第84回 坐骨神経痛に早期の運動療法が有効

腰痛や下肢痛を伴う症状を坐骨神経痛と言います。原因としては腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症など代表的な疾患ですが、治療としては薬物療法、神経ブロック、手術以外に運動療法がありますが、一般的には神経症状(下肢痛)が軽減してから運動療法が行われることが多いです。最近の論文で坐骨神経痛に早期に運動療法を行ってその効果を見た論文が発表されました。過去3ヶ月以内に坐骨神経痛を発症した患者さんに早期運動療法を行った結果、1年後に大幅に改善した割合が対照群28%と比較して45%と高かったそうです。

腰痛ガイドラインでは急性腰痛の治療法に運動療法は推奨されず、慢性腰痛には推奨されています。一方で運動療法は腰痛の予防には効果があり推奨されています。そこで私は急性腰痛でも、予防効果もある運動療法であれば効果があると考えて当院ではマッケンジー法という考えを基本に積極的に運動療法を行っています。坐骨神経痛においては神経症状が高度の場合にはブロック療法と薬物稜堡を組み合わせて疼痛を軽減してから運動療法を行っています。急性腰痛の場合と同様に坐骨神経痛でも長期間安静にするより、投薬、ブロック等で疼痛を軽減させて運動療法を比較的早期に行うことで社会復帰も早まる可能性も期待できますので整形外科にご相談ください。

参考文献 Fritz JM, et al. Ann Intern Med. 2020 Oct 6.[Epub ahead of print]

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。