岡山での学会二日目


5/19温泉療法医教育研修会二日目です。温泉関連法について早坂先生から講義がありました。温泉関連法は環境省と厚労省が管轄しており、源泉から湯口までが環境省、浴槽の利用は厚労省の法律が関係しているそうです。鉱泉とは地中から湧出する温水及び鉱水で25度以上で二酸化炭素、リチウム・ストロンチウム・バリウム・マンガン・鉄・水素・ヨウ化物イオン・メタケイ酸・炭酸水素ナトリウムなどを含むもので、療養泉の定義は遊離二酸化炭素、総鉄イオン、水素イオン、ヨウ化物イオン、総硫黄、ラドンのいずれか一つを含むとのことです。浴場開設、飲泉するには県の許可が必要です。療養泉の適応症は筋肉・関節の痛み、こわばり、冷え症、末梢循環、胃腸障害、疲労回復など多数あり浴用と飲用で異なります。病気の急性期、感染症は禁忌です。次いで穂崎先生の代謝疾患についての講義がありました。肥満はBMI30以上が定義ですが体脂肪は1kgの脂肪の減量には7000kcalが必要ですが実際には800-950kcalの消費量を目標とします。10分の入浴で30-70cal程度です。飲泉療法は血糖の改善の報告があり、空腹時200mlを30分以上かけて一日500-1000ml飲用します。糖尿病では歩行運動で400-500kcal、水中運動で200-250kcal、温泉浴で100kcalを目標にしますが、血糖コントロール不良や重篤な合併症を有する場合は温泉療法の適応外となります。インスリン注射後1時間は入浴、運動を避けるべきとのことでした。高脂血症は食事と運動療法(水中運動週3回以上30分、1-3ヶ月)で効果が期待できるとのことでした。次いで福田先生の皮膚疾患と温泉入浴を拝聴しました。温泉の皮膚に対する作用として温熱作用、保湿作用、清浄作用、抗菌作用などがあり、皮脂欠乏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、疥癬、汗疹、東総、帯状疱疹後神経痛などが外用薬などの治療の併用しながらの適応となります。次いで温泉地衛生学の講義がありました。近年レジオネラ症の発生があり浴槽のブラッシング、気道からの吸入、飲泉に注意が必要とのことでした。又火山ガス中毒死は火口付近での硫化水素の吸入が原因だそうです。又ラドンを含む放射線泉は高濃度の場合は飲泉には注意する必要があるとのことでした。メタン、二酸化炭素、チッ素ガスの事故は酸欠による死亡事故に繋がるので注意が必要とのことでした。温浴の効果としては胃酸の分泌を抑制しますが連浴では正常化するそうです。物理療法は急性粘膜障害や急性炎症は禁忌とのことでした。次いで飯山先生の消化器・腎疾患への温泉入浴、飲泉の影響の講義がありました。慢性胃炎には効果があるそうです。心拍出量は50パーセント増加、腸管の血流は増加して小腸の吸収は亢進するとのことでした。飲泉については湧出し口から直後出ている湯を飲むことが条件だそうです。最後に小片先生の入浴事故と対策についての講義がありました。入浴関連死(入浴死)は年間14000-20000人で交通事故死の2倍と言われています。虚血性心疾患、溺死、脳血管障害が3大死因とされています。溺水は79パーセントで解剖しても死因が不明の場合もあるそうです。鹿児島県での調査では気温が低いほど入浴死の危険性が増加し、自宅での死亡が86パーセントで温泉での死亡が10パーセントで、温泉での死亡は高齢者男性に有意に多く、夕食前が多かったそうです。入浴事故防止するためには脱衣所や浴槽の暖房をすること、湯温を38-40度にする、高齢者は一番風呂を避ける、深夜、早朝の入浴を避ける、住まいの安全に配慮する、飲酒後は避け、長時間の入浴を避けるなどを述べられました。
写真は一日目の後に行ってきた岡山城天守閣です。特に石垣が見事でした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。