院長ブログ – ページ 96

平成29年度公認スポーツドクター養成講習会応用科目2日目です。

筑波大学の渡部先生のドーピングコントロールの実際の講義が最初でした。レベル1として世界共通のアンチドーピング規定があり、レベル2として禁止表、治療使用特例、ドーピング検査及びドーピング捜査、プライバシー及び個人情報の保護、分析機関という5つの世界基準があり、レベル3のガイドライン・モデルルールという世界アンチドーピングプログラムが存在し、特に禁止表は毎年改訂されるので常に最新の情報を見ておく必要があります。ドーピングコントロールは世界ドーピング防止機構(WADA)に則って実施され、国内競技大会では日本ドーピング防止機関(JADA)が検査の実施(検体採取、分析)を行います。検体が陽性の際に治療使用特例(TUE:therapeutic use exemptions)の確認を行います。ドーピング検査の手順は定められた通りに行い、シャペロンとドーピングコントロールオフィサー(DCO)が必要で、DCOは同性で尿のすりかえなどの不正を防止する為に排尿状態を直後確認します。尿量は90ml以上、比重が1、005以上になるまで採取するそうです。(飲水によって尿が薄まることを防止する為)2014年のドーピング検査での陽性率は世界で1、11パーセント(3153例)で、日本では0、3パーセント(19例)でした。検査陽性で意図的でない場合は2年間の資格停止、意図的な場合4年間の資格停止になり、3回違反すると永久資格停止になるそうです。検者が居場所情報を提出しなかったり、スケジュールの中に60分の時間枠を設定せずに実施できない場合には居場所情報関連義務違反になるそうです。TUE申請にスポーツドクターが申請する際の注意点についても教えていただきました。ドーピング検査全般について詳しく勉強できました。

JADAのHPも教えていただきました。

http://www.playtruejapan.org/

9/2、3に代診を頼んで日本体育協会公認スポーツドクター養成講習会応用科目に参加しました。基礎科目は整形外科学会スポーツドクターと健康スポーツ医資格を持っているので免除になりました。川原貴先生がスポーツと環境について講義され、高圧環境における運動である潜水について、息止めの世界記録が11分35秒で優れたダイバーは全身の炭酸ガス貯蔵能が大きく、炭酸ガスに対する換気応答が鈍麻しているため長時間呼吸停止を可能としており、スクーバ潜水では肺、中耳腔、副鼻腔の圧挫傷、窒素酔い、減圧症などが生じる可能性があります。高所での低圧低酸素環境では高所馴化、低圧低酸素に関連したホメオスタシスの破綻による高山病などが生じることがあります。冬季スポーツや寒冷地などの低温環境において、寒冷馴化、寒冷障害(凍瘡:しもやけ、凍傷、浸水足、低体温症)があります。又一酸化炭素やオゾンによる大気汚染下では運動で短期間に大量の汚染物資を吸入する可能性があり、気管支喘息を持つアスリートにとって懸念事項です。

次いで丸紅健康開発センターの山澤先生のアスリートの健康管理の実際についての講義を受けました。スポーツドクターの役割として選手たちが最高のコンディションで練習や試合に臨むためのサポート、勝つための内科的コンディション、アンチドーピング教育、メディカルスタッフとの連携などがあり、アスリートの健康管理システムとして選手自身のセルフチェックとセルフケア、メディカルチェック、プライマリケア、2次ケアがあります。海外ではメディカルチェックでは通じず、PPME(pre-participation medical examination)、PHE(periodic health examination)というそうです。日本陸連での週間コンディションチェックを紹介され、グラフ化すると本人の体調からコンディションが予想でき、事前に対策がとられているそうです。トップアスリートに対するメディカルチェックの目的はスポーツ活動中の不慮の事故の防止、健康診断、選手教育などがあります。国立科学スポーツセンター(JISS)でのメディカルチェックとしての採血を紹介されました。女性アスリートに多い鉄欠乏性貧血における鉄剤投与は投薬が基本で静脈注射は原則しないとのことでした。アスリートの貧血対処7カ条として食事で適切に摂取すること、鉄分の摂りすぎに注意すること、定期的な血液検査すること、疲れやすい時は医師に相談すること、貧血の治療は医師とともにすること、原因を検索すること、安易な鉄剤注射は体調不良の元であることを提示されました。又アスリートにおける喘息有病率は12パーセントであるというJISSの結果を示されました。最後にスポーツ選手も一般人と同じでメンタルヘルスを生じるということも強調されました。次いでえだがわ眼科の枝川先生がスポーツと眼科について講義されました。スポーツに関する視力検査で動態視力があり、KVAとDVAという検査があり、視力は競技能力に影響を与え、競技によって影響が異なるそうです(野球が最も影響あり)。競技中に視力が良いのが球技系、悪いのは格闘技系だそうです。視力矯正では競技特性を考慮して選択し、最近ではオルソケラトロジーという特殊なコンタクトレンズを睡眠時装着する方法もありますが合併症もあり、気をつける必要があります。スポーツ眼外傷はスポーツ外傷の2パーセント以下ですが、中高生に多く、野球、サッカーなどの球技が8割で、ボールによる鈍的外傷によるものが8割、後遺症で問題になるのは視力低下であり、予防にアイプロテクターが有効です。眼外傷では眼が開けれない、開けて見えても視力低下、ものが二重に見える、視野欠損がある場合は眼科受診をすることを言われました。

最後にスポーツによる精神障害について講義がありました。アスリートの現場におけるストレス要因としてメランコリー親和型性格(几帳面、秩序を重んじる)、怪我がストレスとなり、うつ状態になること、競技内外の人間関係や家庭生活環境がストレスになること、うつ病と適応障害、オーバートレーニング症候群(高強度のトレーニング持続によって生じる長期のパフォーマンス低下)、睡眠障害、パニック障害、摂食障害、性同一性障害について教えていただきました。

8/26 周南市で周南市青年会議所の主催で橋下徹氏の講演があり拝聴しました。会場は超満員で、橋下さんの人気がよくわかりました。橋下さんのお母さんが山口県出身ということもお聞きしてびっくりしましたが、話は面白く、非常に素晴らしい講演でした。大阪府知事、大阪市長の職務に付き、借金を増やさず、コストカット、教育費などを捻出した手腕は非常に素晴らしく、また、人一倍努力されていることもよくわかりました。心に残ったのは与えられたチャンスをつかむこと、目標をたててやり通すという信念と折れない心をもつことなど非常に感銘をうけました。

8/25 第228回山口中央整形外科医会 整形外科診療セミナーがホテルニュータナカであり参加しました。講師は山口大学整形外科の鈴木秀典先生で非特異的腰痛の診断と治療〜山口県腰痛スタディ〜を拝聴しました。腰痛の原因と診断、非特異的腰痛、腰椎椎間関節症に対する電気焼灼術、問診と診察、プレガバリンの知見についてお話されました。慢性疼痛が22、5パーセントを占め、腰痛が半数になります。40才以上の腰痛患者さんは1600万人と言われています。腰痛の原因として侵害受容器を介した侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混合しており、心因性疼痛と合わせて診断を難しくしています。アライメント異常による腰痛もあり、次回の腰痛ガイドラインの中に山口県腰痛スタディが載る可能性を示唆されました。鈴木先生の英語論文内容ですが、山口県臨床整形外科医会との協力で調査した結果、320例のデータ解析の結果、従来の原因の明らかな特異的腰痛が68例21パーセントでしたが、それ以外の従来の非特異的腰痛の中で筋筋膜性、椎間関節性、椎間板性、仙腸関節性など診断可能な腰痛が182例あり、特異的腰痛と合わせて79パーセントが診断可能で、診断のつかない腰痛は20パーセントであったという結果を示されました。又山口大学整形外科オリジナルの腰椎椎間関節症の電気焼灼術の方法、治療成績も教えていただきました。治療成績は術直後は50-70パーセントであり、治療持続効果も平均12ヶ月と比較的長いという結果を示されました。慢性腰下肢痛に対してプレガバリンは有意に改善しており、睡眠が改善することで生活の質が改善することも示されました。副作用として傾眠とめまいに注意する必要があるとのことでした。

8/24 萩長門慢性疼痛セミナーが萩であり、参加しました。講師は山口済生会山口総合病院整形外科部長の岸本先生で運動器慢性疼痛におけるサインバルタの使用経験を拝聴しました。脊椎手術を年間200例以上こなされておられますが、外来も精力的にやられているのでサインバルタのご経験をお聴きしました。慢性疼痛の保有者は18パーセントを占め、女性が多く、腰痛、頸肩、膝痛が次に続きます。1ヶ月未満の急性疼痛が3-6ヶ月以上持続すると慢性疼痛と言われますが、これまでは疼痛治療のゴールドスタンダードは非ステロイド消炎鎮痛剤ですが、消化性潰瘍、腎障害の副作用が近年問題になっています。潰瘍発生は内服でも座薬でも差がなく、予防投与としてPPIが多く使用されています。腎障害はCOX2選択的阻害薬でも他の消炎鎮痛剤と同様のリスクがあり、時々血液検査によるチェックが必要とのことでした。アセトアミノフェンは副作用が少なく、近年注目されています1500mgを超えると腎障害のリスクはあるとのことで、アルコール性肝障害の患者さんには慎重投与になります。そのため鎮痛補助薬(抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、ノイロトロピン)の重要性が注目されています。鎮痛薬と併用すると鎮痛効果を高めますが、以前は適応が限られていましたが、2010年から新しい疼痛治療薬として、プレガバリン(リリカ)、デュロキセチチン(サインバルタ)、弱オピオイド薬があります。侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、両者の混合型疼痛に分類されます。下降性疼痛抑制系障害、中枢性感作、痛覚感作についてレクチャー頂き、痛覚過敏の治療として鎮痛補助薬が疼痛の閾値を下げて痛みを和らげてくれますが痛みをゼロにするわけではないことを念頭に置く必要があります。次いで慢性腰痛に関しては非特異的腰痛が多く、神経症状を有するものもあり、急性腰痛とは治療が異なってきます。慢性腰痛の67パーセントは神経障害性疼痛であるという報告があり、非ステロイド消炎鎮痛剤が効かない症例が多く、プレガバリン、デュロキセチチンを第一選択にあげられました。神経障害性疼痛の急性期にはプレガバリンを第一選択とすることを推奨されています。変形性膝関節症では侵害受容性疼痛のみでなく、繰り返し痛みが生じることで下降性疼痛抑制系の機能減弱されることで痛みの中枢感作がおこるので、非ステロイド性消炎鎮痛剤のみでなく、鎮痛補助薬を投与して運動療法を組み合わせることで治療効果をあげることをお話しされました。デュロキセチチン(サインバルタ)の先生の使用方法として20mgを夕食後か眠前に使用され、外来でも使用頻度が増加しているそうです。分割投与することもあり、効果が十分であれば維持量として20mgか40mgで継続することもあるそうです。60mg処方されて急に中止すると離脱症状が危惧されるので勝手に中止しないようにするためにも20、40mgで維持したいとのことでした。
終了後萩むらた病院の村田院長と写真を撮らせていただきました。

運動器エコー技塾サテライトが広島であり参加しました。non surgical orthopedicsという言葉を紹介されました。講師は高名な東あおば整形外科の高橋周先生でテーマは痛みの攻略塾という内容でエコーガイド下に疼痛治療を進めていくかを学びました。まずプローブの持ち方のコツとして被験者の体に検者の手指を密着させること、短軸と長軸を変えるために病変を中央に持っていくこと、目線が対象物と平行になることを教えていただきました。肋骨から肋軟骨の短軸を瞬間で切り替えて描出するコツ、短軸から長軸への描出する技術を実際に体験しました。肩のエコーのおさらいで棘下筋後方に石灰沈着があることに注意すること、柔らかい石灰はアコースティックシャドーを引かず吸引できること、肩甲上神経障害でガングリオンが原因の場合、肩甲上切痕より棘窩切痕を見ること、肩甲挙筋の筋筋膜リリースの部位や方法についても学びました。午後から踵の痛みについてのレクチャーがありました。アキレス腱と足底腱膜は踵に付着して連続しており、Heel cordと言われており、アキレス腱炎と足底腱膜炎が代表的でランニング障害では足底腱膜炎が15パーセント、アキレス腱炎が11パーセント占めること、足底腱膜炎では付着部、実質部の肥厚(4ミリ以上)があるそうです。Kagerの脂肪体の炎症、滑走不良など教えて頂きました。最後に究極のintervensionという講義でエコーガイド下の注射の講義でした。細い注射器を使うこと、穿刺、吸引薬液注入、神経ブロック、異物除去、腫瘍生検などに使用するとのことでした。半月板の痛みとして立位で膝を屈曲すると内側半月板の亜脱臼が強いと痛みが強い、大腿骨側の深層が腫れている時はそこに注射する方法も紹介されました。50肩をどう治療するか?について外旋→外転→内旋→挙上の順で拘縮が進むそうです。又C5、6神経ブロック後にサイレントマニュプレーション、hydrodissectionについて教えて頂きました。

今日から盆明けで予想通りの混雑でしたが無事終了しました。盆を利用して人間ドックに入り自分の健康に向き合う時間でした。それと全く別の話題ですがうちの愛犬のいい写真が撮れたのでアップします。いつもお願いするメジエールさんが4匹を上手に取ってくれました。
6/8クリニック終了後に下関で立川志の八さんの真打ち昇進の独演会がありました。残念ながら落語は聴けなかったのですが打ち上げには参加させてもらいました。そこにクッキングパパのうえやま とち先生がおられてご一緒させていただきました。志の八さんの後援会長だそうです。今度は是非落語を観てから参加します!
8/6大阪から帰る前に国立国際美術館で開催されているバベルの塔展を観に行きました。10時開場で9:30に行きましたがすでに20人並んでいて10時前には200人ほど並んでおり人気の高さにびっくりしました。バベルの塔の絵画は最後に飾られており皆熱心に見入っていましたが、そのあとに東京芸大チームがCGで作成した精細版のバベルの塔があまりにもリアルで感動しました。

リクラストエクスパートフォーラム が大阪であり、参加しました。基調講演で近畿大学整形外科の宗圓教授の「我が国における骨粗鬆症治療の変遷」についていけ拝聴しました。

平均寿命に関して骨粗鬆症、大腿骨近位部骨折の関与は内科的疾患に匹敵すると言われています。骨粗鬆症患者さんは推定1280万人と言われています。脊椎骨折や大腿骨近位部骨折は加齢とともに増加し、大腿骨近位部骨折は5年生存率が50パーセントで生命予後に直結します。大腿骨近位部骨折は日本では80歳代で手術例がやっと減少に転じましたが、90歳代では増加しているとのことでした。我が国では骨粗鬆症診断基準が1995年に出され、1998年に骨粗鬆症治療ガイドラインが出され今までに改訂を重ねています。2012年の最新の診断基準では脊椎骨折、大腿骨近位部骨折があれば骨粗鬆症であり、その他の脆弱性骨折では骨密度が若年平均の80パーセント未満で骨粗鬆症、骨折がない場合は骨密度が若年平均の70パーセント未満となっています。骨粗鬆症の薬物治療開始基準として脆弱性骨折がなく、骨密度が若年平均の80パーセント未満でもFRAXで15パーセント以上、両親の大腿骨近位部骨折がある場合には治療開始するとされています。骨粗鬆症治療薬でビスフォスフォネート製剤が最も使用頻度が高いですが内服薬、静脈注射(1ヶ月に1回と1年に1回があり)があります。最近発売されたリクラスト(ゾレドロン酸)は年1回の静脈注射薬で新規椎体骨折を二年で62パーセント抑制され、非椎体骨折も有意に抑制されました。副作用として発熱が30パーセント、関節痛10パーセント、インフルエンザ様反応7パーセントありました。副作用対策でアセトアミノフェンやイププロフェンを数日内服することで軽減できるとのことでした。腎障害のある患者さんには慎重投与です。またビスフォスフォネート製剤と顎骨壊死の関連性は2017年のポジションペーパーではビスフォスフォネート製剤を4年以上投与されている場合、抜歯など外科的処置が必要な場合は歯科と相談して行うことが出されましたが基本的には休薬は必要ないとのことでした。神戸大学の口腔外科の論文では顎骨壊死にビスフォスフォネート製剤の休薬に関連性がなかったが、抜歯後の開放創は顎骨壊死の危険因子となるそうです。我が国の骨粗鬆症治療の現状は骨折患者の2割であり、継続率が低い(50パーセント未満)ので骨粗鬆症学会が骨粗鬆症リエゾンサービスを推奨しており、医師のみでなく、メディカルスタッフが関与することで初発骨折の予防と骨折連鎖の予防と治療の継続の維持が目的です。

ついでカリフォルニア大学のBlack教授の骨粗鬆症性脊椎骨折の予防:新しい効果的な治療という講演があり、私にとっては久しぶりにネイティヴスピーカーの講演でした。Black先生は約6500例のアレンドロネート製剤やリセドロネート製剤の大規模試験や様々な論文があり紹介されました。ゾレドロン酸投与の7000例の3年の結果で脊椎骨折を70パーセント、大腿骨近位部骨折を約41パーセント、非椎体骨折を25パーセント抑制したとのことで、顎骨壊死は1例でプラセボ例でも1例でいずれも治癒したとのことでした。非定型骨折は頻度は少なく、大腿骨近位部骨折の抑制率の方が上回るとのことでした。