九州沖縄山口OLS研究会ウェブセミナー
2019/06/23

6/22小郡で第7回九州沖縄山口OLS研究会ウェブセミナー山口会場に参加しました。一般講演で獅子目病院の放射線技師の小松原先生の発表がありました。獅子目病院での放射線技師の立場から骨粗鬆症リエゾンサービスの取り組みを紹介されました。ほねっこ外来という骨粗鬆症専門外来で脊椎X線とDEXA、採血などを定期的に行われ治療継続率向上の為チェックシートの活用、放射線技師としてX線写真で骨粗鬆症が疑われたらDEXA検査を本人医師に勧めたりされるとのことでした。次いで山口県立総合医療センターリハビリ科の松下先生が院内のOLS活動という発表をされました。山口県立総合医療センターは整形外科の手術が年間1300件あるそうです。大腿骨近位部骨折は地域連携パスを使用し転院する患者さんには骨粗鬆症の情報を提供して治療継続を促しています。骨粗鬆症リエゾンサービス委員会を立ち上げて地域連携パスの改訂を行い、骨粗鬆症治療歴、DEXAを術後10日目に行い、骨粗鬆症治療のお願いを紹介状に添付されるとのことでした。又術後受診時の骨粗鬆症検査をされているそうです。特別講演として産業医大整形外科の酒井教授の骨粗鬆症に対する治療薬の選択と骨折予防への取り組みを拝聴しました。地域のおける骨折予防への取り組みとして近隣6病院で骨粗鬆症臨床研究をされ二次骨折予防としての薬物治療の徹底、一次予防として整形外科他疾患患者さんの骨密度測定、地域の啓蒙活動により地域での骨折の発生が減らせるか?というスタディをされているそうです。椎体骨折は60パーセント、大腿骨近位部骨折は37パーセントで520例の薬物治療介入の結果、治療継続率が90パーセント、大腿骨近位部骨折継続率は76パーセントと上昇しました。又薬物治療継続後2次椎体骨折は5パーセント、大腿骨近位部骨折は6パーセントで、3カ月以内の骨折が多いという結果でした。又ビタミンD測定の意義ですが25(OH)D欠乏は年齢によらず骨折患者さんの約80パーセントという結果でした。25(OH)D欠乏は(特に長管骨)骨折の危険因子になるそうです。実臨床では骨粗鬆症と骨軟化症を合併したケースが増加するのでビスフォスフォネート投与はビタミンD補充(特に活性型ビタミンD)が重要であるとのことでした。又高齢者の慢性腎障害はミネラル異常と骨代謝異常骨質を合併しCKD-MBD(慢性腎障害に伴うミネラル代謝異常)という概念を教えて頂きました。ガイドラインでステージ3以上ではミネラル異常があれば腎臓内科医と相談して活性型ビタミンD投与では高カルシウム血症に注意して治療する必要があること、薬物治療前に代表面積で補正しないeGFRでの評価が必要であることを教えていただきました。









午後から終末期医療、褥瘡と排泄についての講義でした。高齢者医療において終末期の医療介護の在り方、特に本人の尊厳あるいは最期の迎え方について医療者がどう寄り添うかが課題であるとのことでした。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは将来意思決定する能力を失った場合に備えた患者によるあらゆる計画であり患者、家族、医療者の話し合いを重視して、書面を残すことにこだわらず患者の希望に沿った医療やケアを提供する事ことが重要とのことでした。次いで褥瘡と排尿排便ケア管理について拝聴しました。床ずれ予防、自尊心を失わない快適な排泄促進、清潔維持、負担軽減、ポリファーマシーを避けるとのことでした。腹圧性、切迫性、混合性、溢流性、機能性尿失禁がありタイプを知ることが重要とのことでした。過活動性膀胱では骨盤体操(骨盤底筋群の体操)が有効とのことでした。男性の尿失禁は前立腺肥大との合併が多いのでα1アドレナリン受容体遮断薬が第一選択です。高齢者の便秘は腸蠕動が低下している弛緩性便秘、肛門部に溜まる嵌入便に気をつけることを教えて頂きました。褥瘡については体位変換、適切なマットレスの使用、タンパク、エネルギー低栄養状態が関与しています。好発部位は仙骨、大転子、踵、坐骨結節の順で、創の分類(黒色期、黄色期、赤色期、白色期)に応じた治療、ドレッシング材の適応は感染、深部に達するものは適応外であることなどリスクアセスメントが大切です。次いで多疾患合併症例について講義がありました。高齢者による様々な科から投薬されるポリファーマシーによる副作用が問題があり、減処方のプロトコールとして全ての薬剤の処方理由を確認し、有害事象のリスク確認、薬剤の潜在的なリスク、ベネフィット、中止薬剤の優先順位の決定、薬剤中止とモニタリングという手順を踏むことを提案されました。患者が疾患についての理解度も重要とのことでした。経過を見ながら介護保険が必要であるかを判断すれば本人が介護保険の申請する必要があり、ケアマネジャーと連携して受けるサービスを決定、サービス担当者会議を行いながらゴール設定に沿ったリハビリテーションの提供を行う手順も紹介され参考になりました。多疾患合併患者に対して治療が相互に影響することをイメージして介入すること、疾患の進行と加齢を踏まえて本人の希望、家族背景、QOLまでを考慮して治療方針を決定すること、専門医と患者・家族の橋渡しをすること、多職種と連携して自宅療養を支えることを提示されました。最後にかかりつけ医の社会的処方についての講義でした。社会的処方とは地域医療機関が人々をリンクワーカー(ケースワーカーなど)に紹介する行為とのことで、主治医の意見書の重要性を強調されました。ガンの5年生存率は約6割に達することからガンももはや慢性疾患という認識が必要で、仕事を持ちながら通院しているのは約32万人いるが収入は減収になることもあり、癌患者のかかりつけ医は体力、メンタルヘルス問題も含めて治療と仕事の両立支援、復職支援・就業継続に関する主治医の意見書を書くことも重要とのことでした