6/23 第6回九州沖縄山口OLS研究会WEBセミナーがあり参加しました。岸川整形外科の藤井看護師の骨粗鬆症マネージャーの院内での活動という発表がありました。岸川整形では骨粗鬆症マネージャーが3名おられて約1500名の骨粗鬆症患者の治療に取り組んでいるそうです。アームスパン身長差を測定され5cmをカットオフ値とするそうです。25OH-VD3がビタミンDの欠乏を確認しておられるそうです。薬物療法の料金一覧表を患者さんに見せて納得してから治療されるそうです。又骨密度の検査ははがきでお知らせするそうです。医療連携として歯科への紹介状をYAM値や投薬の種類により三種類用意しておられるそうです。次いで臼杵市医師会コスモス病院重藤薬剤部長の寝たきりにならない〜骨粗鬆症リエゾンサービスの取り組み〜の発表がありました。骨粗鬆症リエゾンチームを立ち上げて話しあいを2週間おきにされ二次予防に取り組んでおられ、市内医院からDEXA検査を引き受けられたり、啓発セミナーなどを開催して脊椎骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折の4大骨折の二次予防を行い、将来的に臼杵市石仏ネットという医師会ネットでの運用を行う予定であるとお話されました。特別講演は川蔦整形外科病院永芳先生の豊前豊後地域連携パス研究会の10年間ー横竪を超えてーがあり拝聴しました。2007-2011年では医科歯科薬科連携、脳卒中連携パスなどしてこられ、2011-2014年からは治療と予防への実践として骨粗鬆症、口腔ケアへの取り組み、転倒予防教室などでの年間50回以上の講演などに取り組まれました。川蔦病院でも年間200例以上の大腿骨近位部骨折の8割が80才以上、6割が市外からであり、再骨折が21パーセントあったそうで、介護施設などへの関わりは少なかったことが反省点でした。そこで2014-2018年では医療と介護の関わりとして急性期病院でも住まいや生活への復帰を念頭においた情報発信が必要であること、他施設、多職種間(特に介護施設)の話を聞くことで共鳴へと向かう取り組みをして、医療と介護の連携をめざした垣根を越えた集いの場というスローガンとする現在の取り組みをお話しされました。
北九州市立男女共同参画センター ムーブで第10回多職種フットケア研究会に参加しました。テーマは「元気な足元はからだ作りから」〜ジャージ祭り〜というユニークな題です。最初に東京富士大学の岡田慎一郎先生の「あらゆる状況に対応するシンプル身体介助術〜フットケア施術者への応用〜を拝聴しました。理学療法士と介護福祉士の資格をお持ちの先生です。身体介助術 、体づくり は下半身が土台で股関節を使用すること、技術3原則として抱え方、骨盤位置、一体化(重度)について実践を交えてお話されました。しゃがんで股関節で移動する動作(草取り動作)を皆でやりましたがなかなか難しかったです。和式トイレにしゃがむのに股関節が120度は必要ですが椅子での生活は股関節可動域が90度あれば足りてしまうので不利で、草取り動作で膝中心に動いてしまいます。股関節を中心に動くようにするコツを教えて頂きました。抱え方で体に手が回せて手の甲を体に密着させると力を使わずに抱えられるそうです。肩甲骨をしっかり動かすと可動域が上がることも教えていただきました。次いで神戸親和女子大学ジュニアスポーツ教育学科の平尾先生の筋トレの是非について〜効果的な体・足のパフォーマンスとその応用〜元ラグビー日本代表選手だったそうですが脱筋トレ宣言というコラムを書かれています。筋トレ全盛の時代だが、スムースな身体運用には目的とする動きを目指して実際に体を動かす中で向上するのが本質であり、目的となる動きに必要な筋力はその動きを通じることでしか培われないとのことです。身体運用について考えるときのキーワードは全身協調性であるとのことでした。高齢者の転倒防止の為に下肢の筋トレをするだけよりバランスボートでトレーニングした方が転倒防止に必要な筋力がつくそうです。発生論的運動学では動きを覚える動感促発身体知があり、今ここを感じる身体知である始原身体知(ここを感じる体感身体知と今を感じる時期化身体知)、コツとカンなど形づくりの形態化身体知、仕上げの身体知などのからだに潜む様々な能力を駆使していくことが重要であるとのことでした。
最後にびわこ成蹊スポーツ大学スポーツ戦略コースの高橋先生の古武術をスポーツに活かす〜体の動き、足の動きを拝聴しました。野球部出身でスポーツバイオメカニクスを専門とされ、古武術と出会われて体の使い方がよく理解できたそうです。小平奈緒選手の一本歯下駄の指導にも関わったそうです。古武術的な体の使い方は筋力に頼らない、捻らない、ひねらないそうです。生活に根ざした体の使い方をするのが古武術だそうです。肘を意識せずに曲げると上腕二頭筋だけでなく三頭筋も使うのでより重いものが苦痛でなくなるそうです。足趾をしっかり地面に効かすにはタオルギャザーは下腿がつるぐらいでないときたえられないそうです。映像で分析して動きにとらわれることは逆効果だそうです。岡田先生と高橋先生の講義はほとんど実技でしたので非常に貴重な経験でした。
6/1クリニック終了後にホテルニュータナカで運動器慢性疼痛マネジメントセミナーで実践、膝と腰の痛み治療 周術期の疼痛から慢性疼痛まで、を拝聴しました。講師はJCHO埼玉メディカルセンター副院長の児玉隆夫先生でした。人工関節が御専門で年間250例手術されています。術後の疼痛管理と嘔気対策が重要だそうです。痛みのマネジメントとしてmultimodal pain managementであり特に持続硬膜外注射が有用で関節包周囲ににアナペイン+ケナコルトを注射、アイシングなどを併用されて術後の疼痛管理をして早期リハビリを行うそうです。消炎鎮痛剤ではセレコキシブを術後当日から使用することも有用であったそうです。出血対策としてトラネキサム酸1000mg二回静注、短めの弾性包帯固定、CPMを術後3日後から開始するそうです。又手術当日朝からセレコキシブを投与することで術後の疼痛が軽減したそうです。又術後トラマドールも併用することで術後のリハビリ時の疼痛が軽減したそうで、様々な工夫をされていました。又術後の慢性疼痛対策は10パーセントに存在しますが、プレガバリン25mg二回投与することでは予防作用はなかったそうです。中枢感作のある患者さんにはサインバルタを使用されているそうです。521例の患者さんにサインバルタを投与した結果、19パーセントは副作用で中止されましたが41パーセントは軽快、3カ月投与後90パーセントは軽快したそうです。投与のコツは開始当初は毎週来院して副作用を確認して患者さんを不安にさせないことだそうです。
投与中止は6カ月を目安に斬減していくそうです。変形性膝関節症単独でもサインバルタの働きは著効が3割であったそうです。人工膝関節術後の疼痛増強にも慌てて再手術する前にサインバルタを投与することも推奨されました。慢性腰痛や臀部下肢痛にサインバルタが有用な症例を紹介されました。
午後から飯島先生のフレイル予防・高齢者総合的機能評価(CGA)がありました。フレイルとは心身機能の顕著な低下を虚弱と呼ばれ要介護状態への最たる要因です。健康な状態と要介護状態の中間地点で、しかるべき適切な介入により機能を戻すことができる(可逆性)、身体の虚弱だけでなく認知の虚弱、社会性の虚弱が存在することから多面的であります。フレイルの評価方法としてJ-CHS基準があり、半年で2-3kgの体重減少、握力の低下(男性26kg未満、女性18kg未満)、二週間でわけもなく疲れる疲労感、1m/s未満の歩行速度、身体活動していないのうち3項目を満たすという方法があります。BMIパラドックスという言葉がありやせの方が総死亡率が高い、糖尿病患者で厳格な管理を行ってもフレイルのリスクが高くなることなどが挙げられますので、年齢別にカロリー摂取に関する考え方のギアチェンジを行う必要があるとのことでした。一方サルコペニアは筋肉減少症で筋肉量の減少を必須として筋力低下又は身体能力低下のいずれかがあればサルコペニアと診断する報告もあります。サルコペニアの画像診断では全身のDEXA法、バイオインピーダンス法があります。高齢者の骨格筋には蛋白同化抵抗性という現象があり、より多くのアミノ酸摂取が必要になるそうです。ふくらはぎを親指人差し指で掴めるか否かの指輪っかテストは総死亡率が差があるそうです。又残歯が20本未満、噛む力が弱い、舌の力が弱い、滑舌が悪い、固い食品が食べにくい、むせが増えたのうち3項目以上をオーラルフレイルと診断され、口腔ケアの衰えがフレイルの原因になるので栄養、身体活動、社会参加は健康長寿及びフレイル予防を実現する柱になるそうです。サルコペニア対策としてのリハビリテーション栄養として筋肉のエネルギーであるBCAA:分岐アミノ酸が重要です。
高齢者総合的機能評価(CGA)とは疾患評価以外の生命予後と機能予後を改善する為の評価手技で、健康寿命の延伸を実現する為にはフレイル、オーラルフレイル対策が急務とのことです。
津田先生のかかりつけ医の栄養指導を拝聴しました。日本人の平均寿命と健康寿命は男性で9年、女性は12年の開きがあ、健康寿命の延伸が課題です。個人レベルのみでなく、社会レベルでの対策が必要でその中で栄養、食生活の目標設定、身体活動の目標設定、休養の目標設定をされています。食事バランスガイドがあり、主食、副菜、主菜の順に書いてあります。栄養療法には経口、経腸、経静脈栄養がありますが中心静脈栄養は減少傾向にあります。医療機関では多職種で栄養サポートチームの介入を行うことが望ましいです。栄養治療はアセスメントとして主観的評価のSGA、簡易栄養状態評価法としてのMNA-SFなどがあり、客観的評価と合わせて治療計画、実施、再評価を行います。過栄養になると生活習慣病、低栄養になると老年症候群になりやすいので栄養介入を行います。食事指導のポイントは腹八分目、種類は多く、脂肪控えめ、食物繊維を多く含む野菜、海藻、きのこなどをとり、三食規則正しく、ゆっくり噛んで食べることです。栄養素の特性からみた優先順位としてエネルギー、栄養素では蛋白質、脂質、ビタミンA,B,C,Ca,Feの順に食べます。エネルギー管理の基本は毎日体重を計ることが重要です。推定エネルギー必要量は基礎代謝量×身体活動量で基礎代謝量は推定式を使用します。筋肉の役割として運動器の機能に加えて、熱源(基礎代謝)、循環の補助、骨体の保護、マイオカイン分泌(情報伝達物質)があり、運動と栄養の併用が重要であるとのことでした。
最後に和田先生と木村先生のかかりつけ医の在宅医療、緩和医療を拝聴しました。地域包括ケアシステムは2012から導入されました。医療、介護、住まい、予防、生活支援を日常生活圏で提供し、住みなれた地域で最期まで暮らせるシステムを治療にあった形で構築するシステムです。在宅医療・介護連携推進事業は2018年から市町村レベルでの地域包括ケア具現化の為の政策の一つです。又介護予防・日常生活支援総合事業とは2017年度から全ての市町村で行われている要支援、要支援になる可能性のある65才以上の人を対象に介護予防訪問看護と介護予防通所介護を総合事業に移行させるものです。多職種連携によるケアマネジャーとの連携、サービス担当者会議、地域ケア会議、病診連携による退院前カンファレンス、在宅診療、訪問診療、居住系施設での在宅医療などを解説して頂きました。急性期ケアとして在宅医療での身体診察と検査、褥瘡のチェック、大腿骨近位部骨折の診断、在宅医療での治療としての気管切開の管理、中心静脈栄養の管理、膀胱カテーテル管理、入院の判断のチェックなども教えて頂きました。慢性期ケアとして身体診察、栄養アセスメント、総合的機能評価、摂食嚥下障害、認知症、排便排尿障害、慢性呼吸不全、慢性心不全などについてベースラインの身体情報を把握することの重要性などを教えて頂きました。在宅緩和ケアは悪性腫瘍だけでなく、疼痛はtotal painとして考え、本人や家族への意思決定を尊重し、多職種で看取りを念頭においたケアを提供することが肝要です。家族に対するケアも必要でありうつの診断も必要とされます。ガン患者への緩和ケアはガン疼痛の評価、オピオイドの適切な治療、悪心嘔吐対策、せん妄、抑うつ、不眠に対するケアも必要となります。非ガン患者への緩和ケアでは脳血管障害、肝不全、腎不全、呼吸不全、心不全、認知症の終末期医療も対象になります。最近ではアドバンス・ケア・プランニングという患者の意思決定を支援する活動が注目されていることも教えて頂きました。
最後に症例検討があり終了しました。