第72回 子供の骨の成長の早熟化

私達整形外科医が小児の診察をしてレントゲン写真を撮像するときに原則として両側撮像します。なぜかというと小児は骨の成熟度が年齢により異なるので、患側(痛い方)だけでは骨折や脱臼など微妙な病変を見逃してしまう可能性があるからです。骨の成熟の程度を暦年齢と対照したものを骨年齢といい、骨年齢は身体の成長度をより正確に表す指標になります。幼少期に手や足は軟骨成分が多く、その中心に骨端核という骨ができその周囲に骨ができていきます。小児期になると長管骨(上肢・下肢)の中枢と末梢部には骨端線という成長線(軟骨)がありそこで思春期にどんどん骨が作られ骨の成長が起こり、最終的に閉鎖します。(男性が17才、女性が15才頃)レントゲン写真で骨端線が閉鎖すると大人の骨と同じ形態になり身長の伸びも止まることがわかりますので、教えてあげるとがっかりする子もいます。最近の論文で1935年生まれの子供と1995年生まれの子供の手と手関節のレントゲン写真で、骨端線の確認と閉鎖、すなわち骨の成熟年齢が男性で7ヶ月、女性で10ヶ月早まっていたという報告がありました。この事実から近年の子供の骨格や性の成長が早まっていることが予想され、環境ホルモンなどの影響が示唆されています。子供の体格が大きくなっていることは実感しますが、骨の強度がそれに追いついていないことも最近の子供たちの骨折を診療して思う今日この頃です。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。