第85回 サルコペニアとダイナペニア

ロコモ ティブ症候群とサルコペニア、フレイルという3つのキーワードを本コラムでも何回か取り上げました。簡単におさらいするとロコモ ティブ症候群は移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高い状態で、サルコペニア(筋肉喪失)は高齢期に見られる骨格筋量の減少および筋力または身体機能の低下で、フレイル(虚弱)は加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態です。サルコペニアはロコモ 、フレイルの原因にも結果にもなりうる病態で65才以上、歩行速度低下(秒速0.8m以下)、握力低下(男性26kg,女性18kg未満)、筋量低下と基準が明らかであることが特徴です。全てが認められれば重症サルコペニア、握力低下と歩行速度低下のいずれかと骨格筋量減少があればサルコペニア、骨格筋量減少のみであればプレサルコペニア、握力低下のみであればダイナペニアと分類されます。日本での最近の健診結果では高齢者ではサルコペニアは男性1%、女性5%で、プレサルコペニアが男性9%、女性3%、ダイナペニアは男性9%、女性17%という結果でした。一方18-20才の若年男女ではサルコペニアの診断基準を満たしたのは男性0.4%、女性1%、プレサルコペニアはそれぞれ9%、3%、ダイナペニアは0.4%、1%という結果でした。この結果より高齢男性はプレサルコペニアが多く、女性は若年でも高齢でもダイナペニアが多いということが判明しました。若年期から過度なダイエットはせずにエネルギー摂取をして運動で筋肉量を増やすことが必要であり、特に若い女性は握力低下(ダイナペニア)が将来のサルコペニアにつながるので注意が必要です。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。