山口経済レポート連載記事 – ページ 3

  • HOME
  • 山口経済レポート連載記事 – ページ 3

山口経済レポート

院長が2013年から山口経済レポート(http://www.ykr.co.jp/index.html)に毎月掲載している過去のコラムを掲載しています。腰痛を中心に様々な整形外科の疾患や情報を発信していますので順次アップしていきます。

-子供の首が回らない時、急性斜頸の原因-

前回高齢者での急性頚部痛を紹介しましたが、今回は小児の急性斜頸(首が屈曲、側屈、回旋した状態)についてお話しします。小児で首が回らない、という症状で受診されます。大人の場合は朝起きたら首が回らない、ということが多いのですが、小児は誘引なく生じたり、遊んでいる間に(縄跳びをしていて、というケースもありました)生じることが多いです。まず問診で風邪などで高熱が出ていたことがないか?(炎症性、感染性の疾患を疑います)、転落など外傷がないか?を聞いて、頚椎の前後面、側面、開口位のX線写真を撮影します。開口位とは口を大きく開けて正面から第1頸椎と第2頚椎の関節環軸関節を撮影して関節のすきまの左右差を確認します。この際に左右差があったものを環軸関節回旋位固定と診断します。第2頚椎(軸椎)の歯突起が第1頚椎の後方中央に位置せず回旋した状態で固定される状態で、原因は歯突起の周囲の靭帯(環椎横靭帯と翼状靭帯)が緊張して歯突起が亜脱臼して動かなくなってしまう現象が起こります。正確な診断はCTで行います。治療は一般的には消炎鎮痛剤を併用して、頚椎カラー固定を行い、仰向けでなるべく寝てもらうよう生活指導を行います。数日から1週間で良くなることがほとんどですが、痛くて仰向けで安静に寝れない場合や、改善傾向がない場合は脊椎専門医がいる総合病院に紹介して入院のうえ、頚椎持続牽引を行うこともあります。難治例や重症例ではハローベストというジャケット式の装具を装着し頭蓋骨に皮膚の上から特殊な スクリューで固定するケースや全身麻酔下に徒手整復、手術(固定術)を行う場合もあります(非常に稀です)。当院では、高熱を伴い感染性疾患を疑う場合や、転落などの明らかな外傷を疑うケース以外(これがほとんどですが)は徒手整復術を試みます。ベッドに仰向けて寝ることができ、頸がほぼまっすぐ向くことができる場合に限って徒手整復を行います。まず、ベッドから頭を出し、頚椎をしっかり把持して愛護的に牽引を加えながら顎を引いてから頸部を伸展させ、痛みを確認しながら回旋も軽度加えながらさらに伸展させ、これを数回繰り返します。その後座って斜頸が改善したことを確認しますが、座位になると徐々に斜頸に戻る場合がほとんどですので、座位で姿勢指導と自宅で自分でできるセルフエクササイズ(マッケンジー法)を指導します(理学療法士に指導してもらいます)。この方が頚椎カラーのみを処方するより早く改善することが多いです。最近特に問題になっているのが姿勢不良による肩こり(スマホやゲームなどが原因の可能性が指摘されています)が低年齢化していますので、この疾患も普段の姿勢と全く関連性がないわけではないと考えます。子供が急に頸が回らない、という場合にできるだけ整形外科専門医を受診することをお勧めします。

-急性頚部痛(急に首が回らない)の原因で注意すべき疾患-

ぎっくり腰と同じように急に首が痛くて動かせない、という経験をお持ちの方は少なくない、と思います。多くはいわゆる寝違えで、朝起床後首が痛くて回らない(後方に伸展できない、左右に回旋できないことが多い)、慢性的な肩こりや姿勢不良や睡眠中の頚部の無理な姿勢などが原因である場合が多いのですが、その中でも私も最近経験したクラウン・デンス症候群について紹介します。この聞きなれない言葉は、1985年に報告され、第1頸椎と第2頸椎の環軸関節の十字靭帯に生じる偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)です。CTで第2頸椎歯突起の後方を取り囲む半円状の石灰沈着がさながら王冠に似ていることから名付けられたものと考えられます。ちなみに痛風は尿酸ナトリウム結晶が関節内に沈着して生じます。高齢女性に多く、発熱も38度以上や白血球も高値になることも多く、疼痛の強さと血液検査からは化膿性脊椎炎ではないか?と疑うこともあります。X線写真では診断が難しいのでMRIやCT検査が必要ですが、通常MRI検査の方が有用なのですが、このクラウン・デンス症候群に限っては確定診断はCTが最も有用です。環軸関節に平行なCT画像で第2頸椎後方の十字靭帯に沿って淡い(あるいは明らかにはっきりした)石灰沈着が認められれば診断は確定です。治療は非ステロイド性消炎鎮痛剤がよく効きますが、腎臓が悪かったり、十二指腸潰瘍のある方にはステロイド剤を使用(あるいは併用)することもあります。通常は1週間以内に痛みも可動域制限も良くなります。頻度は少ないのですが同じような疾患で(急性)石灰沈着性頸長筋腱炎があり、こちらも急性の頚部痛、可動域制限に発熱、白血球増加があり、嚥下痛が加わるとこちらをより疑います。環軸関節前方に石灰地沈着を生じるのでMRIでの信号変化でも病変の部位は確認できます。

先日下関でフットケア講演会があり「整形外科クリニックで取り組むフットケア」という講演をしました。そもそもフットケアって何?と思われる方が多いと思いますので解説するとともに当院での取り組みを紹介します。

2003年にフットケア学会が発足し、2008年からフットケア指導士認定制度を作ってフットケア指導士を養成し、各地で研究会や講習会を行って普及に努めています。フットケアとは「少しでも長く歩ける足を守り、足から全身を診ること」であり、足の健康維持のためのフットケア(足の観察、保温、保湿など)、足病変のリスクのある足に対する予防的フットケア(靴ずれ、角質肥厚、胼胝、鶏眼の処置)、足病変軽症の場合に行う医療的フットケア(薬物療法、炭酸泉浴など)、中等度から重度の足病変に対する医療的フットケア(バイパス手術や切断術など手術的治療)、対症療法的フットケア(疼痛コントロール、悪化防止)の5段階に体系化されています。足病変とは足のびらん、水泡、潰瘍、感染症、壊疽、変形などを言いますが、糖尿病や閉塞性動脈硬化症を有する場合には足病変を放置しておくと歩行困難となったり、重篤化すると切断や死に至ることもあるので、早期発見、早期治療が重要です。フットケアは医師(内科、血管外科、整形外科、形成外科、皮膚科)、看護師、理学療法士、義肢装具士など多職種で連携する必要がありますが、その中でフットケア指導士は中心的な役目を担いますが、実際には看護師が多数を占めます。整形外科医は以前から運動器の足病変を治療してきました。急性疾患として骨折・脱臼・捻挫(靭帯損傷)、糖尿病性壊疽や足の虚血による切断、慢性疾患として巻き爪、胼胝、鶏眼、変形性足関節症、外反母趾、骨髄炎などの感染、先天性疾患として内反足、扁平足などがあります。私は2012年に山口県実践フットケア研究会に参加してから、フットケアのことを知り、当院でもフットケアに対応できるように理学療法士の林と私がフットケア指導士を取得しました。閉塞性動脈硬化症は3%の頻度ですが、糖尿病患者で5-10%、心血管疾患患者、透析患者では10-20%と頻度が高くなります。一方腰部脊柱管狭窄症の頻度が男女とも10%で推定600万人と言われており、閉塞性動脈硬化症の合併が13-26%あるとされます。当院を受診される下肢痛、しびれ、冷感や間欠跛行(歩行すると下肢痛が強くなり、立ち止まって休むとまた歩けますがそれを繰り返すこと)などの症状の患者さんにおける閉塞性動脈硬化症の頻度と腰部脊柱管狭窄症の合併率を調査しました。血圧脈波検査装置でABI(足関節上腕血圧比)を調べて下肢の動脈の狭窄や閉塞の程度を評価します。0.9以下は閉塞性動脈硬化症(または末梢動脈疾患)と診断して軽症例は薬物療法、中等度から重症例は血管外科に紹介して造影CT検査で下肢動脈の狭窄・閉塞の評価をして手術(バルーンやステントなどの血管内治療かバイパス術など)になることもあります。下肢しびれ、疼痛で2013年4月から2015年9月までで当院を受診された50才以上の924例(男性359例、女性565令、平均年齢71才)の患者さんで閉塞性動脈硬化症と診断したのは55例(6.3%、平均年齢76才)でした。重症度では無症状(疼痛、しびれのみ)36例、間欠跛行18例、安静時疼痛1例で、血管外科紹介が18例(33%)、うち手術を要したのが4例(7%)でした。心血管症状、糖尿病の合併は40例75%、腰部脊柱管狭窄症が23例(42%で)で、脊椎外科紹介で手術されたのが1例(2%)という結果でした。この結果より整形外科クリニックを受診する患者さんで閉塞性動脈硬化症の患者さんを早期発見するのに血圧脈波検査装置でのABI測定は有用でした。また当院での巻き爪治療については以前から爪に2ヶ所穴を開けてマチワイヤーという0.4-0.5mmのワイヤを通して矯正していますが、矯正力は強いのですが、爪を少し長めに伸ばさないとワイヤーがかけれないので、最近では3TO(VHO)というワイヤーを爪に穴を開けずに矯正する方法を行なっています。理学療法(リハビリテーション)ではマッケンジー法に基づくメカニカルな評価、治療を行なっていますが、足の痛みに対しては、足底板療法も行なっています。

当院で行うフットケアは、フットケア指導士の二人を中心として足病変の診断、治療を行なっていますが、一クリニックでできることには限界もあり、できることをコツコツ積み重ねていきますが、重症例(下肢虚血高度例など)は速やかに山口済生会病院の血管外科やフットケア外来に紹介して病診連携を行っています。

今回はヒップスパイン症候群について解説します。聞きなれない言葉、とお思いでしょうが、腰の骨を支えるのが骨盤で骨盤を支えるのが股関節であるので両者は切っても切れない関係にあり、一方の病態が他方の病態に影響します。

この名称は1983年OffierskiとMacnabが、提唱した概念です。股関節、脊椎の両方に変形性変化を認めるが病態の主因はいずれか一方であるsimple type、股関節、脊椎の両方に変形性変化を認め、その両方が病態に関与するcomplex type、股関節、脊椎の病態が互いに影響しあっているsecondary type、両者に原因があることを知らずに誤った治療がなされたmisdiagnosed typeの4 typeがあります。股関節痛および脊椎痛の診断として、変形性股関節症、疲労骨折、股関節の骨壊死、関節唇損傷、椎間板ヘルニアと神経圧迫、脊椎管狭窄症、仙腸関節機能障害などがあり、痛みや動作困難の原因探索の際、脊椎と腰の両方に着目することにより誤診の潜在的リスクを減らすことができ、両方の部位で起きている状態を管理することが持続する症状の改善につながる、という米国の論文もあります。3cm以上の脚長差を有する症例では、腰椎側弯頻度は有意に増加し、短下肢側へ骨盤は傾斜し、腰椎側弯凸側も短下肢側へ向かいます。それにより骨盤の回旋障害が生じ代償性に腰椎の前弯や側弯が生じます。また、股関節屈曲拘縮では骨盤の前傾により腰椎前弯が増強し、腰椎椎間関節への負荷の増加に伴う椎間孔の狭小化により、腰痛や神経根症状が生じることがあるので注意が必要です。対策の一つとして、当院では腰痛があるときに、必ず股関節を含むよう撮像しています。

1/19山口高校健康の日に「ゼロから始めるケガ予防」という講演をしましたのでそのポイントをお話しします。ケガの種類としてケガは不注意などのため、体に傷を負うもので、キズは切ったり打ったりして、皮膚や肉を損じたものです。傷の治療の基本は切り傷は、出血は圧迫と挙上と固定を行い、深い時は医療機関で縫合します。汚染がある時は、水道水でまず十分洗浄して、汚染なくなれば湿潤療法を行いますが、汚染があれば局所麻酔後にブラッシング後に湿潤療法を行います。スポーツ傷害はスポーツ外傷とスポーツ障害があり、スポーツ外傷は一回の外力で起こるケガで、スポーツ障害は故障やオーバーユースが原因で生じます。高校生では足関節、膝関節、手関節、手指のケガが多いのが特徴です。スポーツ傷害は、ラグビー、柔道、バスケ、サッカー、体操、バレーの順で多く、疾患としては骨折、脱臼(関節)、靭帯損傷(捻挫)、肉離れ(筋肉の損傷)、腱断裂が代表的疾患であり、特に脱臼は緊急性があります。症状は腫脹、発赤、熱感、疼痛、機能障害(炎症)が特徴的です。足首の捻挫は実は靭帯損傷であり晴れや内出血がひどいほど重症と考えたほうがいいです。外傷の応急処置として、RICE(Rest:安静、Icing: 冷却、Comppression:圧迫。Elevation:挙上)が有名ですが、それに加えて最近ではPRICEと言って、Protection:保護、固定(松葉杖やギプスによる)が加わります。死亡や重度障害につながるケガには心臓震盪、頭頸部外相(脳震盪、頚椎・頸髄損傷)、胸腹部外傷(ショック症状)、顔面外傷(鼻出血、眼、口腔内)があり、高1で最も多く、脊髄損傷は高2、3で多くなります。心臓震盪は心室細動という致死的不整脈が原因で、胸部への軽い衝撃で心停止が起こりますが、心肺蘇生(CPR)と早期除細動(AED)で救命率は向上します。頭頸部外傷発生時は、対応フローチャートに基づき、意識障害がある場合は119番通報と心肺蘇生、AEDの手配を行いますが、意識があるが、両手足の麻痺がある場合には頸髄損傷の疑いがあり、頚椎カラー固定で保護したのちに最寄りの医療機関に救急搬送しますが、片麻痺の場合には脳神経外科などに送ります。

また、スポーツ障害とは運動中に発現した筋、骨格系の疼痛症候群 であり、明らかな外傷、疾患、変形または異常がないもの、反復的な微小外傷の結果生じるもので、こちらは骨端症、離断骨軟骨炎(肘、膝)、筋腱障害などがあります。

運動により脂肪が減り、筋肉が増え、骨が丈夫になり、心臓が大きくなり、神経は脳から筋肉への命令を早く効率よく伝えるようになリます。また、脳に血液と成長因子が多く送り込まれて記憶力、学習能力、認知力が高まり老化防止になり、運動中に気分を高揚させる化学物質(エンドルフィン)が分泌されます。運動により免疫機能が向上したり、運動能力や趣向の違いは遺伝子が影響するが80パーセント以上は環境に起因し、運動には有酸素運動は不可欠であり、筋力トレーニングと並行して行うことには科学的根拠があります。

新年あけましておめでとうございます。本年も最新の腰痛のみでなく運動器にまつわる最新の情報を発信していきますので宜しくお願い申し上げます。

最近のロコモティブシンドローム(運動器症候群)の認知度ですが、厚生労働省が掲げる「健康日本21」で2022年までに国民の認知度を80%以上にあげる、「足腰に痛みのある高齢者の割合の減少」という目標に対して、2016年度最新の認知度調査では認知度は47.3%と伸び悩んでいます。特に若い人の認知度が特に低いというデータが出ており、日本整形外科学会も若い人へのさらなる啓蒙が必要と考えており、日本整形外科学会の丸毛会長は、45歳ころから運動器のライフプランを考え、骨粗鬆症など運動器疾患への治療はもちろん、柔軟性低下、姿勢変化、筋力低下などにも早期に介入することで運動器の健康を保つことが大切、と述べておられます。高齢者のみでなく若い人にも運動器の大切さを理解してもらい、将来寝たきりにならないようにするための運動習慣をどうつけていくか?を啓蒙するために学会とロコモチャレンジ協議会と共同して啓蒙ツールを作成、実施しています。その取り組みの一つとして「ロコモ度テスト」を開発し、毎年10月8日を骨と関節の日として、you tubeや様々なイベントなどで紹介、計測も行なっています。山口県臨床整形外科医会でも昨年下関市で市民公開講座を行い、ロコモ度テストを参加者に体験していただきました。

ロコモ度テストは立つ・歩く・座るなどの日常生活に必要な身体の移動に関わる移動機能を確認するテストで、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」(問診)の3つのテストからなります。「立ち上がりテスト」は下肢筋力を調べる検査で、片脚で40cmの高さの椅子から立ち上げれない場合にロコモ度1(移動能力低下が始まっている状態)、両脚で20cmの高さから立ち上げれない場合にはロコモ度2(移動能力の低下が進行している状態)になります。「2ステップテスト」は大股で二歩分の歩幅を計測し身長で割って、1.3未満でロコモ度1、1.1未満でロコモ度2と定義します。ロコモ度1では筋力やバランス力が低下しているのでロコトレ(片脚立ちやスクワット)やタンパク質とカルシウムを含んだバランスの良い食事をとる必要があります。ロコモ度2は移動機能の低下が進行し、自立した生活ができなくなるリスクが高くなっているので、関節や腰に痛みを生じる場合には整形外科専門医の受診を推奨しています。ロコモ25は25問の質問に答えて7点以上はロコモ度1、16点以上はロコモ度2と定義していますので心当たりがある方はロコモチャレンジのHPから参照してください。

ロコモティブシンドロームは年齢とともに足腰が衰えて移動能力が低下し、進行すると寝たきりになるリスクが高い状態ですが、近年、スマホ・ゲームの普及の低年齢化や、屋外で遊舞ことが減少したことなどにより、子どもの体に異変が生じています。体がかたい、バランスが悪いなど、子どもの運動器機能が低下しており、この状態が「運動器機能不全」または「子どもロコモ」と呼ばれています。当院での具体例としては転倒した時にとっさに手がつけず顔面を強打したり、手をついた時に両側の手首の骨の骨折を生じたりする子もいます。 埼玉県医師会が平成22~25年、県内の幼稚園から中学生までの子供1343人に運動器の検診を行った結果、約40%に機能不全の兆候がみられ、3人に1人に、ロコモの疑いがあるという報告もあります。

そこで平成28年4月1日から学校保健における「運動不足に起因する運動器機能不全」を早期発見するための運動器検診運動器検診が開始され、学校医が受診を勧告した児童・生徒等は医療機関を受診することとなりました。では子どもロコモはどのようにしてチェックするか?ですが、“肩関節の挙上が完全に出来ない”、“ヒザの後ろを伸ばし前屈して指先が床につかない”、“しゃがみ込み動作が完全に出来ない”、“うつ伏せでヒザを曲げたとき踵が殿部につかない” 、“片脚立ちが5秒以上出来ない”のどれか一つでも当てはまれば子どもロコモであり、その状態のままで運動・スポーツを行えば傷害を生じやすくなります。 整形外科に受診された場合、体幹の固さや関節(股関節、肩関節、手足の指の関節)の可動機を左右でチェックしたり、姿勢のチェックを行います。猫背や骨盤が後ろに倒れ過ぎていないか、顎が出ていないか?などもチェックして姿勢指導、ストレッチ指導を行います。

姿勢指導では一般的には耳・肩・大転子(大腿部の付け根の骨の出っ張り)・膝関節前部・足首の外の骨が一直線上になるようにします。動的ストレッチでは上肢振り、下肢振り、上下肢振り運動(クロスモーション)などを指導し、静的ストレッチでは大腿前面、後面、アキレス腱などを指導します。膝後面のハムストリングが固い場合にはジャックナイフストレッチ(足首を手で持って座った状態から伸ばしていく)、浮き足(扁平足、外反母趾など)の指導として足指じゃんけん(足趾でグー、チョキ、パーをする)などを指導しますので運動器検診で異常を指摘された場合には整形外科を受診して相談してください。

今回の二つのキーワードを紹介します。「フレイル」(虚弱)とは、心身機能の著明な低下のことであり、健常な状態と要介護状態の中間の状態として、日本老年医学会が2014年に提唱しました。「サルコペニア」とは筋肉減少症でフレイルの最大の要因となります。ヒトの筋肉量は40代より低下が始まり、年0.5パーセント減少し65才以上減少率が増加して80才までに30-40パーセント低下します。高齢者の多くは健常な状態から、筋力が衰える「サルコペニア」という状態を経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至ると言われています。

サルコペニアの診断基準は、(1)筋肉量の低下―両手足の筋肉量の減少、(2)筋力の低下―握力の低下(男性26kg未満、女性18kg未満)、(3)身体能力の低下―日常の歩行速度の遅延(秒速0.8メートル以下)、とされています。歩行速度の目安としては青信号で横断歩道を渡りきれるか?でも判断可能です。簡便な自己診断方法として東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らが考案した「指輪っかテスト」は両手の親指と人さし指で輪っかをつくり、ふくらはぎの最も太い部分を囲み、指のあまり具合で、隙間ができる場合はサルコペニアの疑いがあります。

一方フレイルは動作が遅くなったり転倒しやすくなったりする「身体的要素」、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題を含む「精神的要素」、そして独り住まいや経済的な困窮などの「社会的要素」の3つの要因が関与しています。身体的要素にはサルコペニアやロコモティブシンドロームが含まれ、精神的要素にはうつや認知症が、社会的要素には孤独や閉じこもりが含まれており、より広範な用語です。

サルコペニアやフレイルの予防は定期的に体を動かす運動(前回紹介したウォーキングなど)を行うこと、良好な栄養状態を保つこと、積極的に社会活動、社会参加を行うことです。栄養では性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質(肉や魚、大豆、牛乳)を毎日食事から取ることが望ましいと言われています。若年者や中年で運動する習慣のない方は、是非ウォーキングから始めることをお勧めします。

鈴木大地氏が長官を務めるスポーツ庁が平成27年度運動能力調査結果を10/11に発表しました。昭和39年東京五輪から始まって52回目で6~79歳の約7万4,000人を対象に実施されました。体力テストの内容は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とひ?、20mシャトルラン、立ち幅とひ?と平成11年度から導入された加齢に伴う新体力テストがあります。新体力テストとは6-11才は50m走、ソフトボール投げ、12?19才は50m走、ハンドボール投げ(50m走と20mシャトルランは選択)、20-64才は急歩(男子1,500m,女子1,000m) であり(急歩か20mシャトルランは選択)、65-79才はADL(日常生活動作)テストという問診を行い握力 、上体起こし .長座体前屈、 開眼片足立ち 、10m障害物歩行、 6分間歩行 の中から実施する項目を決定し、各項目の成績を10点満点で得点化し、実施項目の点数を合計します。

運動・スポーツを週1日以上実施した人の割合は、女子は10歳の83.6%がピークとなり、高校時代に大幅下落します。18歳で全ての年代を通じ最低の33.7%に落ち込み、40歳代後半で底(45.9%)を迎える男子よりも早い段階で運動から離れており、50歳代以降では男子を上回ります。原因として女子は思春期の身体の変化などから運動を避け、20歳代以降は仕事や育児で忙しくて運動する時間のないことがあるそうです。

昭和60年度と比較すると、男子では運動実施状況に大きな変化は見受けられませんが、女子については10代後半から20代の若い世代で、運動・スポーツを実施している人が大幅に減少しているため、青少年を含めた生涯を通じて運動習慣を継続させていくための対策が重要であると述べてあります。また子供の体力・運動能力は昭和60年頃と比べると依然低い水準にありますが、よく運動している子供に比べ、あまり運動していない子供がより低下しているので、今後は運動が不足しがちな子供たちへの対策が重要であるということも述べられています。

一方で65才以上の高齢者の体力が向上しており、体力テストの平均合計点は65~69歳の女子、75~79歳の男女で過去最高となったそうです。 運動習慣は生涯を通し?て持ち続けることか?重要て?あり、過去の運動・スホ?ーツ経験か?ない人て?も、現在実施することにより体力や健康によりよい影響を与えることか?て?きるそうです。この結果から言えることは、運動習慣は何才から始めても遅いということはないので、この記事を読んで運動しようという気持ちになられた方は是非散歩など行動を起こしていただけると幸いです。

2015年7月12日に放送された、NHKスペシャル 「腰痛・治療革命 ~見えてきた痛みのメカニズム~」をご覧になられた方はおられるでしょう。この番組は東京大学整形外科の松平浩先生がNHKと協力して製作されたものです。このお手本になったのが15年以上前にオーストラリアで実施された「腰痛に屈するな!」というキャンペーンで、具体的には権威のある医師や芸能人が腰痛があっても安静は最小限にして運動したほうがいいですよ、というメッセージCMをテレビで繰り返し流した結果、腰痛による欠勤日数が減少したり、医療費が20%削減したという論文です。

実は松平先生によるとその年の再放送のリクエストが最も多かったそうで、今までに何回か再放送されています。なぜこれほど反響があったかというと、腰痛に対する考え方の意識変革と前回お話しした恐怖回避思考を減らすことが証明されたからです。

ステップ1として腰痛は怖くない、腰椎椎間板ヘルニアの9割は自然に消失する、痛みを減らすには怖がらずに動くこと、動くことが一番の薬などのメッセージを映像で見ることで慢性腰痛患者さんの38パーセントが改善し、ステップ2としてこれだけ体操として背中を反らすエクササイズを行い、慢性腰痛患者さんの56パーセントが改善したことを論文や本でも証明されました。

ステップ3としてオーストラリアで行われている認知行動療法を紹介され、カウンセリング(どんな動きが痛みを誘発するか?)と運動を1時間おきに繰り返すことを1日8時間3週間行うことで、9人中8人が改善したことも映像で紹介されました。この番組の反響が大きかったのは、一般の視聴者にも共感を呼んだからに他なりませんが、腰痛の患者さんに正しい情報を与えて励ます態度を行うことで恐怖回避思考を回避できること、患者さんを痛み行動化している人として捉えることなど医療者側にも意識改革が必要であることを再認識しました。

皆さんもぜひNHKの以下のHPでその動画を視聴することができますので、ぜひ一度ご覧いただき、腰痛に対する認識を変えていただければ幸いです。

http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/

参考論文:Spine. 2001;26(23):2535-42.