骨粗鬆症コラム

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7/13熊本市で日本臨床整形外科学会があり参加しました。モーニングセミナーで沖本先生の骨粗鬆症治療で大腿骨近位部骨折・椎体骨折は減るのか?地域における疫学データから整形外科日常診療を科学する、という演題を拝聴しました。大腿骨近位部骨折は欧米では減少傾向にありますが日本ではまだ減少していないのが事実です。広島県呉市では2017年と比較して骨粗鬆症予防プロジェクトが発足してから2020年のレセプトデータでの解析で統計学的に減少したとのことでした。ビタミンD不足が日本人は圧倒的に多いので補充が必要ですが腎機能に気をつけて使用することを強調されました。骨密度を見ながらビタミンDの補充に加えて骨吸収抑制剤のビスホスホネート製剤、デノスマブを投与して骨折リスクの高い方には骨形成促進剤が使用されます。骨吸収抑制剤は顎骨壊死のリスクがあることは知られていますが呉市ではレセプトデータを利用して市が治療中断した人に手紙を送ったり、医科歯科連携を市報に掲載して市民に告知する取り組みをしているとのことでレセプトデータから骨粗鬆症患者で1.33人/1000人、一般住民で0.05人/1000人との結果が出たとのことでした。デ又ノスマブ長期投与後中止されると骨密度が急激に低下して骨折リスクが2倍以上になるデータも示して頂きました。

骨形成促進剤に関して古い骨の新陳代謝やマイクロクラックを修復する(アナボリック)のが骨形成促進剤であるテリパラチド、アバロパラチドで、骨の表面に骨を作るモデリングであるロモソズマブがあります。骨折、顎骨壊死、リモデリングの患者さんにはリモデリング効果の高いテリパラチド、アバロパラチドが望ましく、大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療では人工骨頭置換術後は骨吸収抑制剤が、骨接合後にはリモデリング効果の高い骨形成促進剤が第一選択になるとのことでした。又薬物治療を行う上で添付文書の警告文書に注意しながら使用することも教えて頂きました。

くりかえし骨折という言葉をご存知でしょうか?骨粗鬆症性骨折が短期間のうちに繰り返すために早期診断、早期治療が必要であることを啓蒙してあります。ストップ「くりかえし骨折」というサイトがあり骨粗鬆症啓発アプリ「背(はい)、ポーズ」も作成してありますのでぜひご覧ください。

https://www.fightthefracture.jp/

アプリ紹介

https://www.fightthefracture.jp/app

3/22 かめ福で第2回山口市骨粗鬆症地域連携協議会講演会があり座長で参加しました。兵庫医大歯科口腔外科の岸本裕充教授の講演「骨粗鬆症治療中の歯科治療〜ポジションペーパ改定のポイント〜」を拝聴しました。岸本教授はポジションペーパ2023の総括をされており顎骨壊死の歴史的背景、顎骨壊死の原因は口腔内の炎症、感染が原因であること、ビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死発生率が0.2%であること、抜歯が必要な際は速やかに施行することが望ましく、ビスフォスフォネート製剤の休薬の必要はないこと、骨粗鬆症治療をする全例が歯科紹介の対象にすることが望ましいこともお話しされ医師薬連携の強化の必要性について教えていただきました。

2/29 第10回運動器疾患を科学する会 in 山口がオンラインであり参加しました。秋田大学の宮腰教授の「骨粗鬆症治療におけるテリパラチドの役割ー基礎と臨床ー」の講演があり、骨粗鬆症の基礎知識として副甲状腺ホルホン、ビタミンD.K、カルシウム代謝についてわかりやすく解説していただき、テリパラチドに関する秋田大学での研究結果を交えて骨形成促進剤であるテリパラチドが骨癒合促進にも有用であるとのことでした。また2022のSardarらの論文で「待機的脊椎再建術を受ける成人患者における骨粗鬆症の評価と管理のベストプラクティス・ガイドライン」で65歳以上ではこれまで脊椎再建術に骨粗鬆症対策のガイドラインがなかったので骨粗鬆症評価をすべきであり、手術に際して骨形成促進薬であるテリパラチド、アバロパラチドを使用する、使用できない場合には骨吸収抑制剤を使用することを推奨されていることを紹介されました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34690329/

1/17ウェブで骨粗鬆症講演会を拝聴しました。沖本クリニック院長のMRONJリスクに対する医師薬連携の取り組みの実際と結果、秋田大学整形外科の宮腰教授の重賞骨粗鬆症を防ぐための長期薬物治療の考え方の2講演がありました。2023顎骨壊死のポジションペーパが出る前から呉市では医科歯科連携に取り組まれており、宮腰教授からはデノスマブなど10年の長期成績結果をお示しされて逐次療法についても教えて頂き大変勉強になりました。

12/4 杉並区骨粗鬆症医科歯科連携の会をウェブで拝聴しました。山口市でも先日医科歯科連携の会を開催したばかりでしたので他の地区の取り組みに興味がありました。歯科医の立場から佐藤歯科クリニックの佐藤先生が講演され顎骨壊死の症例を供覧され抜歯が原因で起こるのではなく歯周病の放置や増悪が原因で生じるのであること、しかしながら休薬が必要な症例もあるので医科歯科が連携していくことの重要性を強調され、骨粗鬆症治療前に歯科紹介することの重要性を強調されました。次いで高円寺整形外科の大村先生が骨粗鬆症は高齢化に伴い増加しているが治療率が日本では20%程度であり骨折の連鎖を防ぎ、血圧を測るように骨密度を測ることを啓蒙することもお話しされました。お二人とも紹介状をやり取りして医科歯科連携をスムーズに進めることが顎骨壊死の予防になるとの見解はご一緒でした。

11/22山口市医師会館で第1回山口市骨粗鬆症病診連携の会講演会がありました。山口市医師会、歯科医師会、薬剤師会で骨粗鬆症及び顎骨壊死ポジションペーパ2023を勉強していくことを目的として開催されました。医師(整形外科、内科、皮膚科)、歯科医師、薬剤師、看護師など他職種の方に20名以上集まっていただきました。医師側の講演の先生がお休みになったため急遽私がこの会の立ち上げの経緯と半年前にお願いした医科歯科連携アンケートの結果について報告させていただきました。その後山口赤十字病院歯科口腔外科上村部長に顎骨壊死ポジションペーパ2023について解説していただきました。内容が多いので初回は顎骨壊死の定義と診断についてでした。その後総合討論があり骨粗鬆症治療する患者さんは歯科紹介、定期受診していただくことを共通認識とすること、抜歯の前に長期の休薬は不要ですが、例外的に抜歯後上皮化が完了するまで1−2週間休薬してもらう場合があることなどもあることなど教えていただきました。

厚生労働省が骨粗しょう症予防 骨活のすすめをHPにアップされました。

横浜市立大の善方裕美客員准教授が動画で骨粗鬆症について解説されています。 10代の若者では骨の土台を作る大切な時期にバランスの良い食事や十分な睡眠が必要であり、過度なダイエットによるやせた体形は将来の骨粗鬆症発症リスクを高めるなど啓蒙されていますのでぜひご覧ください・

https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/honekatsu/

10/5 ウェブで 新ガイドラインからみた グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症治療戦略を拝聴しました。講師は東京大学田中栄病院長でした。9年前はステロイド性骨粗鬆症ガイドラインと言われていましたがグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症ガイドライン2023という名称に変更になりました。変更点としては点数化の基準は2014年と変更ありませんが治療薬剤がビスフォスフオネート製剤だけでなくデノスマブ、テリパラチド、ビタミンDなど選択肢が増えたこと、テリパラチドとデノスマブはその中でも骨折リスクの高今場合奨励された方が特徴です。又グルココルチコイドの減量、中止も重要とされました。デノスマブは特に治療中止の際に注意が必要で特に2.5年以上使用した場合にはビスフォスフオネート製剤に切り替えが必要であることも強調されました。

シンポジウム18で骨粗鬆症の疫学 NDBの有用性と活用を拝聴しました。日本のレセプトデータが公開されておりエビデンスのあるデータ解析が今後日本でも行われていくと思いました。

あさひ病院 中藤先生 都道府県別に見た骨粗鬆症の現状と二次大腿骨近位部骨折発生状況で薬剤継続率は2年で80%超えると治療効果高いとのことですが西高東低で薬剤中断率と有意の相関ありとのことでした。骨粗鬆症認定医とマネージャーは二次性骨折高い県では少なく、山口県は少ないので頑張らないと、という気持ちになりました。

東京大学小川先生 我が国における認知症・フレイルと骨折・対組成との関連性の講演では

ビタミンD製剤投与は大腿骨近位部骨折を有意に抑制した 

認知症患者の骨粗鬆症治療頻度 30%にとどまる

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症患者で認知症治療薬は大腿骨近位部骨折を有意に抑制する 

睡眠薬は(超)短時間型が効果高いという内容で、

NDBから見える糖尿病治療薬と骨折発生との関連

大阪大学玉置先生は 約96000人のデータ解析

糖尿病薬剤別の骨折リスク 内服ではAGI、DPP4阻害剤、インスリンで大腿骨近位部骨折、インスリン製剤は椎体骨折発生率高い 

インスリンの大腿骨近位部骨折は初回、変更投与後半月以内に高いとのことでした。

NDBから見えるステロイド性骨粗鬆症の診療実績では

グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症ガイドライン2023学会登場 経口糖尿病薬3ヶ月以上でリスクある患者の骨粗鬆症治療薬投与ガイド

骨粗鬆症治療薬はステロイド3ヶ月以上投与の場合骨粗鬆症治療が推奨され

デノスマブとビスフォスフオネート製剤は骨折を有意に抑制するがテリパラチドは骨折リスク低い?とのことでした。

ステロイド5mg未満の患者の骨折リスク 30日未満と以上で年代別にも解析した結果2ヶ月以上投与では有意に骨折リスク上昇したとのことでした。

教育研修では澤口毅先生の脆弱性骨折骨折(FFP)の講演を聴きました。高齢者の大腿骨近位部骨折は海外では減少していますが骨盤寛骨臼骨折は増加しています。65才以上で骨折リスクは男性2.8 %女性6.9%というデータがあるそうです。日本の発生率は10万人あたり487人、一年後死亡率も10%,2年で17%という報告があり今後非常に注目されています。ビタミンD欠乏があるので投与必要とのことでした。転倒しなくても骨折生じることあり腰痛や下肢痛あり恥骨骨折では血管損傷も稀にあるそうです。特徴は第二仙骨部仙骨翼で起こりHタイプが多いそうです。X線での診断は20%しかなくMRIよりCTが骨折の病型診断には有用です。保存的治療はペット上安静と骨粗鬆症治療(特に骨形成促進剤)ですが不安定型が約5%あり手術適応になるとのことでした。

ランチョンセミナーで沖本先生の医科歯科連携から始まった地域でみる骨粗鬆症治療ー顎骨壊死・骨髄炎は減ったか?骨折は減ったか?を拝聴しました。沖本先生は呉市のレセプトデータから骨折、顎骨壊死の発生率を教えて頂きました。呉市では骨粗鬆症治療を中断した患者さんに手紙で受診を促すような連携もされているそうです。呉市で60才以上の方に歯科検診、顎骨X線撮影し骨粗鬆症の疑いがあれば整形外科紹介するシステムが構築されています。その結果ビスフォスフオネート製剤で顎骨壊死が1000人に1.33人、治療していなくても0.05人発生したとのことでした。呉市で癌の治療で顎骨壊死の頻度が下がっているのは投与前の歯科紹介、歯科治療継続が効果を出しておりビスフォスフオネート製剤でも投与初期の歯科紹介、治療継続することで脊椎骨折、大腿骨近位部骨折の発生率が減少した結果を出されました。椎体骨折が生じた時に骨粗鬆症治療を開始することがその後生じる可能性のある大腿骨近位部骨折の抑制に繋がります。骨形成促進剤でテリパラチドはリモデリング、ロモソズマブはモデリングで骨密度増加しますが、顎骨壊死の治療にもリモデリングの観点からもテリパラチドが有効な場合があるとのことも教えて頂きました。逐次療法についてもそれぞれの薬剤について教えて頂きました。

次いでシンポジウム19 MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)ポジションペーパ2023があり拝聴しました。

松本歯科大学の田口教授がMRONJの診断ー定義、ステージ分類と画像診断についてではステージ0は残すが診断から除外、画像所見はステージから独立抜歯窩の残存、歯根膜腔の拡大、著明な骨硬化(骨粗鬆症)

山陰労災病院の萩野先生が低容量製剤によるMRONJではMROJ発生リスクとしてビスフォスフオネート製剤、デノスマブなどによる骨のリモデリング阻害、細菌感染、血管新生阻害が原因とされ、発生率は日本では年間2500例、10万人あたり100人以上で、予防的休薬については意味がないとされたが投与期間が長いと治癒率が遷延した。休薬後3年で骨密度減少が25%、椎体骨折リスクも上昇する、デノスマブ、ロモソズマブは中止で特にリスク上昇する、ビスフォスフオネート製剤処方に当たって口腔衛生管理が重要であり、歯科紹介がビス剤やデノスマブでは強く推奨、テリパラチドでも逐次療法でビスフォスフオネート製剤の可能性を考えて歯科紹介が望ましい。

京都府立大学の田口先生がMRONJをおこす癌治療の現状については抗癌剤による骨転移治療のデノスマブ、ゾレドロン酸の骨リモデリング作用と口腔感染で生じるがベバシズマブに代表される血管新生阻害剤もリスクとなる、癌治療関連骨減少(アロマターゼ阻害剤)では歯科治療後にデノスマブ治療が病態に有用であり歯科紹介による顎骨壊死の発生はなかったとのことでした。

兵庫県立医大の岸本先生がMRONJ 予防のための医科歯科連携ー最新の情報を理解した上ーではMRONJでは治療における手術の優先度(壊死組織除去)が高まったこと、医科歯科連携から医歯薬連携へということなどを解説されました。2016のポジションペーパで抜歯難民が増加した、歯周病の抜歯を避けると顎骨内細菌感染に進行、リスク因子として感染を重視した、抜歯して骨から出血がないと従来からあった骨髄炎が顕在化できる(診断できる)、予防的休薬は不要である、抗生剤抜歯前予防投与と長くても2日、デノスマブ投与後4ヶ月目で抜歯、抜歯後1ヶ月投与延期するなどは可で骨粗鬆症治療する患者は全例が歯科スクリーニングの対象で骨吸収抑制剤は特に重要とのことでした。