院長ブログ – ページ 85

8/10の診療を終えていよいよ8/11-8/15までクリニックは盆休みになります。私は盆休みの過ごし方として人間ドッグに一年おきに入るようにしています。今年は8/13親知らずの抜歯を山口県立総合医療センターで行います。実は先週左上の親知らずをすでに抜歯していなすが、このときはあまり痛まずにすみましたが、今回は親知らずが真横に下顎骨の中に埋没しているので骨を削るのでかなり痛むでしょう、とのことでした。15日まで休みですが休み明けにまだ腫れて痛い可能性もありますが、何とか頑張ります!
それでは皆さん、よいお盆をおすごしください。
午後から原田先生の認知症の治療とケア編の講義でした。四大認知症としてアルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型認知症があり、アルツハイマー型認知症はアミロイド沈着の沈着が始まった時点からになりますがどの時期で発症するかはわからないとのことです。MCI(mild cognitive impairment)という認知機能の低下に関する訴えが本人家族から認められている状態でそこから10パーセントが認知症に進展します。MBI(mild behavioral impairment)はMCIの前段階で情緒面を測る項目が網羅されており、喜びを表し難くなった、理不尽に論争的になりがち、性的な制御が効きづらくなるなどの項目があります。MMSEやHDSRで何点というより生活に支障が出ている、どのくらい機能が低下してきたか?が重要とのことでした。中核症状に対する治療薬にはコリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、ガランタミン、リバスグチミン)、NMDA(メマンチン)があり、その使い分けについて教えて頂きました。ただしこれらの薬剤は対症療法であり、根本治療薬はまだ発売のメドが立っていないとはのことです。効果判定は症状が改善がなければ進行が抑制されていると考えて継続すべきとのことでした。投薬中止の適応は中止しても症状増悪がない場合、ADLが低下した場合などです。BPSDの問題行動および精神症状では、認知機能障害によって生じる思考や行動の混乱であり、本人なりの理由があります。非薬物療法も効果がありますが抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、抗てんかん薬などがあります。BPSDの対応では、無視する、なだめすかす、部屋に閉じこめる、力で制御するなどはNGでその場しのぎの対応をしない、根気よく、自尊心を傷つけないような対応が必要です。薬物療法で幻覚、妄想、昼夜逆転、暴力や興奮、不安や抑うつは改善が期待できますが、介護への抵抗、徘徊、火の不始末、不潔行為、性的問題行動は改善が難しいそうです。最後に認知症治療は介護者・医療者を中心とした医療から本人の意見が尊重され満足が得られる医療を双方のバランスを取りながら進めることをお話しされました。最後に前川先生が認知症の多職種連携と制度編の講義があり、動画を交えて講義されました。医師、ケアマネジャー、社会福祉士、介護福祉士などが連携して患者に適切な介護を提供することをお話しされました。山口県では8つの認知症疾患医療センターがありそれぞれの地域で医療連携を提供しているそうです
8/5 平成30年度かかりつけ医認知症対応力向上研修に参加しました。かかりつけ医の役割編として清水先生の講義でしたが認知症の人や家族を支えるためにかかりつけ医ができることを理解することがねらいです。かかりつけ医とはなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師であります。認知症の早期発見、早期治療が重要であり、かかりつけ医に求められる認知症の診療は認知症の人に気づく、受け入れる、家族を気遣い支える、地域でみることを意識することが求められます。政府の認知症施作推進総合戦略、早期からの認知症高齢者支援対策、地域包括ケアシステムを介した介護サービス、主治医意見書の役割、認知症の意見書の書き方(認知機能、ADL,BPSD,処方内容とその影響、現在受けている支援、今後必要な支援、生活環境、家族の状況と介護負担、経過、徘徊の頻度、現在ある困難や危険性、身体合併症、評価に際しての留意事項)など勉強しました。長谷川式スケールの記載(HDS-R15/30)、ADL×BPSDによる認知症日常生活自立度についても教えて頂きました。BPSDは家族や周囲の人たちが対応に苦慮する精神症状や異常な言動のことで異常行動(徘徊、迷子、叫声、昼夜逆転、火の不始末、摂食行動)と精神症状(幻覚・せん妄、抑うつ、不眠、不安、焦燥、意欲・発動性の低下)であります。
次いで認知症の診断と治療編として兼行先生が講義されました。DMS-5に基づく新しい認知症の診断基準では1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)が以前の機能レベルから低下している、認知機能の低下が日常生活に支障を与える、認知機能の低下はせん妄のときのみに現れるものではない、他の精神疾患(うつ病や統合失調症)が否定できるとなります。認知症には中核症状とBPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia:行動・心理症状)があります。
アルツハイマー型認知症が7割で健忘症状に失語、失空間障害が主体とのことでした。
レビー小態体型認知症は注意や覚醒レベルの明らかな変動を伴う認知機能の動揺、現実的で詳細な内容の幻覚が繰り返し現れる、パーキンソニズムがあります。前頭葉側頭葉変性症により生じる認知症は、行動障害型と言語障害型があり、運動ニューロン疾患型認知症や嗜銀顆粒性認知症なども紹介されました。血管性認知症は脳血管障害に伴う認知症でCT,MRIやSPECTなどで脳腫瘍、脳出血、慢性硬膜下血腫など除外診断をします。認知症の原因で治療できるもので高カルシウム血症なども注意すべきとのことでした。
アルツハイマー型認知症ではβアミロイドの脳内異常沈着が進行して発症するのでPETによる早期診断もできるようになってきているそうです。MRIでは側脳室下角の拡大と海馬の萎縮の左右差が特徴的です。
向精神薬には抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、気分安定化薬があり、特に抗不安薬は日中の投与を極力避けること、睡眠薬は夜間の転倒リスク、健忘リスクに注意が必要とのことでした。高齢者認知症の薬物治療は成人投与量の1/2の少量から開始し、なるべく薬剤をシンプル、一包化すること、介護者にも服薬を確認することも必要とのことです。睡眠薬には入眠困難、中途覚醒、早期覚醒にあった処方が必要で、睡眠段階に与える影響として徐波睡眠が減少すること、睡眠補助薬としてクエチアピンがありせん妄治療に有用であることなども教えて頂きました。不安に対して抗不安薬より社会性不安、全般の不安、パニック障害にはSSRIという抗うつ薬が使用されるそうです。
7/14-16で鹿児島に行っている間にリハビリ室の受付と受付のバックヤードの改修工事をやってもらいました。木目調に統一され収納スペースを確保してバックヤードで動き回るスタッフが効率よく仕事ができるように工事してもらいました。

 
7/15-16と鹿児島市で日本臨床整形外科学会があり、骨粗鬆症性脊椎骨折の治療と病診連携というシンポジウムで発表しました。クリニックとして早期診断、早期治療するための当院での取り組みや工夫、山口済生会総合病院との画像ネットワークを介した病診連携、テリパラチドでの治療などを報告しました。座長が三愛病院整形外科の林恭二先生で山口大学医学部の同級生でしたので心強かったです。桜島は残念ながら噴火して綺麗に見えなかったのですが火山灰がやはり多かったです。又観光としては、念願のせごどんのオープニングの映像に出てくる雄川(おがわ)の滝を観に行き虹も出ていて感動しました。


7/21 山口保険医会館で高尿酸血症と臓器障害の考え方の進歩というテーマの講演を拝聴しました。最初は東京女子医大の山中教授の高尿酸血症・痛風の病態と治療の講演でした。日本人は痛風や高尿酸血症の病識が高いそうです。プリン体が尿酸になり高尿酸血症の結果として痛風が生じる流れを理解することが重要です。又高尿酸血症や痛風のリスクを知ることが重要です。痛風は尿酸塩沈着症による急性関節炎です。第一足趾の付け根の関節が多く、足関節、膝関節が続きます。高尿酸血症として関節液の中に溜まっており何らかのきっかけで尿酸結晶が蓄積すると痛風発作を起こします。最近はエコーでダブルコントールサインが有用です。dual energy CTでアキレス腱付着部に沈着を確認できるそうです。発作時に尿酸値は必ずしも高くないことがあるので注意が必要です。過去尿酸値が高い人が急性関節炎を生じた場合に痛風を疑うことが肝要です。高尿酸血症は生活習慣病の側面と遺伝的側面があります。尿酸は腎臓の糸球体で排泄され近位尿細管で吸収排泄されます。ABCG2遺伝子の機能低下があると尿酸値が高いとのことです。プリン体の過剰摂取、ATP大量消費なども危険因子です。痛風発作の前兆期にはコルヒチンを1T飲む、極期にはNSAIDS のみ使用します。痛風発作時には尿酸値を下げる治療をしないこと(治療している場合はやめない)が重要です。痛風の治療薬は尿酸合成阻害薬と尿酸排泄促進剤がありますが最近新しい薬も紹介されました。フェブキソスタットは合成阻害型でも排泄阻害型でも治療効果が期待できるそうです。尿酸値を6以下に下げると発作の頻度が低いのでtreat to targetとなるそうです。

次いで高尿酸血症と心血管障害の研究では第一人者である鳥取大学の久留教授の高尿酸血症と心疾患の講演でした。高尿酸血症の診断は尿酸値が7mg/dl以上ですが放置すると痛風発作を生じます。尿酸値と高血圧発症リスクについて検診の方の前向き研究で5年後に高血圧、動脈硬化、肥満が優位に発症したそうです。キサンチンオキシダーゼが産生した一酸化窒素が血管内皮細胞が増殖して動脈硬化が生じるメカニズムが考えられています。高尿酸血症が尿酸トランスポーターを介して血管を障害するそうです。又高尿酸血症は血管内皮の一酸化窒素の合成を抑制して高血圧を発症するメカニズムが言われています。高尿酸血症の治療で血圧の上昇を抑制するという論文もあります。一方降圧薬のカルシウム拮抗薬やロサルタンは尿酸値を下げる効果もあるそうです。高尿酸血症合併高血圧患者の尿酸コントロールを行うか?という臨床質問に対してシステマティックレビューの結果ではケースコントロール研究ですがメタ解析をすると尿酸治療薬が心血管イベントを抑制することはエビデンスは低いとのことでした。患者の価値感や希望を加味してガイドラインでは推奨度を決めるそうです。最近の論文で高尿酸血症は心房細動の危険因子になる報告を紹介されました。iPS細胞による研究で心房筋に尿酸トランスポーターが存在する、尿酸がキサンチンオキシダーゼにより心房筋細胞の活性酸素を増加することも紹介されました。尿酸生成阻害薬でアロプリノールが最も古いのですが、フェブキソスタット、トピロキソスタットは新薬として使用されています。

最後に帝京大学の内田教授の高尿酸血症とCKD~最新知見から~の講演です。日本の透析患者は32万人で医療費が1.6兆円で原因は糖尿病、慢性腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎の順で、透析導入が高齢化しているそうです。腎機能が低下すると心血管イベント発症リスクが増加します。初期侵襲でネフロンが減少すると糸球体高血圧が生じ尿蛋白が増加して腎障害をきたしますが高尿酸血症との関係は近年注目されてきました。2001年に尿酸値の増加とクリアチニンの上昇が関与することを報告されました。透析の危険因子で尿酸値7以上がオッズ比2.5と高いそうです。又出生時の体重が小さいと腎障害を生じやすいそうです。又ABCG2の遺伝子異常があると75パーセントの腎機能低下が生じるそうです。高尿酸血症と腎イベントの介入試験はエビデンスが高いものはまだないそうです。傾向スコア解析を用いた尿酸のリスク解析を行うと尿酸値が高いと透析導入が早いという結果が出たり、高尿酸とインスリン抵抗が関連するという結果を紹介されました。尿酸値は霊長類になって上昇し、尿酸が高いほど長寿であるので必ずしも尿酸が高いことが悪とも言えないそうです。

7/6から山口市内も大雨でしたが、7/6-7にかけて新幹線が全面運休という前代未聞の事態となりました。高速道路も封鎖されており7/7に予定していた林部長と二人で熊本でマッケンジー法の高崎先生の講義を受ける予定が行けなくなりました。熊本市内も雨だったそうですが講師の高崎先生は埼玉から来られて無事に終了したそうですが、残念でしたが天候には勝てませんので、日曜は次の週に金曜、日曜に発表するスライド作りに追われていました。
7/5 ホテルニュータナカで旭化成のMRさん向けの講演を行いました。タイトルは骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の診断と治療という私の得意の分野でMRIでの早期診断の有用性、当院での治療方針、デイリーテリパラチドとウィークリーテリパラチドの当院での骨密度の変化や検査所見、DrsフィットネスKスタジオの紹介も交えて講演させていただきました。質問もさすがと思うものばかりでした。
6/24博多で先進運動器エコーフォーラム2018があり参加しました。鼠蹊部痛を攻める!ハイドロリリースの実際というテーマでした。宮武先生が鼠蹊部のエコー解剖、と今西先生の鼠蹊部の基礎解剖、股関節X線撮影の基礎で産業医大の内田宗志先生の講義、和歌山県立医大の岩崎先生が脊椎MRIの読影のポイントと落とし穴、川崎医大の畠教授の鼠径部痛へのアプローチ、慶應大学解剖学の今西教授の臨床解剖学から見た鼠径部痛の解釈、ぱくベインクリニックの朴先生の鼠径部痛へのアプローチと鼠径部痛についてエコーを使用した可能性について様々な先生方の講義を聴くことができて有意義でした。
6/23 第6回九州沖縄山口OLS研究会WEBセミナーがあり参加しました。岸川整形外科の藤井看護師の骨粗鬆症マネージャーの院内での活動という発表がありました。岸川整形では骨粗鬆症マネージャーが3名おられて約1500名の骨粗鬆症患者の治療に取り組んでいるそうです。アームスパン身長差を測定され5cmをカットオフ値とするそうです。25OH-VD3がビタミンDの欠乏を確認しておられるそうです。薬物療法の料金一覧表を患者さんに見せて納得してから治療されるそうです。又骨密度の検査ははがきでお知らせするそうです。医療連携として歯科への紹介状をYAM値や投薬の種類により三種類用意しておられるそうです。次いで臼杵市医師会コスモス病院重藤薬剤部長の寝たきりにならない〜骨粗鬆症リエゾンサービスの取り組み〜の発表がありました。骨粗鬆症リエゾンチームを立ち上げて話しあいを2週間おきにされ二次予防に取り組んでおられ、市内医院からDEXA検査を引き受けられたり、啓発セミナーなどを開催して脊椎骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折の4大骨折の二次予防を行い、将来的に臼杵市石仏ネットという医師会ネットでの運用を行う予定であるとお話されました。特別講演は川蔦整形外科病院永芳先生の豊前豊後地域連携パス研究会の10年間ー横竪を超えてーがあり拝聴しました。2007-2011年では医科歯科薬科連携、脳卒中連携パスなどしてこられ、2011-2014年からは治療と予防への実践として骨粗鬆症、口腔ケアへの取り組み、転倒予防教室などでの年間50回以上の講演などに取り組まれました。川蔦病院でも年間200例以上の大腿骨近位部骨折の8割が80才以上、6割が市外からであり、再骨折が21パーセントあったそうで、介護施設などへの関わりは少なかったことが反省点でした。そこで2014-2018年では医療と介護の関わりとして急性期病院でも住まいや生活への復帰を念頭においた情報発信が必要であること、他施設、多職種間(特に介護施設)の話を聞くことで共鳴へと向かう取り組みをして、医療と介護の連携をめざした垣根を越えた集いの場というスローガンとする現在の取り組みをお話しされました。