9/27ホテルニュータナカで山口中央骨粗鬆症学術講演会があり、歯科と医科を代表して二人の先生が講演されました。徳山中央病院歯科口腔外科の村木先生が骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の現状と予防に関する山口県内での新たな取り組みという講演があり拝聴しました。BRONJを報告されてから額骨壊死という言葉が有名になりました。全国的には約40000例あるそうで、最近は増加しているそうで、抜歯後に治癒しないことで発見されることが半数でした。実際には癌の骨転移の治療としてのゾレドロン酸の注射薬発生例で重篤例が多いのが事実ですが骨粗鬆症治療薬のビスフォスフォネート製剤でも抜歯後に中々治らない例があり、骨の破壊を伴っていると治療に時間がかかるそうです。CTでは腐骨があり慢性骨髄炎の所見を呈しており、抜歯後は創を開放して約1-2ヶ月で上皮化してくるそうです。難治性の場合は高圧酸素治療も併用されるそうです。学会でも新しいポジションペーパーが出てから医科歯科の間で認識が広まって来ました。基本的にはビスフォスフォネート製剤は休薬しないそうですが、医科の先生も口内の衛生面に注意してほしいこともお願いとして述べられました。山口県での歯科医へのアンケートではビスフォスフォネート製剤投与で創の治りにくい例の経験が半数あったそうです。ビスフォスフォネート製剤が長期化する場合には額骨のレントゲン撮影で骨硬化像には注意が必要とのことでした。又ハイリスクの症例に限って歯科医が医師に休薬の申し出をすることも必要であることもお話しされて納得できました。又骨吸収抑制剤使用シールを薬手帳に貼るような徳山中央病院での取り組みも紹介されました。
次いで健愛記念病院整形外科の池田聡先生の骨折連鎖を断つためには地域医療連携の構築が鍵〜医科歯科連携を含めて〜の講演を拝聴しました。先生は日本骨粗鬆症学会でもご活躍で福岡県那珂郡の医科歯科連携を実践されたパイオニアです。高齢社会において要介護の原因で認知症と骨折・転倒が多いのですが骨折・転倒の予防できる手段として骨粗鬆症治療が重要になります。骨強度は骨密度7割、骨質3割からなり、50代の時期の手首の骨折を初発として骨粗鬆症性骨折が連鎖して脊椎骨折、大腿骨近位部骨折が生じるので初発の骨折から骨密度を検査して骨粗鬆症治療が重要と言われます。最近では大腿骨近位部骨折をhip attackと言われています。骨折した患者さんが骨粗鬆症治療していても途中で中断されることをcare gapというそうで、治療を中断しないためには骨粗鬆症治療を医師のみではなく看護師、理学療法士、薬剤師などがチームで治療することが重要でこれを骨粗鬆症リエゾンサービスといいます。骨密度は部位で異なることがあるので最も正確な検査はDEXAによる骨密度です。健愛記念病院では病診連携でDEXA を検査され必ず次の予約も取る工夫をされているそうです。骨粗鬆症治療における薬剤の種類と使い分けも説明して頂き、治療のモニターとしての検査の意義を教えて頂きました。骨親和性が高いビスフォスフォネート製剤の方が顎骨壊死のリスクをより軽減する可能性をお話しされました。顎骨壊死については歯科で抜いてもらえないと言われる顎骨壊死難民と言われるそうです。最近高齢者で歯が残っている方が多くなる一方で歯周病を有する方も増加しているそうです。ビスフォスフォネート製剤投与4年以上で顎骨壊死発生率が0.05から0.2パーセントに増加するそうです。新しいポジションペーパーのお話しもあり、歯科から休薬依頼のあった薬剤がビスフォスフォネート製剤以外であったのが30パーセントだそうです。先生が取られたアンケートで歯科で顎骨壊死が25パーセント経験されたそうです。又ビスフォスフォネート製剤の休薬した後に骨密度が下がった症例も提示され、歯科との連携が重要であることを強調され、骨粗鬆症連携手帳の紹介をされました。私も質問しましたが総入れ歯の方の顎骨壊死のリスクを聞きましたが、村木先生からの回答は総入れ歯でもがたつきや合わない場合はリスクは同じとのことですので総入れ歯の方にも自信を持って歯科に行くようお勧めしたいと思います。他にも活発な意見交換があり大変勉強になりました。
9/6小郡グランドホテルでBone and Tooth seminar 顎骨壊死について再考するがあり、参加しました。最初に整形外科の立場から呉市の沖本クリニックの沖本先生の医療安全から考える骨粗鬆症薬の使い方と注意点についての講演がありました。骨粗鬆症になぜ医者は骨吸収抑制剤を使うか?ONJ対策に必要な医科歯科連携をどうするのか?について話されました。高齢者は腎機能障害に気をつける必要があり、ビスフォスフォネート製剤やデノスマブの使い方を教えていただきました。骨粗鬆症性骨折は椎体骨折、大腿骨近位部骨折は次の骨折が生じるのが9倍、18倍になります。北欧では大腿骨近位部骨折はhip attackと言いQOLを障害する疾患の上位に位置します。骨粗鬆症治療薬は骨吸収抑制剤と骨形成促進剤があります。顎骨壊死の原因になるのはビスフォスフォネート製剤と抗ランクル抗体のみです。椎体骨折の防止効果はビスフォスフォネート製剤は60パーセント、テリパラチドは80パーセントであり、ゾレドロネートは骨折抑制のみでなく、死亡率も抑制するそうです。加齢とともに骨皮質は多孔化するのでビスフォスフォネート製剤、デノスマブは皮質骨に作用します。20-30代の等代謝回転型の時期が最も骨ができにくいので疲労骨折が難事化しやすいことは勉強になりました。又先生のスタディで骨代謝回転は70パーセントが骨吸収抑制が主体ですので骨吸収抑制剤が主体になります。呉地区では先生のご尽力で骨吸収抑制薬関連顎骨壊死予防ネットワークがうまくいっていることを紹介されました。最後に抗ランクル抗体は可逆性であり、やめるとオーバーシュートが生じるので多発性骨折が生じるのでやめてはいけない、やめるときは早めににビスフォスフォネート製剤に変更する方がいいことを強調されました。
次いで松本歯科大学の田口教授の骨粗鬆症の顎骨壊死を考えるーポジションペーパー2016の問題点と新規予防法の効果ーを拝聴しました。顎骨壊死・顎骨骨髄炎の原因としてステロイド、放射線治療、感染、悪性腫瘍に伴うもの以外でビスフォスフォネート製剤関連があります。2006-2008ではほとんどなかったのが、2011-2013では飛躍的に増加しました。日本の推定発生率は40パーセントでした。医科歯科連携を早くから始めたカナダやドイツではほぼ0に近いそうです。特に抗ランクル抗体は治りにくいそうです。一方でA-TOP研究会でのデータでは顎骨壊死発生は二年でなかったそうです。骨形成促進剤の抗スクレロチン抗体でも顎骨壊死の原因になるそうです。顎骨壊死と言われているものがMRIで骨髄炎であったそうです。次いでポジションペーパーでビスフォスフォネート製剤投与4年以上であれば休薬がのぞましいといわれましたが4年という根拠がなく、抜歯前二ヶ月の休薬が望ましいという根拠もないそうです。3ヶ月休薬してから抜歯した場合逆に難事化しやすいので抜歯前休薬は不要であるという論文も紹介されました。リスクがある歯は抜歯して3ヶ月おきにメンテナンスすれば顎骨壊死の予防効果が高いそうです。
最後に口腔ケアの有効性について話されました。口腔スクリーニングで対象になればもっとも安全に顎骨壊死を予防できるそうです。