10/15山口県臨床整形外科医会教育講演があり参加しました。最初に武蔵野赤十字病院感染症科の本郷先生の「外来で診る整形外科感染症」がありました。本郷先生は小児科で抗菌薬の適正使用についてお話しされました。感染症ではグラム染色、その検体の培養、血液培養の3点セットで診断を行います。関節液の検査ではグラム染色、細胞数、尿酸ナトリウム、蓚酸カルシウム結晶の検査を行います。抗菌薬のは使うほど耐性菌が増えるので、抗菌薬は第3世代セフェムやマクロライドやキノロン製剤は耐性菌を作る可能性があるので第一選択では用いないようにすること、蜂窩織炎は連鎖球菌か黄色ブドウ球菌が一般的なため第一選択として第一世代セフェム(ケフレックス500mg1日4回)を使用することが望ましいそうです。感染症疑い紹介する場合には抗菌薬処方を投与せずにとのことで勉強になりました。
次いで高円寺整形外科の大村先生の「週1回テリパラチドの効果的な使い方」を拝聴しました。先進国の中で日本が唯一大腿骨頸部骨折が増加していること、頸部骨折を生じると一年で10パーセントが死亡すること、初回骨折の後反対側の骨折が約8倍あることなどから骨折リスクの高い骨粗鬆症治療が必要です。新規脊椎骨折の予防効果が最も高いのがテリパラチドです。先生の医院での300例以上の週1回投与テリパラチドでの治療継続率が56パーセントで投与後一週間で1割が脱落するそうです。P1NPの推移から高骨代謝回転、低骨代謝回転ともに正常化する働きがあるそうです。投与間隔が遵守されない場合に骨密度が低下していたそうです。またビタミンD不足が多く、9人に1人が副甲状腺機能亢進が認められ週1回テリパラチド投与のiPTHが低下させる効果があるそうです。骨粗鬆症患者さんのテリパラチド投与後の腰背部痛の改善のみでなくADL、QOLの改善が大きいそうです。新規骨折の発生率は非常に高いそうです。問題として副作用は50パーセント弱で悪心嘔気があり自律迷走神経反射が原因の場合があり(特に拡張期)血圧が30分で低下する場合があるので30分は院内で観察する方がいいそうです。投与前後で500ml水分摂取すると血圧の低下が優位に改善するそうです。それ以外の原因として高カルシウム血症などがあり対策としてノバミン投与、それ以外の嘔気にはドンペリドンなど使用するそうです。ビスフォスフォネート製剤が先行投与による影響が少ないこと 骨形成は上昇し骨吸収は低下することがデイリーテリパラチドが骨形成と骨吸収を上昇する違いが特徴です。
10/12 クリニック終了後に腰痛症フォーラム in 山口に参加して岡山大学整形外科の田中雅人准教授の「日常よく見る腰痛診療の落とし穴」という講演を拝聴しました。腰痛のガイドラインに基づく腰痛診療、治療の標準化についてお話しされ、腰痛には常に感覚と情動という二つの側面があること、慢性疼痛治療の不満足の原因に医療者側の納得のいく説明がされていないことや話しを聞いてくれないことが上位にあり、妻の夫に対する不満足の原因と似ていることを教えて頂き新鮮な気づきを得ました。腰椎由来の腰痛のポイントは腰椎の動きに関連する痛みで、内臓が原因の腰痛のポイントは安静時疼痛で、心因性腰痛のポイントは慢性疼痛でVASで10/10ということ、不眠、救急外来や大学病院に多いことが特徴です。注意深い問診のコツも教えて頂きました。身体表現性疼痛やうつの診断の特徴をわかりやすく説明されました。急性腰痛の薬物治療は消炎鎮痛剤かアセトアミノフェンを第一選択で使用し必要に応じてプレガバリンやオピオイドを使用することを推奨されました。最後に先生の真骨頂の腰痛の手術療法についてお話しされ脊椎後弯の患者さんのキッチンエルボーサインや多数の手術症例を紹介して頂きました。
8/10山口県医師会産業医研修会があり、山口大学整形外科田口教授の「職場における肩こりについて」の講演を拝聴しました。肩こりの定義として首肩背中の筋肉の緊張を伴う違和感や鈍痛であり、肩こりは女性では一位で男性では二位と非常に多い疾患です。夏目漱石の門の中に肩の凝りという表現があります。人種差はないと言われており、範囲は肩関節と項部の間、肩甲間部になります。肩関節は肩甲骨と肋骨は離れていることが特徴です。肩甲骨の進化として体軸にくっついていた肩甲骨が背部に移動した霊長類になると二足歩行で手が自由になったが、肩甲骨が安定性を失い上腕により牽引され、進化に適した使い方をしていないことなどが肩こりが多い理由だそうです。首には頭の重さがかかり、肩には腕の重さがかかり、頸部肩には体重の20パーセントの負荷がかかります。肩こりに関係する筋肉は僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋であり、鎖骨の角度で撫で肩と怒り肩が分類され、同じ姿勢を続けると筋の緊張が亢進すると筋肉の疎血が生じ発痛物質が産生されて痛みを感じます。筋疲労による肩こりでは筋肉の持続的緊張、過度の首の運動や異常姿勢が原因で、対策としては首の運動だけでなく、肩甲骨のストレッチも有効ですが撫で肩には上部僧帽筋のストレッチはよくないとのことでした。注意すべき肩こりとして長く続いている、寝ていて痛み、手の脱力などがあり、若年者の肩こりが3カ月以上持続すればMRIなどの検査を考慮することを強調されました。胸郭出口症候群、肩関節周囲炎についても説明されました。