ステロイド性骨粗鬆症と関節リウマチの骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症と関節リウマチの骨粗鬆症という演題で豊橋市民病院整形外科部長の平野先生の講演を拝聴しました。豊橋市民病院では年間1000名のリウマチ患者さんを診ておられるそうです。ステロイド性骨粗鬆症の臨床兆候と病態について、長期ステロイド治療は30-50パーセントに発生するとのことで、骨吸収が骨形成より上回るだけでなく、骨質が低下すると言われています。ステロイド性骨粗鬆症では骨芽細胞機能の低下と骨形成の低下がおこり、善玉架橋の低形成がおこるそうです。又原発性骨粗鬆症と比較して骨密度が高めでも骨折しやすい特徴があります。ステロイド性骨粗鬆症の治療薬のエビデンスとして既存骨折、50才以上、プレドニン量が5mg以上、骨密度若年平均80パーセント以下があると予防薬を投与することを日本でも推奨されています。ビスフォスフォネート製剤のアレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸投与は腰椎骨密度は軽度上昇か維持され、骨折の予防効果の論文があります。デノスマブの治療効果は現在研究中とのことで、フォルテオ皮下注射3年の治療効果は骨密度上昇率が高く、脊椎椎体骨折の予防効果も非常に有効という結果が報告されています。最近の米国リウマチ学会のステロイド性骨粗鬆症のガイドラインでは、3ヶ月以上のステロイド治療患者では、まず骨折の危険性を分類して、40才以上でプレドニン2、5mg以上を3ヶ月以上服用される場合、低リスクではカルシウムとビタミンD3を内服すること、中リスクではビスフォスフォネート製剤、高リスクではビスフォスフォネート静注に加えてフォルテオが推奨されていました。関節リウマチの骨粗鬆症の病態は高サイトカイン状態 、ステロイド、などが重なって生じます。先生の関節リウマチの骨粗鬆症に対するフォルテオの有効性についての研究結果では腰椎骨密度は二年で12パーセント、大腿骨近位では5パーセント上昇したそうです。又フォルテオの有効性の予測因子として投与後半年の腰椎骨密度上昇率が高いと大腿骨近位の骨密度上昇率も比例し、二年後の上昇率が高いという結果でした。大腿骨頸部の骨密度ではリウマチの炎症症状が抑えられている方が上昇率が高いという結果も示されました。生物学的製剤投与例では腰椎骨密度や大腿骨近位骨密度は上昇率は低いという結果も教えて頂きました。又フォルテオ後の治療選択として腰椎骨密度は二年後ビスフォスフォネート製剤でもデノスマブでも骨密度は上昇するのですが、大腿骨近位の骨密度は上昇率は低いのですが二年後ビスフォスフォネート製剤よりデノスマブの方が上昇率は高いとのことでした。

次いで聖路加病院の岡田先生の乾癬性関節炎の診断と薬物治療についての講演を拝聴しました。乾癬性関節炎は男性では関節リウマチより若年発生で関節リウマチの血液検査が陰性の場合に髪の毛の生え際の頭皮をみると乾癬の皮膚疾患が判るそうです。喫煙と肥満が危険因子で人口の7-14パーセントいて増加傾向にあるそうです。乾癬性関節炎の10パーセントは関節疾患が先に出るそうで腱付着部炎があると指全体が腫れることで関節リウマチと鑑別できるそうです。爪病変もあり、リウマチ抗体検査は陰性であることなども特徴です。治療薬は消炎鎮痛剤、免疫抑制剤、生物学的製剤を使用しますが症状が増悪することがあるためステロイドは使用しないそうです。IL17を抑える薬が効果が高く、トルツという生物学的製剤などが皮膚症状と関節症状の両者に著効するそうです。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。