骨粗鬆症コラム

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10/18山口グランドホテルで第13回九州・沖縄・山口OLS研究会がありウェブで参加しました。姫野病院整形外科の日高先生の「OLSにおける地域連携の重要性とその実際」の講演を拝聴しました。骨粗鬆症治療の目標として骨折を予防し生命予後の維持があり、高年齢、骨密度低下、骨折既往、骨吸収マーカー高値などを指標にして治療開始します。骨粗鬆症があっても治療されているのは約2割で継続率は低いとされます。骨粗鬆症治療開始と治療継続には医師だけでは困難で多職種を含めた骨粗鬆症リエゾンサービスが重要とされています。OLSについての解説と取り組みについて解説して頂きました。

次いで「各地域でのOLS活動・地域連携の現状」をテーマにディスカッションがありました。熊本機能病院薬剤部の森崎先生が熊本県におけるOLS活動として手術した骨折患者フォローアップのアンケートにより治療継続率を確認すること、治療継続のため紹介先(医療機関と調剤薬局)に連絡票を活用した連携、二次骨折予防に向けた多施設とのネットワーク、熊本県内で薬剤部ネットワーク、熊本OLS研究会の取り組み(Line worksを用いたネットワーク、m3.comの無料ホームページ開設サービス)などを紹介されました。次いではやと整形外科放射線部の吉村先生が早期の骨粗鬆症治療開始率100%を目指した取り組み、骨粗鬆症専門外来を紹介されました。戸畑共立病院看護部の柳田先生は二次骨折予防継続管理料算定開始後の大腿骨近位部骨折の治療状況(1年後治療継続率92%)、大腿骨近位部骨折、椎体骨折患者への骨太サポートの取り組み、コスモス病院薬剤部の鶴田先生の大分県臼杵市のOLS活動の発表大分県OLS研究会の取り組みを紹介され、その後ディスカッションがあり活発な議論がありました。山口県ではまだまだ地域連携が進んでいるとは言えない状況なので頑張って行きたいと思いを強くしました。

シンポジウム人生100年時代の全世代にわたる多様な骨粗鬆症治療について考える、を拝聴しました。大阪大学小児科の大幡先生の小児骨形成不全症の骨粗鬆症治療としてはガイドラインを中心にビスフォスフオネート製剤での治療とゾレドロン酸とデノスマブとの比較でゾレドロン酸の比較、骨形成促進剤について教えて頂きました。長崎大学産婦人科の北島先生の思春期から性成熟期における骨粗鬆症について視床下部性無月経(体重減少、女性アスリートの三主徴)と妊娠関連骨粗鬆症について教えて頂きました。女性アスリートの三主徴に対する治療として体重増加、栄養指導で骨密度増加なければエストロゲン療法を行いますが低容量ピルは使用していないとのことでした。将来の妊娠・出産に向けた健康管理(プレコンセプションケア)が重要と強調されていました。次いで顎骨壊死のセッションに参加しました。薬剤師から歯科医師に薬剤情報提供は1729件中31件あり歯科への積極的受診勧奨も行っているとのことでした。大腿骨近位部骨折入院時の歯科介入で外科的処置が必要例が3割あり更なる介入が必要とのことでした。

最後にシンポジウム15 厚生労働科学研究田中栄班・骨粗鬆症検診委員会合同企画:新しい骨粗鬆症検診とさらなる改善の方向がありました。東京大学整形外科田中栄教授が骨粗鬆症検診改定に向けた取り組みを講演されました。日本の骨粗鬆症は治療介入例は女性30-40%、男性3%で脊椎骨折グレード2以上の骨折でも3分の1しか受信していないという背景があり1995年に骨粗鬆症検診が追加され2000年以降で40才から5才刻みで70才までの女性のみ骨粗鬆症検診を行われてきました。骨粗鬆症検診参加率は年齢性別は一緒で全国平均5.3%と低く国も15%までに引き上げる目標を立てています。新しい検診の方針で骨密度測定を必須とせず既存骨折あれば又はOSTA(体重年令)÷50.1以下、年令体重が5以上),FRAXの問診項目のみを行い、二次検診としてDEXAによる骨密度測定を行う方向とのことでした。骨粗鬆症検診率が高い自治体は人工骨頭置換術が多いデータがあります。ROAD研究では過去の検診参加歴は骨粗鬆症服薬率を上げるとのことでした。現状の課題として検診方法が定まっていないことがあったので飯高先生が骨粗鬆症検診の改善の現状と今後の課題として様々な検証の結果、OSTA-1以下、FRAX問診項目一つ以上がもっともバランスのよいスクリーニング方法であるとのことでした。人間ドックでは超音波骨密度検査(QUS)が多く用いられていますがあくまで骨折リスクを評価するツールとのことでした。最後に厚労省健康・生活衛生局の河野先生が健康日本21(第三次)における骨粗鬆症に関する取組について講演がありました。健康をめぐる状況、平成25年から令和6年までの第二次健康日本21の評価として誰一人取り残さない健康づくり、健康寿命延伸と健康格差の改善など目標として女性の検診率の低下を問題点として市町村に健康相談窓口をつくり、骨粗鬆症検診率の向上を図り、健康寿命を延ばすアワード、スマートライフプロジェクトなど推進する取り組みを幅広く紹介されました。

9/14 幕張メッセで日本骨粗鬆症学会に参加しました。妊娠後骨粗鬆症(PLO)についての女性医学会との合同シンポジウムがありました。東京科学大学の寺内先生の定義と疫学、新潟市民病院産婦人科の倉林先生の妊娠後骨粗鬆症の病態、よしかた産婦人科の善方先生の治療・管理、熊本大学整形外科宮本教授の病態と対応へのヒントがありました。妊娠後骨粗鬆症は妊娠期・授乳期に脆弱性(主に脊椎)骨折を起こす疾患で1955年にLancetに報告されました。授乳後が80%で発症率が0.045%(寺内先生の論文)0.052%(滋賀医科大学)妊娠関連骨折の3割が脆弱性骨折とのことでした。脊椎骨折がほとんどで初発時から症状確定まで約1ヶ月を要しているとのことでした。妊娠授乳期に骨代謝でカルシトリオールが増加して腸管からカルシウムが増加、授乳と高プロラクチン血症から骨吸収が増加して骨粗鬆症が生じるとのことでした。授乳中に脳、乳房、骨のクロストークが生じます。妊娠後から授乳までに3-10%骨密度が急に減少し授乳後は緩やかに骨密度は改善します。この時期にリスク因子がある方が脆弱性骨折を起こす可能性が高くなります。産後の骨密度はDEXAでは骨粗鬆症は5.4%、骨量減少が44%でBMIが低い方に多く組織学的にも低リモデリングで遺伝的要因も加わり生じると考えられるとのことでした。今後の展望で妊娠後骨粗鬆症は将来の骨粗鬆症発症リスクになると考えられています。妊娠後脊椎骨折を生じると3割2回目の妊娠後に2〜3割再骨折を生じました。骨折後の治療としてビタミンD、骨吸収抑制剤、テリパラチドなどで治療されていますがどれがいいかは結論が出ていないですがテリパラチドは骨密度上昇と骨折後疼痛軽減にも選択肢の一つとするとのことでした。産婦人科の立場では妊娠前に低骨密度であっても原則授乳は中断しないそうですが骨折した場合は断乳を勧めるとのことです。出産前後でエストラディオールがほぼ消失し骨吸収マーカーが上昇率が高いことが判明しています。動物実験では骨吸収抑制剤(アレンドロネート)は母体、乳児にも問題なかったとのことでした。(添付文書では授乳中は禁忌であり断乳後の内服を推奨されます。

 

9/5松政で骨粗鬆症地域連携協議会講演会があり座長で参加しました。健愛記念病院の池田聡副院長の「骨粗鬆症治療における医科歯科連携の考察~遠賀中間地区での取り組みを含めて~を拝聴しました。日本の高齢化率は29%2025年に75才以上が800万人になります。要介護の第3位に骨折転倒があり健康日本21に骨粗鬆症健診率を15%を目標設定しました。骨粗鬆症性骨折で特に大腿骨近位部骨折が増加していること、骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025のポイント、ビスホスホネート関連顎骨壊死のお話をして頂きました。遠賀中間地区の医科歯科連携の取り組みについて紹介して頂き医師は患者の歯科診療状況を把握すること、歯科医師も骨粗鬆症の理解を勉強会の取り組みを教えて頂きました。医科歯科薬科アンケートの結果も踏まえてポジションペーパ2023も解説して頂きました。山口市骨粗鬆症地域連携協議会も活動3年目になり連携強化に向けて取り組むことを再認識しました。

8/31骨粗鬆症セミナーがあり参加しました。香川県済生会病院の真柴副院長の「テリパラチドによる骨リモデリング刺激が骨質改善に果たす役割」を拝聴しました。皮質骨の中にも骨吸収と骨形成が生じておりリモデリングが生じています。骨吸収抑制剤は石灰化が亢進し皮質骨が硬くする効果がありますが長期投与でマイクロクラック(ダメージ)が蓄積される短所もあるとのことで骨形成促進薬に注目が集まっています。ロモソズマブはモデリングによる骨形成促進です。テリパラチドは骨形成と骨吸収が促進することで骨リモデリング効果による骨密度増加が期待できます。骨強度は骨密度7割骨質が3割です。テリパラチドの皮質骨多孔化が生じますが皮質骨前柱の幅が増加し強度は増加しているとのことでした。テリパラチドは骨微細損傷の修復も期待できるとのことでした。又動物実験では骨折治癒も促進するとのことでした。

次いで健愛記念病院池田聡副院長の「テリパラチドの骨質改善効果の考察~実臨床下での検証~」を拝聴しました。骨質には構造特性(多孔化など)と材質特性(石灰化、コラーゲンなど)がありテリパラチドは骨密度増加に加え骨質を高めます。骨形成促進薬と骨吸収抑制剤の比較試験では骨密度上昇と骨折抑制にテリパラチドが有意に高いデータを示されました。新規椎体骨折にテリパラチド週一回製剤と骨吸収抑制剤との前向き比較試験でテリパラチドの椎体圧壊度は骨密度に依存していなかったデータ、大腿骨内顆骨壊死に対してテリパラチドを使用しながら足底板併用して骨壊死治癒した症例を提示されました。テリパラチド投与に加えて踵落とし、ダイナミックフラミンゴ療法などを組み合わせることを提示されました。

 

当院の待合室にSTOPドミノ骨折のポスターが貼ってあります

私も最初は気づきませんでしたがモデルは山口智子さんです!

ドミノ骨折とは以前繰り返し骨折を紹介したのですが、骨粗鬆症性骨折を繰り返すようになる(いわゆる骨折の連鎖)ことをいいます。

骨折してから骨粗鬆症治療継続も重要ですが、早期発見のためには骨粗鬆症検診で骨密度(腰椎と股関節を測定するDEXAで測定することがおすすめです)が若い人(20代)の70%以下であれば骨粗鬆症ですので骨折する前に治療することをお勧めしています。まずは骨密度測定を受けることが重要ですのでご相談ください。

4/12山口市骨粗鬆症病診連携協議会講演会があり座長で参加しました。最初に呉市骨粗鬆症重症化予防プロジェクトにおける啓発検診・治療継続事業について呉市共済病院副院長の寺元秀文先生が講演して頂きました。山口市と呉市を比較して説明して頂きました。呉市のレセプトデータ分析により生活習慣病の中の糖尿病性腎症が多いことから糖尿病性腎症重症化予防プロジェクトの取り組みが全国的に評価されており呉市医師会と協力して骨粗鬆症性骨折患者の予防などレセプトデータを活用して骨粗鬆症重症化予防プロジェクトの内容を説明して頂きました。骨粗鬆症デーのイベントとして市民公開講座、骨密度測定など啓発活動、骨粗鬆症教室のyou tube動画など、ミドルリスク層への治療継続啓発、ハイリスク層に対してデノスマブ中断患者さんに受診勧奨事業により大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折の減少を認め、医療費の抑制にも寄与するとのことでした

続いて呉共済病院東森秀年先生の骨粗鬆症における多職種連携 MROJポジションペーパ2023を踏まえてを拝聴しました。骨粗鬆症治療薬の中で骨吸収抑制剤、骨形成促進剤の中のロモソズマブは薬剤関連顎骨壊死(MROJ)のリスクがあります。MROJポジションペーパ2023を踏まえて顎骨壊死の定義、骨吸収抑制剤の休薬について教えて頂きました。予防的休薬は抜歯時に休薬しないがインプラント、デノスマブでは抜歯タイミングの考慮があることも教えて頂きました。抜歯の適応は骨縁下う蝕、重度歯周病などで短期間の抗生剤投与して抜歯時には適度な緊張で、抜歯難民を作らないようにするために医科歯科紹介状を作成されました。骨粗鬆症検診率は5%未満であり呉市では歯科でのパノラマX線写真による骨粗鬆症スクリーニングによる骨粗鬆症疑いありとして整形外科に紹介したり、AIを利用したソフトを利用した取り組みを紹介されました。

呉市での医科歯科連携の歴史と医科歯科薬科連携の取り組み、65才の市民に無料でパノラマ撮影を行うことで医科歯科連携が増加した取り組みも紹介されました。又レセプトデータ活用して骨吸収抑制剤の顎骨壊死壊死発生率は0.13%であるという論文も出されており発症率を過小に見積もる医科と顎骨壊死を過剰に危惧する歯科、というフレーズが印象的でした。その後のディスカッションも大変有意義でした。

3/19カリエンテ山口で旭化成骨粗鬆症セミナーをウェブで拝聴しました。沖本クリニックの沖本院長の「とりあえずではなく、有効かつ安全な骨粗鬆症治療を考える」の講演でした。ビタミンDはとりあえず使うという考えはしないように、骨吸収抑制剤と骨形成促進剤の使用方法も教えて頂きました。又骨折リスクに応じた治療薬選択に骨量減少にラロキシフェンかゾレドロン酸も推奨されるとのことでした。活性型ビタミンD内服する場合、テリパラチド投与の場合には高カルシウム血症に気をつける必要があります。ビスフォスフオネート製剤、ロモソズマブ、デノスマブはビタミンDは必ず補充すること、半年に1回カルシウムのチェックを行うように強調されました。ラロキシフェンは静脈血栓症のリスクを念頭において処方すること、ビスフォスフオネート製剤は腎障害、上部消化管障害、顎骨壊死などのリスクを考慮すること、デノスマブは長期使用可能ですが歯科紹介して医科歯科連携すること、3年以上使用した後ゾレドロン酸の点滴注射であれば骨密度低下を防げることなど教えて頂きました。 顎骨壊死は呉市レセプトデータを利用した研究の結果を教えて頂き、医科歯科連携が必要であることも教えて頂きました。既存椎体骨折患者の骨折予防効果が最も高いのが骨形成促進剤であるテリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブであり、テリパラチド、アバロパラチド、ロモソズマブは骨質を改善する効果が高いとのことでした。ロモソズマブは早期骨量が期待できるモデリング作用、テリパラチド、アバロパラチドはリモデリング作用で骨量増加を期待できるとのことでした。ロモソズマブは(特に一年以内の)脳血管、心血管リスクを考慮して使用すること、警告、禁忌に要注意することも教えて頂きました。(一例としてゾレドロン酸は腎障害に要注意) 最後に呉市の骨粗鬆症重症化予防プロジェクトの紹介で市と協力した取り組みにより骨粗鬆症治療が増加し椎体骨折が減少した取り組みも教えて頂きました。
2/6宇部市多世代ふれあいセンターで第2回宇部市医科歯科連携研究会に参加しました。松本歯科大学松本教授の「薬剤関連顎骨壊死のポジションペーパー2023の解説」がありました。顎骨壊死ポジションペーパー2023の詳しい解説として顎骨壊死の本態は骨壊死というより歯性感染症から波及した骨髄炎であることを強調されました。顎骨壊死の発生頻度は呉市などの論文からから0.1%であり台湾に次いで多いとのことでした。前回のポジションペーパーが骨吸収抑制剤使用中に抜歯する時に予防的休薬を推奨していたのが今回予防的休薬は原則不用であるということ、骨粗鬆症治療前あるいは治療後速やかに歯科紹介して医科歯科連携をする(口腔の感染源の除去)という2点が重要であるとのことでした。医科歯科連携を妨げる因子として情報共有の欠如、連携のキーマンの不在、患者教育(歯科医の減少)があり今後の検討課題であるとのことでした。 次いで大阪医科薬科大学口腔学植野教授の「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理」を拝聴しました。重症化する顎骨壊死で自然発症(原因不明)が15%あるががんや糖尿病など全身状態が不良なケースが多いとのことでした。骨吸収抑制剤を使用変更することを歯科医に知らせるような医科歯科連携が重要とのことでした。 山口市でも骨粗鬆症病診連携協議会を立ち上げており今後の参考にしたいと思います。