運動器疼痛治療最前線〜名古屋大学整形外科今釜准教授の講演


7/10山口グランドホテルで運動器疼痛治療最前線があり参加しました。山口大学整形外科の関先生が人工膝関節置換術の最近の話題について講演されました。大学で3Dナビゲーションを用いた手術をされているそうですが、術後満足度は2割が満足していないとのことでその対策をお話しされました。術後のアライメントはニュートラルアライメントプラスマイナス3度で行うことが主流だったそうですが、否定的な論文が出てきて次いでキネマティカリーアライメントが出てきて脛骨インプラントを3度内反して入れるそうですが、山大の検討結果ではメカニカルアライメントであれば成績が良いということですが、両者でまだ決着がついていないそうです。又前十字靭帯を温存する方がよい、という論文が出て、前十字靭帯を温存するとインプラントにストレスがかかりやすいそうですが患者満足度は高いそうですが屈曲制限が残ったりすることがあるので適応はケースバイケースとのことでした。又人工膝関節置換術後遷延性疼痛では山大の検討では術後満足度が低いのは術後の疼痛が相関しているそうですが、女性、術前の痛みが長く、術後一週以内の痛みが強いことはリスク因子となり、痛みの中枢感作が関連しておりCSIという問診でできますが簡易版CSI9があり疼痛評価法と相関があり術前、術後のCSIが高いことが術後の痛みの遷延が生じやすいそうです。特別講演で名古屋大学整形外科の今釜准教授が「慢性腰痛の疫学・臨床研究〜腰痛診療ガイドライン改訂にあたって」の講演を拝聴しました。名古屋大学整形外科で脊椎脊髄外科のトップの今釜先生の豊富なご経験も提示されました。名古屋大学の疫学研究では腰痛下肢痛は4割という結果でした。改訂ガイドラインには非特異的腰痛という言葉は安易に使用しないということが記載されていました。又レッドフラッグを見逃さないための骨折、腫瘍、感染、腹部大動脈瘤は見逃してはいけないことをお話しされました。又うつが有ると腰痛発症が2.9倍であること、喫煙・運動不足は腰痛発症のリスクであり、八雲スタディの結果で運動習慣は腰痛、を軽減しQOLを向上し、脊椎のインバランスや膝のインバランスが関連するヒップニーシンドロームという概念を教えていただきました。神経障害性疼痛の有病率は八雲スタディでは10パーセントという結果で脊椎前傾角が増加するとQOL低下に繋がるとのことでした。興味深いのは神経障害性疼痛がなかった住民で5年後に神経障害性疼痛になった方が12パーセントあり、その詳細な検討も教えていただきました。脊髄髄内腫瘍の術後神経障害性疼痛とQOLとの関連、ロコモ度テストと神経障害性疼痛との関連、抑うつと痛みの関連など統計学を駆使した研究について教えていただきました。又名古屋大学のでは慢性腰痛の対する薬は物別治療効果の検討では消炎鎮痛剤、弱オピオイド、トラマドールなどの治療効果、消炎鎮痛剤とプレガバリンの併用効果を前向きにスタディされた結果は有意差は出なかったそうですが睡眠効果や疼痛スコアは短期で疼痛効果を認めたとのことでした。ガイドラインの基本方針は診療で適切な治療・予防についての指標になるものとのことで委員会の苦労話もお話しされました。薬物治療でデュロキセチンは慢性腰痛では質の高い研究が3編あったとのことで消炎鎮痛剤と同等の推奨度であるとのことでした。最後に慢性疼痛治療における治療方針について述べて締めくくられました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。