杖やギプスによる)が加わります。死亡や重度障害につながるケガには心臓震盪、頭頸部外相(脳震盪、頚椎・頸髄損傷)、胸腹部外傷(ショック症状)、顔面外傷(鼻出血、眼、口腔内)があり、高1で最も多く、脊髄損傷は高2、3で多くなります。心臓震盪は心室細動という致死的不整脈が原因で、胸部への軽い衝撃で心停止が起こりますが、心肺蘇生(CPR)と早期除細動(AED)で救命率は向上します。頭頸部外傷発生時は、対応フローチャートに基づき、意識障害がある場合は119番通報と心肺蘇生、AEDの手配を行いますが、意識があるが、両手足の麻痺がある場合には頸髄損傷の疑いがあり、頚椎カラー固定で保護したのちに最寄りの医療機関に救急搬送しますが、片麻痺の場合には脳神経外科などに送ります。

また、スポーツ障害とは運動中に発現した筋、骨格系の疼痛症候群 であり、明らかな外傷、疾患、変形または異常がないもの、反復的な微小外傷の結果生じるもので、こちらは骨端症、離断骨軟骨炎(肘、膝)、筋腱障害などがあります。

運動により脂肪が減り、筋肉が増え、骨が丈夫になり、心臓が大きくなり、神経は脳から筋肉への命令を早く効率よく伝えるようになリます。また、脳に血液と成長因子が多く送り込まれて記憶力、学習能力、認知力が高まり老化防止になり、運動中に気分を高揚させる化学物質(エンドルフィン)が分泌されます。運動により免疫機能が向上したり、運動能力や趣向の違いは遺伝子が影響するが80パーセント以上は環境に起因し、運動には有酸素運動は不可欠であり、筋力トレーニングと並行して行うことには科学的根拠があります。

新年あけましておめでとうございます。本年も最新の腰痛のみでなく運動器にまつわる最新の情報を発信していきますので宜しくお願い申し上げます。

最近のロコモティブシンドローム(運動器症候群)の認知度ですが、厚生労働省が掲げる「健康日本21」で2022年までに国民の認知度を80%以上にあげる、「足腰に痛みのある高齢者の割合の減少」という目標に対して、2016年度最新の認知度調査では認知度は47.3%と伸び悩んでいます。特に若い人の認知度が特に低いというデータが出ており、日本整形外科学会も若い人へのさらなる啓蒙が必要と考えており、日本整形外科学会の丸毛会長は、45歳ころから運動器のライフプランを考え、骨粗鬆症など運動器疾患への治療はもちろん、柔軟性低下、姿勢変化、筋力低下などにも早期に介入することで運動器の健康を保つことが大切、と述べておられます。高齢者のみでなく若い人にも運動器の大切さを理解してもらい、将来寝たきりにならないようにするための運動習慣をどうつけていくか?を啓蒙するために学会とロコモチャレンジ協議会と共同して啓蒙ツールを作成、実施しています。その取り組みの一つとして「ロコモ度テスト」を開発し、毎年10月8日を骨と関節の日として、you tubeや様々なイベントなどで紹介、計測も行なっています。山口県臨床整形外科医会でも昨年下関市で市民公開講座を行い、ロコモ度テストを参加者に体験していただきました。

ロコモ度テストは立つ・歩く・座るなどの日常生活に必要な身体の移動に関わる移動機能を確認するテストで、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」(問診)の3つのテストからなります。「立ち上がりテスト」は下肢筋力を調べる検査で、片脚で40cmの高さの椅子から立ち上げれない場合にロコモ度1(移動能力低下が始まっている状態)、両脚で20cmの高さから立ち上げれない場合にはロコモ度2(移動能力の低下が進行している状態)になります。「2ステップテスト」は大股で二歩分の歩幅を計測し身長で割って、1.3未満でロコモ度1、1.1未満でロコモ度2と定義します。ロコモ度1では筋力やバランス力が低下しているのでロコトレ(片脚立ちやスクワット)やタンパク質とカルシウムを含んだバランスの良い食事をとる必要があります。ロコモ度2は移動機能の低下が進行し、自立した生活ができなくなるリスクが高くなっているので、関節や腰に痛みを生じる場合には整形外科専門医の受診を推奨しています。ロコモ25は25問の質問に答えて7点以上はロコモ度1、16点以上はロコモ度2と定義していますので心当たりがある方はロコモチャレンジのHPから参照してください。

ロコモティブシンドロームは年齢とともに足腰が衰えて移動能力が低下し、進行すると寝たきりになるリスクが高い状態ですが、近年、スマホ・ゲームの普及の低年齢化や、屋外で遊舞ことが減少したことなどにより、子どもの体に異変が生じています。体がかたい、バランスが悪いなど、子どもの運動器機能が低下しており、この状態が「運動器機能不全」または「子どもロコモ」と呼ばれています。当院での具体例としては転倒した時にとっさに手がつけず顔面を強打したり、手をついた時に両側の手首の骨の骨折を生じたりする子もいます。 埼玉県医師会が平成22~25年、県内の幼稚園から中学生までの子供1343人に運動器の検診を行った結果、約40%に機能不全の兆候がみられ、3人に1人に、ロコモの疑いがあるという報告もあります。

そこで平成28年4月1日から学校保健における「運動不足に起因する運動器機能不全」を早期発見するための運動器検診運動器検診が開始され、学校医が受診を勧告した児童・生徒等は医療機関を受診することとなりました。では子どもロコモはどのようにしてチェックするか?ですが、“肩関節の挙上が完全に出来ない”、“ヒザの後ろを伸ばし前屈して指先が床につかない”、“しゃがみ込み動作が完全に出来ない”、“うつ伏せでヒザを曲げたとき踵が殿部につかない” 、“片脚立ちが5秒以上出来ない”のどれか一つでも当てはまれば子どもロコモであり、その状態のままで運動・スポーツを行えば傷害を生じやすくなります。 整形外科に受診された場合、体幹の固さや関節(股関節、肩関節、手足の指の関節)の可動機を左右でチェックしたり、姿勢のチェックを行います。猫背や骨盤が後ろに倒れ過ぎていないか、顎が出ていないか?などもチェックして姿勢指導、ストレッチ指導を行います。

姿勢指導では一般的には耳・肩・大転子(大腿部の付け根の骨の出っ張り)・膝関節前部・足首の外の骨が一直線上になるようにします。動的ストレッチでは上肢振り、下肢振り、上下肢振り運動(クロスモーション)などを指導し、静的ストレッチでは大腿前面、後面、アキレス腱などを指導します。膝後面のハムストリングが固い場合にはジャックナイフストレッチ(足首を手で持って座った状態から伸ばしていく)、浮き足(扁平足、外反母趾など)の指導として足指じゃんけん(足趾でグー、チョキ、パーをする)などを指導しますので運動器検診で異常を指摘された場合には整形外科を受診して相談してください。

今回の二つのキーワードを紹介します。「フレイル」(虚弱)とは、心身機能の著明な低下のことであり、健常な状態と要介護状態の中間の状態として、日本老年医学会が2014年に提唱しました。「サルコペニア」とは筋肉減少症でフレイルの最大の要因となります。ヒトの筋肉量は40代より低下が始まり、年0.5パーセント減少し65才以上減少率が増加して80才までに30-40パーセント低下します。高齢者の多くは健常な状態から、筋力が衰える「サルコペニア」という状態を経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至ると言われています。

サルコペニアの診断基準は、(1)筋肉量の低下―両手足の筋肉量の減少、(2)筋力の低下―握力の低下(男性26kg未満、女性18kg未満)、(3)身体能力の低下―日常の歩行速度の遅延(秒速0.8メートル以下)、とされています。歩行速度の目安としては青信号で横断歩道を渡りきれるか?でも判断可能です。簡便な自己診断方法として東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らが考案した「指輪っかテスト」は両手の親指と人さし指で輪っかをつくり、ふくらはぎの最も太い部分を囲み、指のあまり具合で、隙間ができる場合はサルコペニアの疑いがあります。

一方フレイルは動作が遅くなったり転倒しやすくなったりする「身体的要素」、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題を含む「精神的要素」、そして独り住まいや経済的な困窮などの「社会的要素」の3つの要因が関与しています。身体的要素にはサルコペニアやロコモティブシンドロームが含まれ、精神的要素にはうつや認知症が、社会的要素には孤独や閉じこもりが含まれており、より広範な用語です。

サルコペニアやフレイルの予防は定期的に体を動かす運動(前回紹介したウォーキングなど)を行うこと、良好な栄養状態を保つこと、積極的に社会活動、社会参加を行うことです。栄養では性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質(肉や魚、大豆、牛乳)を毎日食事から取ることが望ましいと言われています。若年者や中年で運動する習慣のない方は、是非ウォーキングから始めることをお勧めします。

鈴木大地氏が長官を務めるスポーツ庁が平成27年度運動能力調査結果を10/11に発表しました。昭和39年東京五輪から始まって52回目で6~79歳の約7万4,000人を対象に実施されました。体力テストの内容は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とひ?、20mシャトルラン、立ち幅とひ?と平成11年度から導入された加齢に伴う新体力テストがあります。新体力テストとは6-11才は50m走、ソフトボール投げ、12?19才は50m走、ハンドボール投げ(50m走と20mシャトルランは選択)、20-64才は急歩(男子1,500m,女子1,000m) であり(急歩か20mシャトルランは選択)、65-79才はADL(日常生活動作)テストという問診を行い握力 、上体起こし .長座体前屈、 開眼片足立ち 、10m障害物歩行、 6分間歩行 の中から実施する項目を決定し、各項目の成績を10点満点で得点化し、実施項目の点数を合計します。

運動・スポーツを週1日以上実施した人の割合は、女子は10歳の83.6%がピークとなり、高校時代に大幅下落します。18歳で全ての年代を通じ最低の33.7%に落ち込み、40歳代後半で底(45.9%)を迎える男子よりも早い段階で運動から離れており、50歳代以降では男子を上回ります。原因として女子は思春期の身体の変化などから運動を避け、20歳代以降は仕事や育児で忙しくて運動する時間のないことがあるそうです。

昭和60年度と比較すると、男子では運動実施状況に大きな変化は見受けられませんが、女子については10代後半から20代の若い世代で、運動・スポーツを実施している人が大幅に減少しているため、青少年を含めた生涯を通じて運動習慣を継続させていくための対策が重要であると述べてあります。また子供の体力・運動能力は昭和60年頃と比べると依然低い水準にありますが、よく運動している子供に比べ、あまり運動していない子供がより低下しているので、今後は運動が不足しがちな子供たちへの対策が重要であるということも述べられています。

一方で65才以上の高齢者の体力が向上しており、体力テストの平均合計点は65~69歳の女子、75~79歳の男女で過去最高となったそうです。 運動習慣は生涯を通し?て持ち続けることか?重要て?あり、過去の運動・スホ?ーツ経験か?ない人て?も、現在実施することにより体力や健康によりよい影響を与えることか?て?きるそうです。この結果から言えることは、運動習慣は何才から始めても遅いということはないので、この記事を読んで運動しようという気持ちになられた方は是非散歩など行動を起こしていただけると幸いです。

2015年7月12日に放送された、NHKスペシャル 「腰痛・治療革命 ~見えてきた痛みのメカニズム~」をご覧になられた方はおられるでしょう。この番組は東京大学整形外科の松平浩先生がNHKと協力して製作されたものです。このお手本になったのが15年以上前にオーストラリアで実施された「腰痛に屈するな!」というキャンペーンで、具体的には権威のある医師や芸能人が腰痛があっても安静は最小限にして運動したほうがいいですよ、というメッセージCMをテレビで繰り返し流した結果、腰痛による欠勤日数が減少したり、医療費が20%削減したという論文です。

実は松平先生によるとその年の再放送のリクエストが最も多かったそうで、今までに何回か再放送されています。なぜこれほど反響があったかというと、腰痛に対する考え方の意識変革と前回お話しした恐怖回避思考を減らすことが証明されたからです。

ステップ1として腰痛は怖くない、腰椎椎間板ヘルニアの9割は自然に消失する、痛みを減らすには怖がらずに動くこと、動くことが一番の薬などのメッセージを映像で見ることで慢性腰痛患者さんの38パーセントが改善し、ステップ2としてこれだけ体操として背中を反らすエクササイズを行い、慢性腰痛患者さんの56パーセントが改善したことを論文や本でも証明されました。

ステップ3としてオーストラリアで行われている認知行動療法を紹介され、カウンセリング(どんな動きが痛みを誘発するか?)と運動を1時間おきに繰り返すことを1日8時間3週間行うことで、9人中8人が改善したことも映像で紹介されました。この番組の反響が大きかったのは、一般の視聴者にも共感を呼んだからに他なりませんが、腰痛の患者さんに正しい情報を与えて励ます態度を行うことで恐怖回避思考を回避できること、患者さんを痛み行動化している人として捉えることなど医療者側にも意識改革が必要であることを再認識しました。

皆さんもぜひNHKの以下のHPでその動画を視聴することができますので、ぜひ一度ご覧いただき、腰痛に対する認識を変えていただければ幸いです。

http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/

参考論文:Spine. 2001;26(23):2535-42.

非特異的腰痛(一般的な腰痛)を姿勢や動作に起因する腰痛と心理社会的ストレスによる脳機能の不具合に起因する腰痛に分けると、治療に難渋するのは後者の腰痛です。恐怖回避思考とは、腰痛になったことで将来さらに腰痛が悪化するのではないか?もう治らないのではないか?、と悲観的に考えてしまう結果、腰を必要以上に動かさない、いわば腰を過保護にしてしまう考え方です。

欧米の研究では恐怖回避思考がその後の腰痛の回復具合に悪影響を与えることが分かっており、通常の消炎鎮痛剤などでは治療効果が乏しいことが分かってきました。特にこの恐怖回避思考に影響を及ぼすのが、医療従事者から腰痛の時は安静にするように指導されたり、労働災害で生じた腰痛です。

ぎっくり腰などの痛みの体験に、安静にしなさい、といった脅迫的な情報が入ったり、本人がネガティブな感情を持つと、腰痛に対して悲観的な解釈をしてしまい、腰痛への不安や恐れが生じ、過剰な警戒心を持ったり、腰痛を引き起こす動作を回避する行動をとるようになり、腰の機能障害を引き起こしてしまったり、うつ傾向になったりするといった、痛みの悪循環が形成されます。

私たち医療従事者は患者さんがこの恐怖回避思考による悪循環に陥らないように、腰痛に対する正しい情報や患者さんを励ます態度をとることで、不安や恐れがないよう状態を目指し、腰痛と楽観的に向き合えるようになると経過・回復に導くことが必要になります。

参考図書

松平浩:腰痛対策最前線第5回 東京 法規出版「地方公務員 安全と健康フォーラム」2015

松平浩:腰痛は「動かして」治しなさい 講談社+α文庫

以前このコラムでも述べましたが、日本の腰痛診療ガイドラインでも運動不足は腰痛発症の危険因子である(推奨グレードC)と記載されています。高齢者でも運動量と腰痛発症の予防には有意な相関があることから、腰痛に運動は効果があると言えますが、ではどのくらいの運動をどれぐらいの強度で、どれだけの頻度で、どれぐらいの期間行うことが有効か?ということに関しては明かな科学的な根拠を示すデータが乏しいことも事実です。

一番お勧めの運動は何かと言うと、ウォーキングです。ウォーキングの強度、頻度、期間など腰痛に関してはデータがないのですが、最近注目されているのが東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利先生の研究で、群馬県中之条町の65歳以上の全住民5000人を15年以上身体活動と病気予防の関係を調査され、病気にならない歩き方を提唱され、そのメッツ健康法は厚労省の運動処方ガイドラインにも取り入れられ、成果を出している自治体もあります。

生活習慣病に関して、厚労省のHPの健康づくりのための身体活動基準2013に掲載されていますが、18-64歳までは3メッツ以上の身体活動(大股で汗ばむ程度のウォーキング)を毎日60分と3メッツ(息が弾み汗をかく程度)以上の運動を毎週60分行うことを推奨していますが、青柳先生はこれをさらに詳細に分類し、うつ病予防には1日4000歩/中強度5分以上のウォーキング、認知症、心疾患、脳卒中予防には1日5000歩/中強度7.5分以上のウォーキング、がん、動脈硬化、骨粗鬆症予防には1日7000歩/中強度15分以上のウォーキング、高血圧、糖尿病予防には1日8000歩/中強度20分以上のウォーキング、メタボリックシンドロームの予防には1日10000歩/中強度30分のウォーキング(75歳以上なら1日8000歩/中強度20分以上のウォーキングでよいと、著書の中で述べられています。

またポールウォーキング(ノルディックウォーキング)は姿勢もよくなるので勧められており、私もノルディックウォーキングは自分もやっていますが、中強度の運動として患者さんにもお勧めしています。腰痛予防に関しては骨粗鬆症予防の1日7000歩/中強度15分以上のウォーキングを目標に始めることをお勧めします。

(参考図書:やってはいけないウォーキング 青柳幸利 SB書房)

この言葉は聞きなれないかもしれませんが、脊椎の専門医であれば腰の診察を行う上で必ず念頭に置かなければならない疾患の一つです。

末梢閉塞性動脈疾患はアテローム性動脈硬化症に起因する心血管系疾患として、冠動脈疾患、脳卒中に次いで3番目に多く2010年での世界の患者数は2億2000万人と言われ、東南アジアで5480万人であり、その治療は21世紀の世界的な取り組むべき課題とされます。足のしびれ、疼痛で整形外科を受診する患者さんで、間欠跛行(歩行の途中で休憩が必要であり、しばらく休んだらまた歩ける)があるときに、腰部脊柱管狭窄症がありますが、この疾患との違いは間欠跛行での休憩の仕方にあり、腰部脊柱管狭窄症では休憩するときに必ず前かがみや椅子に座ることが必要となります。

理由は腰の神経が狭窄すると馬尾神経の阻血、浮腫、炎症が生じるためです。末梢動脈閉塞症に伴う間欠跛行は下肢の動脈が阻血になると大腿や下腿の筋肉の血流が途絶えて下肢の痛みが生じますが、休憩するときには立ったままで楽になります。重症度分類としてFontaine分類があり安静時疼痛しびれのみのI度、間欠跛行のII度、安静時疼痛のIII度、壊死切断に至るIV度があり、症状のないI度のときに早期発見、早期治療を行うことが重要であると考えます。

そこで当院を下肢のしびれ、疼痛で受診した50歳以上の患者さん996例のうち血圧脈波検査装置でABI(腕の血圧を足首の血圧で割った値)が0.9以下を末梢閉塞性動脈疾患としてその頻度を調査したところ、その頻度は55例6.3%でした。そのうち血管外科紹介患者は18例33%、ステント・バルーンでの治療患者は4例7%でした。腰部脊柱管狭窄症は23例 42%に存在したが、脊椎外科紹介手術例は1例2%でした。
このことから足のしびれ、疼痛を訴える患者さんの中で末梢閉塞性動脈疾患は決して頻度は高くありませんが、早期発見により、一人でも多く足の切断となるのを防ぐために有用な検査と考えています。当院外来でも足の病変に悩む患者さんが多いので、少しでも知識を吸収し、治療に還元するため、フットケア指導士の資格を取得しました。当院理学療法士も取得しており、今後は看護師とも協力して血管病変だけでなく、幅広く足の病変に対しての取り組みを行っていきます。

今回は腰痛の話と離れますが、山口市黒川1834-2に、この度オープンするDrs. Fitness K STUDIOについてお話しします。

H24年4月に大内御堀に開業してから約16000名の患者さんを診察、治療してきました。患者さんのニーズにこたえる、を基本理念とし患者さんとの対話を重視し、疾患の早期発見、早期治療をモットーとして、必要と思った患者さんにはできるだけ専門医療機関(整形外科医として患者さんにとって一番いいと思う専門医)の紹介を心がけてきました。また腰痛、頚部痛、関節痛の患者さんに対してもマッケンジー法を基本とした理学療法士による運動療法を提供し、足病変には足底板療法を提供することで地域医療に貢献していると自負していますが、まだまだ学ぶことは多いと思っています。腰痛、肩こりの患者さんにはセルフエクササイズを中心とした再発予防にも取り組んでいますが、症状がよくなるとついエクササイズをしなくなり、再発を繰り返される患者さんにも遭遇することも多々あります。そこで開業医として今後自分のできることを考えると、キーワードは障害のある患者さんに対して治療するだけでなく、(再発)予防医療に力を入れることに取り組み、将来高齢化社会に備えた介護予防にも取り組みたいと考えました。

地域の人の健康増進を介してのコミュニティーの場の提供、スポーツ傷害の復帰へのサポートや健康運動士、健康運動実践指導者などを揃えた、地域の健康ステーションともいえる新しいフィットネスクラブを目指します。器械による筋力トレーニングより、スタジオをメインとした少人数から大人数で老若男女が個人個人のレベルに合わせて頑張りすぎないプログラム作りをスタッフがお手伝いします。

また食に対しても野菜を中心とした体に良い、疲労回復に効果のあるレストランalain croix(アランクロア)を併設し、運動、医療、食事の三位一体のプログラムを提供していきたいと思います。