第27回日本骨粗鬆症学会参加その1

9/14 幕張メッセで日本骨粗鬆症学会に参加しました。妊娠後骨粗鬆症(PLO)についての女性医学会との合同シンポジウムがありました。東京科学大学の寺内先生の定義と疫学、新潟市民病院産婦人科の倉林先生の妊娠後骨粗鬆症の病態、よしかた産婦人科の善方先生の治療・管理、熊本大学整形外科宮本教授の病態と対応へのヒントがありました。妊娠後骨粗鬆症は妊娠期・授乳期に脆弱性(主に脊椎)骨折を起こす疾患で1955年にLancetに報告されました。授乳後が80%で発症率が0.045%(寺内先生の論文)0.052%(滋賀医科大学)妊娠関連骨折の3割が脆弱性骨折とのことでした。脊椎骨折がほとんどで初発時から症状確定まで約1ヶ月を要しているとのことでした。妊娠授乳期に骨代謝でカルシトリオールが増加して腸管からカルシウムが増加、授乳と高プロラクチン血症から骨吸収が増加して骨粗鬆症が生じるとのことでした。授乳中に脳、乳房、骨のクロストークが生じます。妊娠後から授乳までに3-10%骨密度が急に減少し授乳後は緩やかに骨密度は改善します。この時期にリスク因子がある方が脆弱性骨折を起こす可能性が高くなります。産後の骨密度はDEXAでは骨粗鬆症は5.4%、骨量減少が44%でBMIが低い方に多く組織学的にも低リモデリングで遺伝的要因も加わり生じると考えられるとのことでした。今後の展望で妊娠後骨粗鬆症は将来の骨粗鬆症発症リスクになると考えられています。妊娠後脊椎骨折を生じると3割2回目の妊娠後に2〜3割再骨折を生じました。骨折後の治療としてビタミンD、骨吸収抑制剤、テリパラチドなどで治療されていますがどれがいいかは結論が出ていないですがテリパラチドは骨密度上昇と骨折後疼痛軽減にも選択肢の一つとするとのことでした。産婦人科の立場では妊娠前に低骨密度であっても原則授乳は中断しないそうですが骨折した場合は断乳を勧めるとのことです。出産前後でエストラディオールがほぼ消失し骨吸収マーカーが上昇率が高いことが判明しています。動物実験では骨吸収抑制剤(アレンドロネート)は母体、乳児にも問題なかったとのことでした。(添付文書では授乳中は禁忌であり断乳後の内服を推奨されます。

 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。