12/6 福岡で骨粗鬆症講演会があり参加しました。最初に帝京大学教授の井上大輔先生ので骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025改定のポイントを拝聴しました。骨粗鬆症性脆弱性骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折など)によりADL,QOLが低下します。メタボなどによる心血管イベント(heart attack)と同様、ロコモによる骨粗鬆症イベント(bone attack)も早期治療が重要です。骨粗鬆症診断は脆弱性骨折があれば骨粗鬆症と診断し治療開始します。鑑別疾患で続発性骨粗鬆症で最も注意すべきは骨軟化症で石灰化障害でALP(アルカリフォスファターゼ)が低下します。健康寿命の推進に高血圧、糖尿病、脳卒中の非感染性疾患に加えて近年骨粗鬆症、認知症が含まれ、特に骨粗鬆症は治療介入により70%改善するとされています。骨粗鬆症改定の3つのポイントでgoal directed treatment,imminent fracture risk,anabolic firstについて解説されました。goal directed treatment は3年以内にTスコア-2.0を目指す(YAMで70%換算)、骨折リスク低下には大腿骨近位部の骨密度の増加が最も重要、imminent fracture(差し迫った骨折)は骨折後1年以内に骨折するリスクが高いので既存(椎体骨折)があれば早期に治療開始が必要であること、anabolic firstは骨折リスクの高い骨粗鬆症は骨形成促進剤で治療開始することが望ましく具体的指標として骨密度がYAM60%未満、1椎体骨折とYAM70%以下、グレード3の1椎体骨折、2椎体骨折の方に勧められます。薬剤のエビデンスはビスフォスフオネート製剤(アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸)とロモソズマブが推奨度高いとのことでした。
次いでそうえん整形外科宗園先生の骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025改定を踏まえたロモソズマブの位置づけがありました。若年者(50-60才)の骨粗鬆症は椎体骨折に効果のある薬剤、70才以上は大腿骨近位部骨折に効果のある薬剤選択が必要です。ロモソズマブは骨密度上昇効果と骨折抑制効果が高い薬剤で大規模試験でも骨吸収抑制剤に比較して有意差がありました。日本での承認後心血管イベントの報告が多かったですが過去一年以内の心血管イベント発生例を禁忌とする警告が出てから最近の報告では心血管イベント発生は有意差なしとのことでした。ロモソズマブは椎体骨密度上昇効果が高く、遠隔椎体骨折の抑制効果も高く、大腿骨近位部骨密度上昇効果も期待できるとのことでした。薬剤選択において大腿骨近位部骨密度上昇効果を目標値に達するにはロモソズマブ→デノスマブが有効な選択肢となるとのことでした。
最後に骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025改定がもたらす臨床変化と実践的アプローチについてディスカッションがあり各演者の先生方のご意見が参考になりました。。

