ロコモを科学する会

ロコモを科学する会が山口グランドホテルであり参加しました。慶應大学の岩本教授が「高齢者の運動器疾患を考える〜ロコモティブシンドロームへの対策〜」について講演されました。

ロコモティブシンドロームは骨粗鬆症、変形性膝関節症、変形性脊椎症などの疾患にサルコペニアが加わり発生します。ロコモの評価法としての立ち上がりテスト、2ステップテストを行いロコモ度1、2の評価をします。ロコトレとしてスクワットと開眼片脚起立訓練にカーフレイズやフロントレンジが加わったそうです。変形性膝関節症は米国ではヒアルロン酸注射は重症例にしか認められていないそうですが日本では初期の変形性膝関節症にも使用した結果では消炎鎮痛剤と同等だったそうです。大腿四頭筋や中臀筋の筋力強化が運動療法では推奨されました。最近のトピックスで腰部脊柱管狭窄症の椎体間固定された移植骨の骨癒合がテリパラチド週1回投与で優位に早期に癒合したという日本での論文を紹介されました。骨粗鬆症性脊椎骨折と大腿骨近位部骨折は寝たきりになる可能性 があります。

次いで山口大学呼吸器感染症内科教授の松永教授の「COPDと骨粗鬆症」について講演されました。 COPDは慢性閉塞性肺疾患で1秒率が70パーセント未満で定義される疾患です。肺気腫や慢性気管支炎の総称で持続性気流閉塞が反映されています。COPDの進行は気流閉塞と肺過膨張で進行します。COPDは肺だけでなく、全身性の疾患が進行していき、動かなくなるとサルコペニアやフレイル、ロコモになります。続発性骨粗鬆症の原因疾患として骨粗鬆症の原因疾患の第1位です。COPDの重症度と骨密度は負の相関があり、椎体骨折有病率は79パーセントですが治療率は4パーセントというデータがあります。骨粗鬆症が骨密度と骨質の低下が原因で、COPDはタバコなどの有害物質が活性窒素種の過剰産生が生じ、肺を破壊するプロテアーゼ活性がアンチプロテアーゼ活性を凌駕し、炎症酸化ストレスからAGEsが過剰産生されて骨質の低下が生じて骨粗鬆症が進行するそうです。自己免疫と骨粗鬆症の関係は自己免疫疾患で破骨細胞の分化が促進されて骨破壊につながるそうです。小胞体ストレス反応としてGRP78抗体が増加すると動脈硬化の進行にも関連するそうです。COPDは肺がスカスカになっていますが骨も骨粗鬆症によりスカスカになっているという興味深い組織写真が興味深かったです。タバコが原因のCOPDは全く治らない病気ではなく機能的な状態は改善でき、気管支拡張剤の吸入性抗コリン剤CAMA・LAMAとベータ刺激剤CAMA・LAVAがあり最近では1日1回の長時間作用型の薬剤があり、気流閉塞に対する効果はLAMA/LAVA配合剤は呼吸機能が8歳若返るそうです。肺過膨張があると横隔膜が下に下がって可動域が狭くなって息切れの重要な原因となります。息を吐き切るのが苦手なCOPDの患者さんは運動すると息を吸えなくなるので、身体活動性が低下しており、1日の歩行量が10-20分しか動いていないそうです。1日の総歩数は死亡の最も高い因子ですが、運動療法の介入(運動カウンセリングや呼吸リハビリテーション)で改善しますがエビデンスが少ないそうです。気管支拡張剤では軽症例では身体活動性が改善するそうですので早期発見、早期治療が非常に重要であることを強調されました。COPDでフレイルの割合は26パーセントであり、フレイルになっていない患者さんは呼吸リハビリテーションで改善率が高いとのことで運動療法も早期治療が重要ということです。すなわち運動療法と薬物療法の早期介入がCOPDの治療効果を上げる方法であるとのことでした。COPDの増悪は呼吸機能が低下、QOLの低下、脊柱起立筋の筋萎縮、骨密度の低下につながります。30日以内の再入院の原因疾患がCOPD45パーセント、呼吸不全15パーセント、肺炎8パーセントというデータを示され歩行機能の回復が防止につながります。COPDによるフレイルの進行を緩和するポイントとして早期診断、禁煙、気管支拡張剤、運動療法など示されました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。