第71回 ラグビーで生じる重篤な外傷その2—脳震盪—

ラグビーワールドカップは終わってしまいましたが日本がベスト8まで残ったことは今後も歴史に刻まれると思いますが、4年後さらに上を目指すよう期待しています。さて、今回は脳震盪についてのお話です。脳振等とは頭部に外力が加わった結果生じる一過性の意識障害、記憶障害のことで、タックルされて倒れたときや、タックルして勢いよくぶつかったとき、後ろ向きに倒れるときなど頭を打たなくても、頭の動きが突然止まったり、急に方向が変わったりした際に頭皮頭蓋骨を通して脳に衝撃が伝わることで生じます。以前は倒れている選手がいると魔法のやかん(?)が出てきて水をかけると選手が立ち上がると観衆から拍手が湧き、選手もプレーを続行していましたが、現在では(平成24年から)選手生命を守るために、厳格な基準が定められています。頭痛、嘔気、起き上がるのに時間がかかると脳震盪の疑いありとされます。痙攣、意識消失、見当識障害(場所や時間がわからない)、ふらつき、無表情などは脳震盪とされ脳震盪疑いでも退場になります。退場した選手は精密検査後、段階的競技復帰のルールに従います。受傷後2週間は練習と試合を禁止し、その後症状がなければウォーキング、ランニング、パス練習と上げていき、医師の許可を得てコンタクトプレーが開始され、競技復帰には最短でも3週間を要します。精密検査(CT,MRI)で異常がない場合は脳震盪という診断になりますが、急性硬膜下血腫があれば意識障害や死亡につながるので緊急入院、手術が必要になる場合もあります。脳震盪を再度繰り返すとセカンドインパクト症候群といって致死率が50%を超えることが報告されているので専門医に相談することが重要です。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。