第39回 フレイルとサルコペニア

今回の二つのキーワードを紹介します。「フレイル」(虚弱)とは、心身機能の著明な低下のことであり、健常な状態と要介護状態の中間の状態として、日本老年医学会が2014年に提唱しました。「サルコペニア」とは筋肉減少症でフレイルの最大の要因となります。ヒトの筋肉量は40代より低下が始まり、年0.5パーセント減少し65才以上減少率が増加して80才までに30-40パーセント低下します。高齢者の多くは健常な状態から、筋力が衰える「サルコペニア」という状態を経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至ると言われています。

サルコペニアの診断基準は、(1)筋肉量の低下―両手足の筋肉量の減少、(2)筋力の低下―握力の低下(男性26kg未満、女性18kg未満)、(3)身体能力の低下―日常の歩行速度の遅延(秒速0.8メートル以下)、とされています。歩行速度の目安としては青信号で横断歩道を渡りきれるか?でも判断可能です。簡便な自己診断方法として東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢氏らが考案した「指輪っかテスト」は両手の親指と人さし指で輪っかをつくり、ふくらはぎの最も太い部分を囲み、指のあまり具合で、隙間ができる場合はサルコペニアの疑いがあります。

一方フレイルは動作が遅くなったり転倒しやすくなったりする「身体的要素」、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題を含む「精神的要素」、そして独り住まいや経済的な困窮などの「社会的要素」の3つの要因が関与しています。身体的要素にはサルコペニアやロコモティブシンドロームが含まれ、精神的要素にはうつや認知症が、社会的要素には孤独や閉じこもりが含まれており、より広範な用語です。

サルコペニアやフレイルの予防は定期的に体を動かす運動(前回紹介したウォーキングなど)を行うこと、良好な栄養状態を保つこと、積極的に社会活動、社会参加を行うことです。栄養では性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質(肉や魚、大豆、牛乳)を毎日食事から取ることが望ましいと言われています。若年者や中年で運動する習慣のない方は、是非ウォーキングから始めることをお勧めします。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。