第6回長州スポーツ整形塾その2

長州スポーツ塾の後半です。

東海大学の三谷先生のテニス女子ナショナルチーム活動と下肢障害についての講演でした。フェドカップのチームドクターをされて杉山選手、伊達選手などからサポートされています。メディカルチェック、ドーピングコントロール、メディカルスタッフの健康管理もされるそうです。インフルエンザ、感染性胃腸炎の対策なども仕事でホテルの自室がメディカルルームになります。水や食料の調達もされるそうですが生物は禁止だそうです。暑熱下でのけいれん対策として発汗による電解質の喪失は血清と等張であるので試合練習前から体重、尿比重、水分摂取量の測定が欠かせないそうで、ポータブルエコーは必須で錦織選手にエコーを見せながら説明をして安心させて優勝したエピソードも話されました。ナショナルチームでドクターとしてトレーナーと情報を共有して長期で選手を支えることで選手に信頼されるようになったそうです。今後の課題としてユース世代のサポート、女性チームドクターの育成など年間を通じた育成が課題とのことでした。テニスにおける下肢障害の特性としてテニスラリー、左右への切り返し動作によるオーバーユースがあり、膝関節靭帯損傷は少なく、反復性膝蓋骨亜脱臼が多いこと、半月板の変性断裂も多く、下肢の柔軟性獲得、維持の為のストレッチ、体感筋力バランス強化維持が重要です。下肢のオーバーユースによる障害の予防にシューズの調整とインソールなどが有用とのことです。テニス選手は股関節唇損傷も比較的多いそうです。半月板断裂はなるべく縫合します。前十字靭帯断裂はテニス選手では多くはないですが半腱様筋やハムストリングを使用した再建術を行います。反復性膝蓋骨亜脱臼は外反膝の全身関節弛緩性の高い女性に多く内側膝蓋骨大腿靭帯(MPFL)再建術に脛骨粗面移行術を組み合わせるそうです。オスグッド病、ジャンパー膝、滑膜ひだ障害、hoffa病、鵞足炎、腸脛靭帯炎など解説して頂きました。膝窩筋腱炎では大腿四頭筋のストレッチが重要とのことです。変形性膝関節症についてはリハビリテーション、ヒアルロン酸関節内注射、関節鏡手術など解説されました。足関節靭帯損傷は初回の治療でギプス固定2-3週間が重要とのことです。

JCHO星ヶ丘医療センターの米谷先生がテニス障害予防とジュニアトレーニングセンター活動について講演されました。関西ジュニア、全日本ジュニア、世界スーパージュニアなどのサポートをされています。世界のトップジュニア選手はストレッチなどコンディショニングをしっかりするのに対して日本のトップ選手は意識が少ないそうです。全日本のコートの温度は40度以上になるので熱中症対策が重要だそうです。ジュニア選手の疼痛部位は腰椎、肩、肘、膝の順ですが傷害は下肢が多く、試合での怪我が多いとのことでした。障害の予防には柔軟性の向上が重要とのことです。ジュニア選手では肘、腰、手首が多く、女性は手首が多く、肉離れ、捻挫も多いそうです。大阪トレーニングセンターでメディカルチェックを行い、点数をつけて改善法を指導されます。ジュニア選手は大腿四頭筋、ハムストリング、腸腰筋、股関節内旋外旋が硬いという結果でした。又14歳以下のメディカルチェックでは足関節捻挫既往が15パーセント、練習量と外傷の相関はなかったそうです。特に股関節内旋外旋が硬く地域差が大きいという結果でした。膝、肘、腰の順に疼痛部位がありました。病院に行くより整骨院などに行く選手の方が多いとのことでした。腸腰筋やハムストリングの利き手の方が硬く、手関節の回内が制限されている結果でしたので、ジュニア選手に対してストレッチ指導の重要性についての検証でトレーニングセンターでの指導後半年後の結果、FFDは改善していましたがSLRは不変で大腿四頭筋の硬さは女子では改善していましたがさらなる検討が必要とのことでした。
テニス外傷、障害についてたくさんの勉強をさせていただきました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。