第6回長州スポーツ整形塾 その1

第6回長州スポーツ整形塾が宇部であり参加しました。テニス競技〜医学サポートの最前線〜で4人の先生のご講演でした。山口大学整形外科リハビリテーション部の小笠教授がテニスに関して日本でトップの先生方を集めて頂く貴重な会でした。

テニス外傷・障害の発生とナショナルチーム活動について、大阪大学の中田研先生が講演されました。テニスは身体精神的に高負荷のスポーツで選手はオフシーズンが1ヶ月ぐらいと少ないそうです。小中高校生のスポーツ外傷、障害の発生率は年間約48万人でスポーツ人口の10パーセントぐらいの発生率とのことです。主要7スポーツの重症外傷は約20パーセントは膝関節靭帯損傷でした。テニストーナメント中の外傷、障害の発生率は、1人が1000時間プレーした時の怪我と定義すると、18パーセントだそうです。(1000人が1時間プレーして怪我した割合)下肢(膝関節、足関節)の怪我が多いです。スポーツ活動中の心停止はランニングが一位ですがテニスも4位だそうです。AEDがを利用すると56パーセントの回復率がAEDを使用すると76パーセントになるそうです。スポーツ医学のミッションは外傷障害疾病の高いレベルへの早期復帰、予防、競技力向上、生涯にわたる健康維持の4つを示されました。ヘルスケアプロバイダーというスポーツ医のみでなく監督、コーチ、トレーナー、理学療法士など全て含んでいるそうです。テニスのメディカルサポートとして選手サポートのみでなく、トーナメントサポートもあります。セルフチェックシートをスマホでできるようなシステムも紹介されました。テニス競技では運動器障害が40-60パーセントで最も多いのですが、熱中症も多いそうです。ナショナルチームサポートとして、ドクター、トレーナーミーティングや選手が良い体調で故障なく最高のパフォーマンスを発揮できることを目標にされていること、メディカルサポートは継続的に行うこと、整形外科医でも運動器のみでなく脳震盪、熱中症、AEDなども熟知する必要性があることなど様々な取り組みも紹介されました。最後にサイバーフィジカルシステムという取り組みや打点の三次元位置解析も非常に興味深く拝聴しました。

次いで京都大学の奥平先生のテニス男子ナショナルチーム活動と上肢障害についての講演を拝聴しました。テニス選手は手術で半年復帰できないとランキングが下がるので手術になることは少ないそうです。トップアスリートは自分の試合を全て覚えていたり、非常に記憶力がいいそうです。テニスの試合は平均試合時間は3セット1、5時間だそうです。デニスカップは5セット2、5時間だそうです。テニスボールは練習20分するとボロボロになる、プロは3試合で靴が壊れて買い換えるそうです。ストロークはスピード、柔軟性、精確性、再現性が必要です。テニス選手には股関節と肩甲骨周囲の柔軟性が必要です。テニス傷害、外傷は肩肘の傷害が半数をしめます。肩はインピンジメント障害が多い、肩手術後は競技復帰は平均7ヶ月かかるそうです。ラケットとボールの方向と同じになることが重要で肩の複合運動、シシースクワットなど指導するそうです。傍肩関節ガングリオンに対してエコー下に穿刺して改善した例、第一肋骨疲労骨折の例では平均2-3ヶ月で競技復帰するそうです。上腕骨の疲労性骨膜炎の例も提示され2ヶ月は競技復帰にかかるそうです。肘の障害では離断性骨軟骨炎、手関節ではキーンベック病が比較的多いそうです。チームドクターの仕事で尿比重のチェック、感染症のチェック、熱中症対策も紹介されました。メディカルスタッフ同士は通信手段を使用して共有しているとのことです。メディカルチェックは年3回おこなわれており、運動器傷害は減少して内科系疾患が多いそうです。外側上か炎はトップアスリートにはほとんどないとのことでテニス肘という言い方に誤解があることがわかりました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。