院長ブログ – ページ 83

慢性疼痛を考える会があり参加しました。オープニングリマークで田口先生が鎮痛薬のミニレクチャーをされました。2000年までに消炎鎮痛剤が多数発売されましたが慢性疼痛での治療薬として発痛の場から機能の治療へとシフトしてきたとのことでした。最初に山口大学整形外科の神経障害性疼痛の診断と治療についての講演がありました。痛みについての基礎知識、神経障害性疼痛の機序と薬物治療、慢性疼痛患者に対する集学的アプローチのお話でした。痛みとは不快な感覚、情動体験であることであり、慢性痛の定義としては通常のケガの回復する期間を超えても続く痛みで、器質的要因に心理社会的要因が加わって発症します。ストレスなどの機能的原因で痛みは生じ、疼痛顕示行動により医学的評価が可能になります。慢性疼痛は約20パーセント存在し運動器の慢性痛は15パーセントを占め30-50代の働き盛りの世代に多いそうです。腰痛の原因として様々ですが侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛のオーバーラップする混合性疼痛が多いとのことでした。神経障害性疼痛は神経が異所性放電、下行性疼痛抑制系の低下、中枢神経が過敏になり、神経の異常放電により生じるとのことで、診断ツールとしてペインディテクトというツールも紹介されました。アロディニアのメカニズムとして神経損傷による異所性放電やエファプス伝達により生じるそうです。神経障害性疼痛の薬物として代表的なプルガバリンや新しく出たミノガバリンがあります。山口大学では慢性の痛みに関する教育プログラムを構築しており、ペインセンターとして慢性疼痛の講習会を行っていることも告知されました。次いで獨協医科大学麻酔科の山口教授のガバペンチノイドの可能性と課題についての講演を拝聴しました。帯状疱疹後神経痛では神経プロックと薬物療法を併用します。フランス外科医の言葉で時々治療する(プロック)、しばしば和らげる(薬物)、いつも元気づける、ということを紹介されました。先生は患者さんと会話しながら痛みを伝える経路と痛みを抑える経路のどちらを薬物治療するという痛みの病態に合わせた薬物治療を提供するというスタンスで接しておられるそうです。慢性疼痛、神経障害性疼痛に対するオピオイド治療は一定のエビデンスがありますが4-12週以上は好ましくなくアメリカではオピオイドクライシスとも言われているそうです。神経障害性疼痛のオピオイド治療は最近のガイドラインは限定的で短期間にすべきと言われているとのことでした。ガバペンチノイドは神経障害性疼痛における第1選択薬になっています。NNTは4で四人に一人が効くとされていますがNNH(副作用)は6人に一人ぐらいとされています。副作用は眠気、めまい、容量依存性などがあります。プレガバリン、ガバペンチンに加えて新しく出たミノガバリンは末梢性神経障害性疼痛に適応があり、容量調節ができる工夫がされていますが腎機能の低下している患者さんには容量を減らす必要があります。効果は同じですが副作用の頻度は少ない(プレガバリンの約半分)とのことで最大容量まで増加できたのが約8割であったので有効投与量まで増量しやすい可能性があるとのことでした。慢性疼痛治療薬の内服のポイントとして適応を広げていい薬物で効かなければ中止するということが必要とのことでした。慢性疼痛に慢性的に投薬していないかを自問することを提案されました。慢性疼痛患者に痛くても動きましょうという根性論ではなく、プロック、薬物、励ましなどにより良くなったら投薬を減量していき、理想的には中止することを考える、痛みが改善したら減量、中止する方向を考えること、薬が余ったら中止のタイミングである、投薬を中止する言葉がけも紹介され、投薬を中止してもずっと診ていきますというスタンスをお話しされました。内服開始三カ月後に効果判定、6カ月後に中止判定を行うことを提案され参考になりました。最後に投薬をやめられないという患者さんを診てこられて、慢性疼痛治療に対して過干渉にならない、多剤併用にならないことを踏まえる必要があるとのことでした。慢性疼痛におけるオピオイド治療と薬物依存症との関係を紹介され、病気を診るのではなく患者を診て、居心地のいい場所を提供するという先生の姿勢を垣間みました。

最後に済生会山口総合病院の岸本先生が10年前まで消炎鎮痛剤がほとんどであった疼痛治療が新しい薬物により選択肢が広がりましたが神経障害性疼痛の治療のミノガバリンについては適正に使用すして効果を見ていくこととして締めくくられました。


5/19温泉療法医教育研修会二日目です。温泉関連法について早坂先生から講義がありました。温泉関連法は環境省と厚労省が管轄しており、源泉から湯口までが環境省、浴槽の利用は厚労省の法律が関係しているそうです。鉱泉とは地中から湧出する温水及び鉱水で25度以上で二酸化炭素、リチウム・ストロンチウム・バリウム・マンガン・鉄・水素・ヨウ化物イオン・メタケイ酸・炭酸水素ナトリウムなどを含むもので、療養泉の定義は遊離二酸化炭素、総鉄イオン、水素イオン、ヨウ化物イオン、総硫黄、ラドンのいずれか一つを含むとのことです。浴場開設、飲泉するには県の許可が必要です。療養泉の適応症は筋肉・関節の痛み、こわばり、冷え症、末梢循環、胃腸障害、疲労回復など多数あり浴用と飲用で異なります。病気の急性期、感染症は禁忌です。次いで穂崎先生の代謝疾患についての講義がありました。肥満はBMI30以上が定義ですが体脂肪は1kgの脂肪の減量には7000kcalが必要ですが実際には800-950kcalの消費量を目標とします。10分の入浴で30-70cal程度です。飲泉療法は血糖の改善の報告があり、空腹時200mlを30分以上かけて一日500-1000ml飲用します。糖尿病では歩行運動で400-500kcal、水中運動で200-250kcal、温泉浴で100kcalを目標にしますが、血糖コントロール不良や重篤な合併症を有する場合は温泉療法の適応外となります。インスリン注射後1時間は入浴、運動を避けるべきとのことでした。高脂血症は食事と運動療法(水中運動週3回以上30分、1-3ヶ月)で効果が期待できるとのことでした。次いで福田先生の皮膚疾患と温泉入浴を拝聴しました。温泉の皮膚に対する作用として温熱作用、保湿作用、清浄作用、抗菌作用などがあり、皮脂欠乏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、疥癬、汗疹、東総、帯状疱疹後神経痛などが外用薬などの治療の併用しながらの適応となります。次いで温泉地衛生学の講義がありました。近年レジオネラ症の発生があり浴槽のブラッシング、気道からの吸入、飲泉に注意が必要とのことでした。又火山ガス中毒死は火口付近での硫化水素の吸入が原因だそうです。又ラドンを含む放射線泉は高濃度の場合は飲泉には注意する必要があるとのことでした。メタン、二酸化炭素、チッ素ガスの事故は酸欠による死亡事故に繋がるので注意が必要とのことでした。温浴の効果としては胃酸の分泌を抑制しますが連浴では正常化するそうです。物理療法は急性粘膜障害や急性炎症は禁忌とのことでした。次いで飯山先生の消化器・腎疾患への温泉入浴、飲泉の影響の講義がありました。慢性胃炎には効果があるそうです。心拍出量は50パーセント増加、腸管の血流は増加して小腸の吸収は亢進するとのことでした。飲泉については湧出し口から直後出ている湯を飲むことが条件だそうです。最後に小片先生の入浴事故と対策についての講義がありました。入浴関連死(入浴死)は年間14000-20000人で交通事故死の2倍と言われています。虚血性心疾患、溺死、脳血管障害が3大死因とされています。溺水は79パーセントで解剖しても死因が不明の場合もあるそうです。鹿児島県での調査では気温が低いほど入浴死の危険性が増加し、自宅での死亡が86パーセントで温泉での死亡が10パーセントで、温泉での死亡は高齢者男性に有意に多く、夕食前が多かったそうです。入浴事故防止するためには脱衣所や浴槽の暖房をすること、湯温を38-40度にする、高齢者は一番風呂を避ける、深夜、早朝の入浴を避ける、住まいの安全に配慮する、飲酒後は避け、長時間の入浴を避けるなどを述べられました。
写真は一日目の後に行ってきた岡山城天守閣です。特に石垣が見事でした。


5/18,19は岡山で第84会日本温泉気候物理医学会に参加して温泉療法医教育研修会を受講しました。温泉の定義は湧出し口で25度以上で19種類の物質を限界値以上含むものとされています。温泉療法医制度とは昭和51年に制定されました。山口には湯田温泉をはじめとして県内にも温泉が多く、安全な入浴法や温泉療養の指導・普及させることと加えて運動をすることで健康増進に寄与することができればと考えて参加しました。小笠原先生による温泉療法医制度についての概説をされ温泉療法医が997名、温泉療法専門医が203名おられるそうです。温泉の泉質、湯量、環境などから温泉施設が認定されますが、最近では環境省が新・湯治の推進推進プランとして楽しく元気になれるプログラムの提供などを推奨しています。温泉利用型健康増進施設、温泉利用プログラム型健康増進施設などがあることを教えて頂きました。次いで北条先生が運動器疾患と温泉療法について講義されました。運動器に関しては温泉の効果は主として温熱効果です。局所に対してはストレッチ効果、筋緊張低下、疼痛閾値の上昇、血管拡張効果などがあります。温熱はAγ繊維を介して伝わる非侵害受容刺激になります。変形性膝関節症に対して温熱療法は症状緩和には有用ですがエビデンスは低いとのことでした。先生の研究で関節軟骨は温熱で生物活性と基質代謝が亢進することを提示されました。関節リウマチに効く温泉、泉質は特にはないということでした。次いで宮下先生の気候療法の講義を拝聴しました。気温・気圧・湿度が穏やかで空気が清浄などの保護性気候が最も適しています。和歌山の白浜温泉、龍神温泉での気候療法、白浜素足ウォーキングによる効果を提示されました。次いで出口先生が神経疾患の講義をされました。脳血管障害はICD11で五つに分類されています。温泉の効果として血圧下降、脳血流改善、筋緊張亢進の軽減、脳波でのアルファ波増加などがあり、神経痛に対する温泉浴の効果は温熱作用、静水圧のよるマッサージ効果、浮力による負荷軽減、粘液作用、泉質による化学作用があるそうです。次いで宮田先生が循環器疾患と温泉入浴について講義されました。入浴の心臓への影響は温熱刺激による血管拡張作用、静水圧のよる心内圧の上昇があります。心臓血管系に負担のかからない入浴方法は40-41度10分までが理想的で42度以上や32度以下は心臓血管疾患のある方は禁忌です。深さは胸元までの方が心負荷が少なく、入浴後コップ1-2杯の飲水して水分補給をして出浴後の起立性低血圧に注意することが重要です。1989年に開発された和温療法について60度の温赤外線乾式サウナ内に15分入浴後30分毛布に包まれ30分終了後水分補給すると心不全に有効であったそうです。最後に加藤先生の呼吸器疾患の温泉療法の講義を拝聴しました。温泉の呼吸器系への効果は物理作用の温熱作用によるガス交換の改善、静水圧による換気率の改善、呼吸筋力強化、末梢気道内圧上昇や化学作用による湯気の気道への直接作用、マイナスイオンによる鎮静作用、生体調整作用があり、閉塞性肺疾患(COPD)には良い適応となりますが感染症には禁忌です。気管支喘息に三朝温泉病院の複合温泉療法(温泉プール、拘泥湿布療法、ヨードカリ溶解吸入療法)が有用とのことでした。

ランチョンセミナーでバスクリンの開発に携わった渡辺先生の入浴と健康という講演を拝聴しました。ヘルスツーリズムとは科学的根拠に基づく健康増進を理念に旅をきっかけに健康回復や健康増進を図ることだそうです。又新・湯治は温熱入浴に加えて周辺の自然、歴史、文化、食などを生かした取り組みだそうです。入浴の実態のアンケート調査では夏と冬では入浴頻度は差はなく、夏はシャワーの頻度が増加して冬は特に女性が入浴時間が長いとの結果でした。入浴の効果として温熱、浮力、静水圧があります。浮力は空気中の1/9となるそうです。静水圧は胴回りを3-6cm縮めてくれるそうです。入浴剤の起源は温泉の成分を乾燥、粉末化したもの、薬用植物(菖蒲、柚子)由良があるそうです。入浴剤の効果は温浴効果と清浄効果があり、保温、血行促進、疲労回復、リラクゼーション効果が期待できるそうです。入浴とロコモの関連研究でロコモ体操と炭酸浴入浴を組み合わせて効果があったことも報告されたのは興味深かったです。

午後から岡山大学総合研究科老年医学分野の光延教授の会長講演がありました。高齢者医療における温泉気候物理医学の役割という講演でした。

三朝温泉病院で取り組まれた温泉療法として温泉プール、拘泥湿布療法、ヨードカリの吸入療法、熱気浴(サウナ)などがあり、慢性閉塞性疾患に対する4週間の温泉療法でステロイドの減量、中止や肺機能の改善が得られたそうです。

温泉療法は温泉浴や飲泉などの温泉水そのものを利用する治療の他に運動療法や温熱療法などの理学療法、食事療法、温水プールでの水中運動を含めたもの、さらに気候や環境を利用した転地療養などを組み合わせた複合療法であるとのことです。

超高齢社会におけるヘルスツーリズムというシンポジウムがありました。ヘルスツーリズムとは科学的根拠に基づく健康増進(EBH)を理念に旅をきっかけに健康回復や健康増進を図ることです。最初に日本健康開発財団ヘルスツーリズム研究所の後藤先生がわが国のヘルスツーリズムにおける温泉利用の現状と課題の演題がありました。illnessをいかにwellnessに変えるか?欧州では温泉は医学として利用されていますが日本ではまだまだです。シャワー、サウナは医学効果はなく、温泉もエビデンスは不十分です。厚労省の温泉利用型健康増進施設、環境省の新・湯治プロジェクト、経済産業省のヘルスツーリズムがあります。ヘルスツーリズムプログラムは安心安全の配慮、温泉の関与、健康な食事の提供などに配慮してあることが条件となるそうです。綾部先生がヘルスツーリズムにおける安全かつ効果的な運動について発表されました。ヘルスツーリズムの中での運動のエビデンスは不足しているそうです。高齢者でも成人と変わらない週150-300分の中強度の身体活動を推奨されるようになりました。骨格筋筋量を高める有酸素能を高めることが注目されています。次いで地方行政が取り組みヘルスツーリズムの事例について玉野市の取り組みを報告されました。岡山県玉野市は人口も減少し検診率も低かったそうですのでヘルスツーリズムを利用してたまの湯温泉や地域資源を生かしたり、宿泊型新保健指導プログラムの開発も紹介されました。
 


恒例のワンコのトリミング後に写真撮影をしていただきました。今回は夏らしくサングラスをかけています。家に帰るといつも癒されています。

クリニックにリングカッターを導入しました。指輪がどうしても抜けない方に使用しますが滅多にありませんが備えあれば憂いなしです。

ゴールデンウィーク明けのクリニックは4/29と5/5の休日外科当番に来られた患者さんも来られて大忙しでした。スタッフも連休明けが火曜日だったので木曜午後が休みだったので何とか乗り切ってくれました。木曜の夜と土曜日の夜はK STUDIO でエクササイズを行い連休中増えた脂肪を燃焼しました。来週から通常通りの診療ですので気分も新たに頑張りたいと思います。
 
5/5はゴールデンウィーク二回目の山口市休日外科当番でした。朝から患者さんが待合室に多数待っておられて骨折、創の縫合、急性腰痛の患者さんなどがあり受付二人、看護師二人で頑張ってくれました。15時過ぎてようやく昼飯を食べらことができました。18:00までで何とか終わった後は山口市休日夜間診療所に移動して22時まで診療しました。こちらはそれほど多くはなかったので何よりでしたが内科の先生に聞いてもやはり多かったそうですのでゴールデンウィークが長いと医療の現場ではしわ寄せがくることは間違いないようです。とはいえ長期連休を楽しまれた方にとってはお疲れ様でした。
 

5/2は上高地をさらに奥まで歩きました。明神池からさらに奥は車が入れず携帯も電波が届かないですが徳沢ロッジ、新村橋まで行き引き返しましたが、その日は33000歩、約22km歩きました。流石に下肢がパンパンに張り、夕食後は早く休みました。翌朝もまだ行っていなかった大正池まで約一時間歩きましたが行く先々で違った景色を見せてくれる上高地の山々と自然の偉大さを感じ山口へと戻りました。機会があれば今度は夏に来たいです。

私の連休は5/1から始まりました。信州の上高地まで行きましたが新幹線で博多、地下鉄で福岡空港まで行き、そこから松本空港に到着して、松本駅までバスで移動して電車の上高地線で新島々まで行き、そこからまたバスで上高地まで行って約七時間かけて到着しました。ホテルに到着してから河童橋、明神橋を渡って明神池のある穂高神社まで行ってお参りして約二時間散策しました。1500mの高地で雨が止んだばかりで、寒かったですが、空気が澄んでいて来た甲斐がありました!翌日は上高地温泉ホテルで朝風呂に入りました。そこで写真と上高地の歴史が飾ってあり、勉強しましたが河童橋は芥川龍之介が明治39年に訪れて渡った吊り橋が題材になっており、それにちなんで明治43年に初代河童橋が作られたそうです。現在五代目だそうです。温泉も露天風呂があり高浜虚子、幸田露伴、若山牧水などが泊まったとのことでした。