山口経済レポート連載記事 – ページ 2

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山口経済レポート

院長が2013年から山口経済レポート(http://www.ykr.co.jp/index.html)に毎月掲載している過去のコラムを掲載しています。腰痛を中心に様々な整形外科の疾患や情報を発信していますので順次アップしていきます。

前回のお話の続きですが、脊椎、仙腸関節炎または末梢関節炎を伴う非リウマチ性疾患である脊椎関節炎は強直性脊椎炎に代表され、血性反応陰性脊椎関節症とも言われてきました。その後の研究でHLA-B27遺伝子が関与する関節、皮膚、眼、腸管に及ぶ全身性疾患であることがわかってきました。最近では国際脊椎関節炎評価学会の基準では体軸性脊椎関節炎に分類されます。

ドイツでは成人の1%に発症し、関節リウマチと同程度とされていますが日本では0.02-0.03%と少なく、男女比は3−4:1で男性に多く、90%以上が40才以前に発症します。仙腸関節に炎症性サイトカインが産生され、膠原病(関節リウマチなど)のような自己免疫疾患ではなく自然免疫の関与が想定されています。強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、急性前部ぶどう膜炎、若年性脊椎関節炎、分類不能・診断未確定脊椎関節炎に分類されています。症状は3カ月以上持続する炎症性腰背部痛で消炎鎮痛剤が有効です。また腰殿部痛の原因として脊椎炎、仙腸関節炎があり疼痛寛解を繰り返し、可動域制限が進行すると前傾姿勢となります。関節靭帯の付着部炎(特に踵)、片側末梢の関節炎も認められます。乾癬性関節炎は乾癬という皮膚疾患に伴う脊椎関節炎です。反応性関節炎は関節以外の部位の細菌感染症後に生じる関節炎で以前はライター症候群と言われ尿道炎、結膜炎、関節炎の症状を伴います。掌蹠膿疱症性骨関節炎は整形外科を受診される患者さんが比較的多く、胸骨肋骨鎖骨肥厚症という鎖骨の近位部が腫れて肩挙上時痛を伴います。線維筋痛症、強直性脊椎骨増殖症、リウマチ性多発筋痛症などは別の疾患です。

45才未満で3ヶ月以上持続する腰背部痛は体軸性脊椎関節炎を疑い、腰背部痛は無く、関節炎、付着部炎、指趾炎のみ持続する場合は末梢脊椎関節炎を疑うので専門医の受診をお勧めします。

腰痛の原因としては比較的まれですが最近私も経験しましたので解説します。

炎症性腸疾患関連関節炎とは脊椎関節炎の中の1つの疾患です。脊椎関節炎とは脊椎、仙腸関節炎または末梢関節炎を伴う非リウマチ性疾患です。1800年代には強直性脊椎炎と言われていましたが、研究が進むにつれて脊椎関節炎と言われています。血液検査では炎症反応は上昇しますがリウマチ因子などの抗体検査は陰性であることが多く、1970年代には血性反応陰性脊椎関節症と言われていました。炎症性腸疾患関連関節炎はクローン病(口腔から肛門まで主として小腸を中心とした炎症)と潰瘍性大腸炎(大腸のみ炎症)という腹痛、下痢、血便、体重減少を特徴とする原因不明の炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎で1020%に認められます。若い20代前後の男性に多く四肢関節炎や仙腸関節炎が非対称性で強直性脊椎炎に特徴的な竹様脊柱(バンブースパイン)も稀です。脊椎炎、仙腸関節炎を伴う患者の約50%HLA-B27という遺伝子が陽性になります。(ただしこの検査は保険適応ではなく自費になります)症状は緩徐に発症する安静時腰痛で運動で改善します。腰の前屈や後屈ができにくくなります。治療としたは消炎鎮痛剤が有効ですが、炎症性腸疾患を増悪させる可能性があるので長期使用は望ましくなく、抗リウマチ薬であるサラゾピリンやステロイド薬を使用する場合が多いです。生物学的製剤を使用する場合もあります。(保険適応あり)当院にも20代男性で潰瘍性大腸炎で治療中の患者さんで腰痛で来院されX線初見では異常なく、投薬、運動療法で改善しないためMRI撮像して仙腸関節炎が判明したので診断がつきましたが、この疾患の存在を念頭におくことを痛感しました。次回は脊椎関節炎の分類について紹介します。

骨粗鬆症の原因としてビタミンDの不足が問題となっています。特に日本人はビタミンD不足が多いとされていますが、最近このビタミンDを計測することが保険で認められましたので注目されるようになりました(正確には血清25水酸化ビタミンD)。ビタミンDには歯と骨の発育促進と小腸でのカルシウム吸収を促進させ、神経伝達や筋肉の収縮を行う作用があります。この濃度が30ng/ml以上をビタミンD充足状態、20以上30未満をビタミンD不足、20未満をビタミンD欠乏と判定されます。当院での検査の結果、骨粗鬆症と診断した患者さんの82%がビタミンD欠乏でビタミンD不足が16%であり正常はわずか2%出会ったことに私自身も改めてビタミンD検査の必要性を痛感しました。ビタミンDを多く含む食品はきくらげ、本しめじ、しいたけ、イワシやカツオ、サケなどの魚介類や卵黄・バターです。ビタミンD欠乏症には1日800-1,000 単位のビタミンD摂取が必要とされます。一方でビタミンDとカルシウムの補給によって骨折の予防に有効であるとする研究もあるものの、最近では否定する報告もあります。骨粗鬆症の予防にはビタミンD欠乏があれば補充を行いながら、運動、禁煙、過度のダイエットをしないことも重要です。中高年以上で骨折の既往がある方で骨粗鬆症検査をしていない方、閉経前後で骨粗鬆症を心配する女性のみなさんはまず整形外科で骨密度検査(特に腰椎と大腿骨近位部の骨密度が計測できるDEXAがおすすめ)を行うことをお勧めします。また、骨粗鬆症と診断された場合にはビタミンDの検査を含めてカルシウム、リンの濃度、ビタミンKの充足度、骨代謝マーカーを調べることで適切な治療の選択に繋がるので主治医と相談しながら治療を選択してください。

骨粗鬆症に伴う高齢者の腰背部痛の原因として椎体骨折や椎体偽関節による痛み、脊柱変形による痛み、骨粗鬆症自体の痛みがあるとされています。急性腰痛での脊椎新鮮骨折は30-60%という報告がありますが、骨癒合が完成していない椎体偽関節による痛みは椎体不安定性に伴う炎症細胞浸潤や血管新生、閉鎖腔における内圧上昇などの要因が複合して機械的、化学的、熱刺激などのポリモーダル受容器に作用して痛みが生じます。脊柱変形による痛みは椎体が前潰れになって生じる後弯増強による傍脊柱筋内圧上昇や筋疲労によって生じますし、胸椎部が後弯する代償性に腰椎が前弯増強することによる椎間関節へのストレスによっても生じます。骨粗鬆症症自体による痛みは骨吸収が亢進し、破骨細胞がホルモンを活性化することで生じる骨由来の痛みによって生じます。骨微細構造の破綻にともない骨内神経が刺激され、痛覚過敏状態になることなども原因とされています。このように原因が重複する場合もあるので治療者側も患者さんの痛みの状況や発症時期など問診をしっかり行い治療に当たる必要があります。

腰痛や頚部痛で通院したことのある方であれば腰椎牽引、頚椎牽引を経験されたことのある方は少ないないと思います。2001年の日本整形外科学会の調査では神経症状のある腰痛に対する保存的治療は牽引療法は1位であり、神経症状がない場合でも温熱療法に次いで2位でした。腰痛治療において牽引療法は有効か?ということに関しては2012年日本腰痛ガイドラインでは有効であるエビデンスが不足しているということでグレードIでした。最近の前向き研究で腰椎椎間板ヘルニアで明確な受傷機転があり、症状の持続期間が短く、腰痛の既往が10回未満の場合は短期的に日常生活の質が改善するものが多いという報告もあります。また米国では急性腰痛(1ヶ月以内)の5%、亜急性腰痛(1-3ヶ月)の31%、坐骨神経痛を伴う急性腰痛には30%に牽引が実施されている報告があり、頚部痛では77%、神経根症状のある患者には93%牽引が実施されている報告があります。海外でもエビデンスが乏しいとはいうものの実際には実施されていますがこれには患者さんとの関係構築に役立っているとのことですので患者満足度を高めるための手段として使用されているという意味合いではないかと思います。牽引の効果には後方椎体間の離開によるストレッチと可動域改善が期待できる機械的効果と椎菅孔の拡大による神経生理学的な効果があるので、即時的効果は期待できますがあくまでも効果が一時的であるということを認識する必要があります。

骨粗鬆症治療薬は大きく3つに分類され、骨吸収抑制剤と骨形成促進剤、カルシウム製剤があります。骨吸収抑制剤はビスフォスフォネート製剤、選択的エストロゲン受容体調整薬、カルシトニン製剤、デノスマブ(抗ランクル抗体)、女性ホルモン製剤があり、骨形成促進剤は活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド製剤があり、特に近年骨吸収抑制剤ではゾレドロン酸(1年に1回の点滴製剤)、デノスマブ(半年に1回の皮下注射)、骨形成促進剤ではテリパラチド(集1回皮下注射と連日投与の自己注射)の登場により骨密度の増加が大いに期待でき、治療の選択肢が広がりましたが、そのぶん治療者側も各製剤の特徴と長所、短所を知って患者さんごとのオーダーメイドの治療が必要になりました。それに加えて今年登場する抗スクレロスチンモノクローナル抗体(一般名ロモソズマブ)を紹介します。ロモソズマブは骨形成促進剤に分類されますが、最大の特徴は骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を両方有する初めての薬であり、世界に先駆けて日本で承認されました。1か月に1回皮下注射を行い原則1年間継続します。数千人の参加した国際共同試験の結果でも新規骨折抑制率、骨密度の上昇率も高い結果でした。このように非常に楽しみな薬剤ではありますが、適応については骨密度が非常に低く、脆弱性骨折(軽微な外力で骨折してしまう)の危険性が高いなど、しっかり吟味していく必要がありますが、骨粗鬆症の患者さんにとっては福音になることは間違いありませんので、骨折リスクの高いか骨折を繰り返す重度の骨粗鬆症に対して使用されいくことと思います。

12/1-2に滋賀県大津市で開催された日本運動器疼痛学会に参加して認知行動療法に基づく「いきいきリハビリノート」による運動促進法の講習会に参加しましたのでその内容を紹介します。慢性腰痛の治療法でエビデンスのある運動療法、小冊子を用いた患者教育、認知行動療法の3つの要素を加味して、新潟大学リハビリテーション科の木村慎二先生、九州大学心療内科の細井昌子先生らが作成されたもので、すでに第4版となります。このノートを使用して患者さんの医療不信の払拭、日常生活動作、生活の質の向上、社会への参加機会の向上を図るものです。3ヶ月以上の疼痛を有し、有効な薬物療法がなく、外科的治療も適応がなく、運動療法に前向きり取り組める方が対象になります。また質問用紙で破局的思考のスケールで30点以上、うつ、不安のHADSというスケールで10点以下であり、交通事故や労働災害、精神疾患などを除外します。最初に慢性腰痛には運動療法、小冊子を用いた患者教育、認知行動療法が効果があることを説明して、半年から1年後の長期目標と1ヶ月後の短期目標を立てて毎日ノートに記録をしてもらいます。どんな行動をして身体の調子がどうだったか?それについてどう考えたか?、その時の感情を記載してもらい、自分をねぎらうメッセージを書いていただきます。この内容を見て治療側はメッセージを書き入れます。主には理学療養士がリハビリを指導しますが、マッケンジー法、ウィリアム体操、ストレッチング、筋力増強訓練、体幹安定運動を指導しますので理学療法士が記載することが多くなります。今回マインドフルネスウォーキングという歩行方法もリハビリメニューに加わりより充実した内容になっていました。全国的に大学病院やペインセンターなどでチーム医療の中で使用されることが増えてきているそうです。

(このノートは一般の方向けには配布されませんのでご注意ください)

スポーツ傷害でのケガが生じた際の応急処置として従来RICE処置が原則であると言われてきました。RICEとはRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(患肢挙上)の4つの処置のことを言います。冷却の方法としては損傷部位にタオルなどで覆ってから氷嚢(冷却器)などで20分冷却を間欠的に繰返します。冷却することで腫れや痛みを軽減する効果もあります。氷を入れる際のコツとして氷を入れたアイスバック(またはビニール袋など)の空気をできるだけ吸い出してできるだけ真空状態にすることです。圧迫は弾力包帯などで損傷部位を適度に圧迫することで出血や腫れを縮小します。患肢挙上は損傷部を心臓より高く上げることで腫れを予防します。次にRICE処置にProtection(保護:ギプス、装具で損傷した組織を保護する)を加えてPRICEという概念が提唱されました。さらに最近(2012年にBleakleyらが提唱)ではPOLICEという概念が提唱されるようになりました。POLICEはProtection、Optimal Loding、Ice、Compression、Elevationの頭文字からなります。Optimal Lodingとは適切な負荷と言われており、必要以上に安静、固定をすると筋肉の萎縮や関節の拘縮などの弊害が生じることがあるので適度な運動を早期から行うことで筋肉の萎縮を予防し、組織修復の質を改善することが期待されます。しかしながら適切な負荷は損傷の程度や受傷したときのエネルギーの大きさによって異なりますので設定が非常に重要になります。まだそのエビデンスが確立されていませんのでできれば整形外科で医師、理学療法士の指導の下行うことが望ましいと思います。今後このPOLICEが応急処置の王道となると考えられますので紹介しました。

参考文献
Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC. PRICE needs updating, should we call the POLICE? Br J Sports Med 46:220–221, 2012.

最近注目されている健康経営については、山口県でも健康経営企業制度があり、もうすでに実践されている企業も多いと思いますが、経済産業省の健康経営ハンドブックには「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とされています。特に健康経営で問題となるのが従業員の健康問題であり、健康問題に直接かかる医療費とは別にアブセンティーズム(病欠)とプレゼンティーズム(健康問題で効率・生産性が低下している状況)があり、プレゼンティーズムの比率が高いことが知られています。疾病コストは医療費+薬剤費ではがん、肩こり・腰痛、冠動脈心疾患、慢性疼痛(肩こり・頭痛以外)の順であり、がんが上位ですが、生産性(プレゼンテーィーズムとアブセンティーズムの合計)ではけん怠感、抑うつ、肩こり・腰痛、睡眠障害の順で精神疾患の占める割合が多いのですが、合計では肩こり・腰痛がトップであり、抑うつ、けん怠感、慢性疼痛が続きます1)。このように運動器疾患の占める割合が高いことがお分かりいただけると思います。その中で慢性疼痛による経済的損失は1週間で4.6時間、時間ベースの経済損失は1兆9530億円にのぼるという報告もあります2)。慢性疼痛は成人の約2割を占め、患者数2300万人と言われ男女とも腰痛、肩こりが上位を占めます。厚労省では慢性の痛み対策として、前回お話しした慢性疼痛ガイドライン作成や医療者の役割分担による医療体制の構築、慢性疼痛の教育、国民への啓発、情報提供、調査・研究を行い、慢性の痛み政策ホームページ(http://www.paincenter.jp)を立ち上げていますので是非ご覧ください。

2018年3月に厚労省の慢性疼痛の研究班と7学会が協力して慢性疼痛治療ガイドラインが発行されました。総論、薬物療法、インターベンショナル治療、心理的アプローチ、リハビリテーション、集学的治療からなり、51の質問項目に答えをエビデンスレベルと推奨度を記載されています。医療者向けですが患者さんの声を反映するように配慮してあります。慢性疼痛の定義は治療に要すると期待される時間の枠を超えて(概ね発症から3ヶ月以上)持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛みとされました。慢性疼痛の分類では要因別には侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛がありますが、これらが複雑に絡んだ混合性疼痛になっていることが多く、痛みが長引くと心理社会的要因との相互作用により、抑うつ状態や破局的思考が関与して不動化などが出現し日常生活動作の低下が生じます。失業などにより社会活動性が低下すると家庭内での存在感や経済的ストレスが自己価値観の低下につながり、それに伴って自己効力感が低下するという悪循環が生じます。慢性疼痛の診断には問診、身体所見、検査(血液、画像)を駆使して正確な病態把握が必要であり、悪性腫瘍、感染性疾患や外傷性疾患を見逃さないようにすることも重要です。また原因となる疾患の診断だけでなく痛みを修飾している抑うつ、不安、不満感など心理的側面や行動の評価も必要です。慢性疼痛患者さんを評価する際に多面的評価が必要で、痛みの強さ、部位、性質、日内変動、増強。緩和因子、心理状態、日常生活の障害度、家族構成、精神疾患、職歴、仕事内容、補償、睡眠、食事、体重変化などにも注意が必要です。痛みを全人的に理解して個々の患者に適した治療やケアを選択します。慢性疼痛の治療における目的は痛みの軽減が治療の目的の一つではあるが、第1目標ではなく、治療による副作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い、日常生活動作や生活の質を向上させることが最終目標となります。

慢性疼痛の薬物療法については非ステロイド性抗炎症薬は運動器疼痛においては使用することを強く推奨する、神経障害性疼痛については使用しないことを弱く推奨する、アセトアミノフェンは運動器疼痛には使用することを強く推奨する、神経障害性疼痛については使用しないことを弱く推奨する、プレガバリンは運動器疼痛においては使用することを弱く推奨するとされましたが、副作用を考慮して、漫然とした長期使用は控えることも付け加えられました。。また神経障害性疼痛については使用することを強く推奨する、デュロキセチン、トラマドールは運動器疼痛、神経障害性疼痛については使用することを強く推奨する、漢方薬は運動器疼痛、神経障害性疼痛については使用することを弱く推奨されました。インターベンショナル治療(ブロック治療)については、硬膜外ステロイド薬注入、硬膜外ブロックは頚椎・腰椎椎間板ヘルニア、頚部・腰部脊柱管狭窄症に対しては強く推奨されました。神経根ブロックは腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対しては強く推奨され、頚椎疾患では弱く推奨されました。後枝内側枝ブロックは頚椎・腰椎由来の頚部、腰背部痛に施行することを強く推奨され、椎間関節ブロックは施行することを弱く推奨されました。

トリガーポイント注射は慢性疼痛には施行することを弱く推奨され、関節内注射は変形性膝関節症にはステロイド、ヒアルロン酸とも施行することを弱く推奨する、という内容でした。心理的アプローチについては、患者が受容しにくい疾患について正しい知識や情報を心理面に配慮しながら伝え、問題に対処する方法を教育、援助する心理教育、リラクゼーション、セルフモニタリング、コミュニケーションスキルなどの行動療法、認知行動療法、第3世代の認知行動療法であるマインドフルネス(心のあり様をマインドフルネス瞑想を通じて育成し、それにより身体的・心理社会的ストレスへの耐性が向上する)、アクセプタンス&コミットメントセラピー(痛みに関する不快な思考・感情を取り除くことに時間や気力を費やすのではなく、不快な事象が存在する状態が人間にとって正常な状態であることに気づき、患者が願う人生を送ることに支援する心理療法)はいずれも行うことを強く推奨されました。リハビリテーションについては慢性腰痛、変形性膝関節症、慢性頚部痛のいずれも施行することを強く推奨され、ヨガ、太極拳、気候、ピラティス、ラジオ体操は施行することを弱く推奨するという結果でした。また腰部固定帯や頚椎カラー、テーピングは慢性疼痛治療には推奨されませんでした。また理学療法士のみでなく様々な医療者がチームを組み、共通の目標に向かってリハビリテーションプログラムの遂行にあたり、支援する集学的リハビリテーションも慢性疼痛に強く推奨されました。集学的治療を始めるにあたっては各種の医療従事者が痛みに対する解剖学的・生理学的知識を身につけ、痛みに影響を及ぼす心理社会的要因を理解し、疼痛治療の基本的原則を理解した上で生物心理社会モデルに則って治療するという共通認識を持つことが重要であり、まず身体機能を改善させ、痛みがあってもある程度の活動ができることを経験させて自信を取り戻させることによって痛みで障害された情動機能を回復させることが目的であり、最終目標は患者さんごとに異なりますが、生活の質を向上させることです。