第42回 ゼロから始めるケガ予防-山口高校での講演から-

1/19山口高校健康の日に「ゼロから始めるケガ予防」という講演をしましたのでそのポイントをお話しします。ケガの種類としてケガは不注意などのため、体に傷を負うもので、キズは切ったり打ったりして、皮膚や肉を損じたものです。傷の治療の基本は切り傷は、出血は圧迫と挙上と固定を行い、深い時は医療機関で縫合します。汚染がある時は、水道水でまず十分洗浄して、汚染なくなれば湿潤療法を行いますが、汚染があれば局所麻酔後にブラッシング後に湿潤療法を行います。スポーツ傷害はスポーツ外傷とスポーツ障害があり、スポーツ外傷は一回の外力で起こるケガで、スポーツ障害は故障やオーバーユースが原因で生じます。高校生では足関節、膝関節、手関節、手指のケガが多いのが特徴です。スポーツ傷害は、ラグビー、柔道、バスケ、サッカー、体操、バレーの順で多く、疾患としては骨折、脱臼(関節)、靭帯損傷(捻挫)、肉離れ(筋肉の損傷)、腱断裂が代表的疾患であり、特に脱臼は緊急性があります。症状は腫脹、発赤、熱感、疼痛、機能障害(炎症)が特徴的です。足首の捻挫は実は靭帯損傷であり晴れや内出血がひどいほど重症と考えたほうがいいです。外傷の応急処置として、RICE(Rest:安静、Icing: 冷却、Comppression:圧迫。Elevation:挙上)が有名ですが、それに加えて最近ではPRICEと言って、Protection:保護、固定(松葉杖やギプスによる)が加わります。死亡や重度障害につながるケガには心臓震盪、頭頸部外相(脳震盪、頚椎・頸髄損傷)、胸腹部外傷(ショック症状)、顔面外傷(鼻出血、眼、口腔内)があり、高1で最も多く、脊髄損傷は高2、3で多くなります。心臓震盪は心室細動という致死的不整脈が原因で、胸部への軽い衝撃で心停止が起こりますが、心肺蘇生(CPR)と早期除細動(AED)で救命率は向上します。頭頸部外傷発生時は、対応フローチャートに基づき、意識障害がある場合は119番通報と心肺蘇生、AEDの手配を行いますが、意識があるが、両手足の麻痺がある場合には頸髄損傷の疑いがあり、頚椎カラー固定で保護したのちに最寄りの医療機関に救急搬送しますが、片麻痺の場合には脳神経外科などに送ります。

また、スポーツ障害とは運動中に発現した筋、骨格系の疼痛症候群 であり、明らかな外傷、疾患、変形または異常がないもの、反復的な微小外傷の結果生じるもので、こちらは骨端症、離断骨軟骨炎(肘、膝)、筋腱障害などがあります。

運動により脂肪が減り、筋肉が増え、骨が丈夫になり、心臓が大きくなり、神経は脳から筋肉への命令を早く効率よく伝えるようになリます。また、脳に血液と成長因子が多く送り込まれて記憶力、学習能力、認知力が高まり老化防止になり、運動中に気分を高揚させる化学物質(エンドルフィン)が分泌されます。運動により免疫機能が向上したり、運動能力や趣向の違いは遺伝子が影響するが80パーセント以上は環境に起因し、運動には有酸素運動は不可欠であり、筋力トレーニングと並行して行うことには科学的根拠があります。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。