第91回 骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル

日本整形外科学会が昨年骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアルを作成しました。2015年に骨粗鬆症学会が作成した骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインがあるのですが薬物療法が中心であり、診断や保存治療、手術についてはほとんどページが割かれていないことからQ &A方式で作成されており整形外科臨床医には非常に有用なマニュアルです。この中から特に私が注目したものを紹介します。まず症状で特徴的なのは体動時の痛みで、当院でも高齢者の急性腰痛はいわゆるぎっくり腰ではなく、椎体骨折が約半数いるという認識で診断にあたっています。画像診断ではエックス線検査だけでは早期診断で発見できないことがあるためMRI撮像を推奨しています。またベッド上安静も(1−2週間の)短期間の安静を推奨し、コルセットによる保存的治療も確立されていないとされています。(しかしながらコルセットは早期に動くためにも必要であるので実際には必ず作成しています)また保存的治療を行なっても痛みが改善できない場合には椎体内にバルーンを入れたあとセメントを注入する経皮的椎体形成術も有用な選択肢の一つであることも記載されました。(この治療についても様々な意見があります)治療薬としてガイドラインに記載のない薬剤(ゾレドロン酸:一年に1回静脈投与の薬剤とロモソズマブ:月1回皮下注射)も椎体骨折および大腿骨近位部骨折の抑制効果が高いことも追加されました。高齢者の脊椎骨折は整形外科外来でよく遭遇する疾患だけに私達整形外科医は最新の知見を参考にしながら早期診断、早期治療を行うよう日々心がけています。

参考文献:日整会誌 2020; 94: 882-906

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。