院長ブログ

7/20 山口グランドホテルで山口県臨床整形外科医会教育研修会があり参加しました。最初に九州がんセンター整形外科の薛先生の「整形外科医が慌てずにがん患者と向き合うための知識」を拝聴しました。日本整形外科学会骨軟部腫瘍医は学会員2.6万人に対して約180人と少ないこと、整形外科領域のがんは骨肉腫、軟部肉腫が年間2800人ですが転移性骨腫瘍は年間5-10万人とのことでした。がん患者が運動器疾患で移動能力が低下するがんロコモの解説されPS(performance status)低下によるがん治療の中断、予後悪化につながるとのことでした。又骨転移について乳がん、肺がん、前立腺がんが頻度高い、脊椎転移が最も多いSRE (skeletal related event)骨関連事象として病的骨折、麻痺、高カルシウム血症は緊急性(入院)があるので治療先に連絡すること、骨転移の治療として抗がん剤だけでなく骨折予防として骨吸収抑制剤を使用します。又骨粗鬆症治療も重要でがん治療関連骨減少症CTIBLについても述べられ、かかりつけ整形外科医との連携の重要性も教えて頂きました。さらに白血球が抗がん剤投与後2週で最低になる状態(Nadir)や分子標的治療薬による創治癒遅延、免疫療法薬による免疫関連有害事象(irAE)などキーワードを教えて頂きました。

次いで横浜市立大学附属市民総合医療センターリウマチ膠原病センターの持田教授の「RA治療におけるBio製剤の医療経済性について」を拝聴しました。関節リウマチ診療ガイドライン2024MTXで効果ない時にバイオ製剤(IL6阻害剤とTNF阻害剤)又はJAK阻害剤を使用推奨するがJAK阻害剤は副作用等に注意する必要がありバイオ製剤を優先するという記載があることを教えて頂きました。

7/13日本臨床整形外科学会のその後ですが座長のセッションを終えてシンポジウム「薬剤関連顎骨壊死予防とこれからの医師薬連携」のシンポジストとして参加しました。私は医科歯科連携アンケート調査の発表を行いました。顎骨壊死に関して薬剤師、歯科の先生も発表され活発な討論になりました。

ランチョンセミナー後にもう一題骨形成促進剤の発表も無事終わりました。

夕方文化フォーラム「女性とスポーツ〜人生100年への健康寿命延伸に向けて〜」を拝聴しました。松野明美さんと陣内貴美子さんの講演もありました。整形外科医の田中眞希先生の講演では健康日本21においてライフコースアプローチを踏まえた健康づくりについて若年期には運動やスポーツの増進による骨量の増加による最大骨量の獲得、骨粗鬆症治療による骨量低下の治療も必要ですが運動が楽しいと感じることが大事とのことでした。千葉大学の山内先生のロコモのレクチャーがありました。ロコモ度テストでは全て女性がリスク因子になり女性はロコモ対策に気をつける必要があります。ロコトレについてはロコモオンラインに詳しく解説してあるので参照してください

松野明美さんと陣内貴美子さんからはアスリートの時にスポーツドクターに話を聞いてもらい精神面でも支えてくれたことをお話しされました。

7/13熊本市で日本臨床整形外科学会があり参加しました。モーニングセミナーで沖本先生の骨粗鬆症治療で大腿骨近位部骨折・椎体骨折は減るのか?地域における疫学データから整形外科日常診療を科学する、という演題を拝聴しました。大腿骨近位部骨折は欧米では減少傾向にありますが日本ではまだ減少していないのが事実です。広島県呉市では2017年と比較して骨粗鬆症予防プロジェクトが発足してから2020年のレセプトデータでの解析で統計学的に減少したとのことでした。ビタミンD不足が日本人は圧倒的に多いので補充が必要ですが腎機能に気をつけて使用することを強調されました。骨密度を見ながらビタミンDの補充に加えて骨吸収抑制剤のビスホスホネート製剤、デノスマブを投与して骨折リスクの高い方には骨形成促進剤が使用されます。骨吸収抑制剤は顎骨壊死のリスクがあることは知られていますが呉市ではレセプトデータを利用して市が治療中断した人に手紙を送ったり、医科歯科連携を市報に掲載して市民に告知する取り組みをしているとのことでレセプトデータから骨粗鬆症患者で1.33人/1000人、一般住民で0.05人/1000人との結果が出たとのことでした。デ又ノスマブ長期投与後中止されると骨密度が急激に低下して骨折リスクが2倍以上になるデータも示して頂きました。

骨形成促進剤に関して古い骨の新陳代謝やマイクロクラックを修復する(アナボリック)のが骨形成促進剤であるテリパラチド、アバロパラチドで、骨の表面に骨を作るモデリングであるロモソズマブがあります。骨折、顎骨壊死、リモデリングの患者さんにはリモデリング効果の高いテリパラチド、アバロパラチドが望ましく、大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療では人工骨頭置換術後は骨吸収抑制剤が、骨接合後にはリモデリング効果の高い骨形成促進剤が第一選択になるとのことでした。又薬物治療を行う上で添付文書の警告文書に注意しながら使用することも教えて頂きました。

 7/12 19:30-維新ホールで小川仁志の哲学カフェがありテーマが「痛みとは?」ということで大変興味深く参加しました。アカデミーハウスの方が企画されているとのことでした。会議室に行くと老若男女30名ぐらいの参加者で新南陽整形外科の花岡院長先生が毎回参加されているとのことでした。小川仁志先生が痛みについて皆に質問してそれについて自分の考えを述べる形式でしたが小川先生も非常によく勉強されており参加者も常連の方が多いのか?積極的に意見を述べておられました。

いたみの存在意義、心の痛みと身体の痛み、痛みの共感が痛みを和らげる、慢性痛は痛みの記憶が関係する、自分を許す、自分と和解すると痛みが和らぐ、無痛文明という哲学者の言葉をしょうかいされ、痛みをとることで感じないことで失っているものもあるなど印象に残りました。

普段から痛みのある患者さんと接している医療者として痛みの認識、治療に関するヒントがありました。

第2回痛覚変調性疼痛研究会をウェブで拝聴しました。痛みの分類として侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に分類されていましたが第3の痛みとして痛覚変調性疼痛の理解を深めて研究成果を報告されました。この中で痛覚変調性疼痛は心因性疼痛に置き換わるものではなく、メカニズムとしての定義であることを強調されていました。原因がなく生じる痛みはトップダウン型、侵害受容性疼痛の感作などによって生じるボトムアップ型があり、時間の要素が加わることも勉強になりました。まだまだこの分野の研究が進むと理解も深まると思いました。

6/30ジクトルテープ(経皮吸収型 持続性疼痛治療剤)記念講演会があり参加しました。四方先生のジクトルテープの使い処の講演の後、福島県立医大二階堂先生の腰痛に対する薬物療法の現状と未来、名古屋大学医学部今釜教授の腰痛を含めた運動器のエビデンスの講演を拝聴しました。
二階堂先生の講演から非特異的腰痛の治療は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛を病態生理学的変化を認識して薬物治療する必要があり、腰痛の神経障害性疼痛は20%前後あります。薬物療法は鎮痛効果が得られることは望ましい効果ですが有害事象などは望ましくない効果もあるので益と害を見極めて治療することが必要とのことでした。
今釜先生の講演では脊髄髄内腫瘍や靭帯骨化症の術後疼痛は脊椎外科にとって永遠の課題で近年の低侵襲手術の紹介をされました。慢性疼痛は高齢者は特に老化による廃用性障害とサルコペニアが関与しており、第3の痛みとして痛覚変調性疼痛が注目されています。名古屋大学の八雲町の住民検診の結果で神経障害性疼痛の危険因子として歩行機能不良、腰椎後弯、BMI低下などがあり、痛みが強いと抑うつ、中枢性感作が強いデータをお示し頂きました(一般住民の中枢性感作は5-8%とのことでした)。日本整形外科学会などがフレイルロコモ予防宣言を行い、健康日本21でもロコモフレイル予防が入っています。慢性腰痛に薬物別効果の結果、薬物療法の費用対効果はそれぞれ高いという結果、診療時間と満足度の結果、不良因子として高齢、神経障害性疼痛、罹病期間が長いなどがあるとのことでした。慢性腰痛にNSAIDSとプレガバリンの2剤併用治療は下肢痛と睡眠の効果が高かったことも教えて頂きました。

6/22順天堂スポーツフォーラムをウェブで拝聴しました。順天堂大学整形外科のスポーツドクターの先生方がバスケットボール日本代表やパラリンピックアスリートのメディカルサポートの実際について発表されバスケット選手の足関節捻挫の特徴など専門性の高いお話を拝聴しました。

6/15維新ホールで漢方セミナーがあり参加しました。講師は整形外科医で東京蒲田病院整形外科の冨澤英明先生でした。漢方薬はテリパラチドに似ているという発想は斬新でした。漢方薬は末梢循環を良くして血流障害を改善することが可能とのことでした。運動器に漢方を使用するコツを教えて頂きました。

6/9周南市文化会館で山口県医学会総会が徳山医師会の主催であり来年主催する山口市医師会として大勢で参加しました。受付の様子、会場整理、進行の仕方なども注意しながら見学しました。

山口大学呼吸器学講座の松永和人教授の「感染症とCOPD」

大阪公立大学 山口悦子教授の「医療安全を問い直す 〜医療の質と心理的安全〜」 の2演題があり拝聴しました。

昼飯を挟んで市民講座があり幸田浩子さんのソプラノリサイタルがあり多くの市民が参加され、私たちもその歌声に感動しました。

来年も負けないように山口市である総会の企画運営の準備を進めていこうと皆で決意表明しました。