関節リウマチに対する最新の薬物治療

第106回山口県臨床整形外科医会教育研修会に参加しました。産業医大第一内科の斎藤准教授の「関節リウマチに対する最新の薬物治療」と三重大学麻酔科丸山教授の「弁慶の泣きどころーアセトアミノフェンで上から痛みをおさえるー」を拝聴しました。関節リウマチの治療として抗炎症薬やステロイド剤などの対症療法と抗リウマチ薬と生物学的製剤の根本療法があります。ステロイド剤は短期間に少量使用し,3 ヶ月以上使用する場合は骨粗鬆症薬を併用することが必要です。抗リウマチ薬はメトトレキセート、アザルフィジン、タクロクリムス(プログラフ)などがありますがそれぞれ副作用に注意して使用する必要があります。タクロクリムスはステロイド剤に併用すると非常に即効性があるそうです。メトトレキセートが関節リウマチの標準治療法ですが限界もあり、X線での関節びらん(関節破壊)は防止できない場合があります。その後炎症性サイトカインを標的とした抗リウマチ薬の生物学的製剤が登場して関節リウマチの薬物治療に大きな変革があり、次々と生物学的製剤が登場し、約7割に関節破壊を防止できるようになりました。関節リウマチの薬物治療の目標は早期診断して骨関節破壊を抑制することであり、リウマチレックスによるT2Tという目標達成に向けた治療の導入が重要であり、指標としてCDAIといった基準が設定されています。リウマトレックスで寛解率が50パーセントであり、生物学的製剤の導入で70-80パーセントの寛解率になりました。生物学的製剤(バイオ)には抗TNFα抗体、IL6受容体抗体など数種類が開発され、後発品も治験中とのことです。完全寛解100パーセントに向けたリウマチ治療戦略面として早期診断してリウマトレックスによる早期治療介入し的確な生物学的製剤の積極的導入であることを強調されました。最新の治験ではリウマトレックスの早期導入とステロイド剤の短期間併用を行い、リウマトレックス禁忌の場合は他の抗リウマチ薬とステロイド剤の併用して半年で治療効果を確認しつつ治療の変更(生物学的製剤の導入を含めて)を考えるということを教えて頂きました。
 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。