運動器の健康を考える会イン広島

10/5 運動器の健康を考える会イン広島に参加しました。慶應大学整形外科の二木先生の「変形性関節症の中枢感作〜なぜ今SNRIが注目されているか?〜を拝聴しました。

痛みは不快な情動体験です。侵害受容性疼痛は痛みは細胞膜の脱分極が生じて発生します。末梢の痛みがAδ,C繊維を伝わり脊髄後角を介して脳に伝わりますが,痛みの下行性疼痛抑制系を介して痛みの抑制が生じますが痛みが慢性的に生じると脳のペインマトリックスの部位で痛みを感じますが変形性膝関節症の方は痛みを感じる部位が難治性疼痛の方が痛みを感じる部位と似ているとのことでした。変形性膝関節症では疼痛閾値の低下が生じており,神経シナプス部の細胞膜のリン酸化で末梢感作が生じ,侵害刺激が繰り返されるとワインドアップ現象が生じて中枢感作が生じるそうです。人工膝関節術後の成績不良の方は手術前から中枢感作が生じていると満足度が低く、術前の疼痛破局化思考スコアが高いと満足度が低い傾向があったそうです。デュロキセチンは人工膝関節術後疼痛の半数に効果があったそうです。

次いで上石せぼね・骨粗鬆症クリニックの上石先生の骨粗鬆症治療戦略〜いつのまにか骨折の予防と対処〜を拝聴しました。骨粗鬆症治療は骨折予防のためですがいかにドロップアウトを予防するかが大切です。骨形成促進剤であるデイリーテリパラチドは継続率39パーセント,ウィークリーテリパラチドは30パーセント以下とのことでこちらも継続率を上げる努力が必要です。ロモソズマブは骨形成促進剤と骨吸収抑制剤の両方の効果を持ち,作用機序としてはモデリングを促進するのでテリパラチドはリモデリングを促進する効果があります。又デノスマブは中止するとオーバーシュートを生じて多発骨折を生じやすいので継続することが必要とのことです。先生の施設ではデイリーテリパラチドは19パーセントでしたがウィークリーテリパラチドは50パーセント近かったそうです。

最後に自治医科大学整形外科の竹下教授の新しくなった腰痛診療ガイドラインを拝聴しました。最初にレッドフラッグについてお話されましたが特にガン,感染,骨折の鑑別が有用で,がんの既往を聞くことは必須とのことでした。骨折ではびまん性特発性骨増殖症の骨折は不安定性が高いので治療の基本は手術であるとのことでした。今回の腰痛ガイドライン作成ではMinds診療ガイドラインに準拠したので時間がかかったそうです。推奨度の決定に委員の7割が賛同しないと採用されないそうです。今回急性腰痛,慢性腰痛に加えて坐骨神経痛が入ったことが特徴です。急性腰痛には以前から消炎鎮痛剤が有用ですが慢性腰痛にはセロトニンノルアドレナリン再取り込み抑制剤と弱オピオイドが推奨度が比較的高かったそうです。又坐骨神経痛には非ステロイド性抗炎症剤が推奨度が高く,次いでセロトニンノルアドレナリン再取り込み抑制剤とプレガバリンが推奨度が高かったとのことです。薬物以外の治療は急性腰痛は積極的安静治療は勧めないとのことでした。運動療法は運動後に骨格筋からマイオカインが産生されると脂肪分解,糖取り込み,炎症抑制が促進されるので強く推奨されています。又慢性腰痛にマインドフルネスストレス低減法が推奨されていますが,太極拳,ヨガ,気功なども近年注目されているとのことでした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。