岡山での学会参加


5/18,19は岡山で第84会日本温泉気候物理医学会に参加して温泉療法医教育研修会を受講しました。温泉の定義は湧出し口で25度以上で19種類の物質を限界値以上含むものとされています。温泉療法医制度とは昭和51年に制定されました。山口には湯田温泉をはじめとして県内にも温泉が多く、安全な入浴法や温泉療養の指導・普及させることと加えて運動をすることで健康増進に寄与することができればと考えて参加しました。小笠原先生による温泉療法医制度についての概説をされ温泉療法医が997名、温泉療法専門医が203名おられるそうです。温泉の泉質、湯量、環境などから温泉施設が認定されますが、最近では環境省が新・湯治の推進推進プランとして楽しく元気になれるプログラムの提供などを推奨しています。温泉利用型健康増進施設、温泉利用プログラム型健康増進施設などがあることを教えて頂きました。次いで北条先生が運動器疾患と温泉療法について講義されました。運動器に関しては温泉の効果は主として温熱効果です。局所に対してはストレッチ効果、筋緊張低下、疼痛閾値の上昇、血管拡張効果などがあります。温熱はAγ繊維を介して伝わる非侵害受容刺激になります。変形性膝関節症に対して温熱療法は症状緩和には有用ですがエビデンスは低いとのことでした。先生の研究で関節軟骨は温熱で生物活性と基質代謝が亢進することを提示されました。関節リウマチに効く温泉、泉質は特にはないということでした。次いで宮下先生の気候療法の講義を拝聴しました。気温・気圧・湿度が穏やかで空気が清浄などの保護性気候が最も適しています。和歌山の白浜温泉、龍神温泉での気候療法、白浜素足ウォーキングによる効果を提示されました。次いで出口先生が神経疾患の講義をされました。脳血管障害はICD11で五つに分類されています。温泉の効果として血圧下降、脳血流改善、筋緊張亢進の軽減、脳波でのアルファ波増加などがあり、神経痛に対する温泉浴の効果は温熱作用、静水圧のよるマッサージ効果、浮力による負荷軽減、粘液作用、泉質による化学作用があるそうです。次いで宮田先生が循環器疾患と温泉入浴について講義されました。入浴の心臓への影響は温熱刺激による血管拡張作用、静水圧のよる心内圧の上昇があります。心臓血管系に負担のかからない入浴方法は40-41度10分までが理想的で42度以上や32度以下は心臓血管疾患のある方は禁忌です。深さは胸元までの方が心負荷が少なく、入浴後コップ1-2杯の飲水して水分補給をして出浴後の起立性低血圧に注意することが重要です。1989年に開発された和温療法について60度の温赤外線乾式サウナ内に15分入浴後30分毛布に包まれ30分終了後水分補給すると心不全に有効であったそうです。最後に加藤先生の呼吸器疾患の温泉療法の講義を拝聴しました。温泉の呼吸器系への効果は物理作用の温熱作用によるガス交換の改善、静水圧による換気率の改善、呼吸筋力強化、末梢気道内圧上昇や化学作用による湯気の気道への直接作用、マイナスイオンによる鎮静作用、生体調整作用があり、閉塞性肺疾患(COPD)には良い適応となりますが感染症には禁忌です。気管支喘息に三朝温泉病院の複合温泉療法(温泉プール、拘泥湿布療法、ヨードカリ溶解吸入療法)が有用とのことでした。

ランチョンセミナーでバスクリンの開発に携わった渡辺先生の入浴と健康という講演を拝聴しました。ヘルスツーリズムとは科学的根拠に基づく健康増進を理念に旅をきっかけに健康回復や健康増進を図ることだそうです。又新・湯治は温熱入浴に加えて周辺の自然、歴史、文化、食などを生かした取り組みだそうです。入浴の実態のアンケート調査では夏と冬では入浴頻度は差はなく、夏はシャワーの頻度が増加して冬は特に女性が入浴時間が長いとの結果でした。入浴の効果として温熱、浮力、静水圧があります。浮力は空気中の1/9となるそうです。静水圧は胴回りを3-6cm縮めてくれるそうです。入浴剤の起源は温泉の成分を乾燥、粉末化したもの、薬用植物(菖蒲、柚子)由良があるそうです。入浴剤の効果は温浴効果と清浄効果があり、保温、血行促進、疲労回復、リラクゼーション効果が期待できるそうです。入浴とロコモの関連研究でロコモ体操と炭酸浴入浴を組み合わせて効果があったことも報告されたのは興味深かったです。

午後から岡山大学総合研究科老年医学分野の光延教授の会長講演がありました。高齢者医療における温泉気候物理医学の役割という講演でした。

三朝温泉病院で取り組まれた温泉療法として温泉プール、拘泥湿布療法、ヨードカリの吸入療法、熱気浴(サウナ)などがあり、慢性閉塞性疾患に対する4週間の温泉療法でステロイドの減量、中止や肺機能の改善が得られたそうです。

温泉療法は温泉浴や飲泉などの温泉水そのものを利用する治療の他に運動療法や温熱療法などの理学療法、食事療法、温水プールでの水中運動を含めたもの、さらに気候や環境を利用した転地療養などを組み合わせた複合療法であるとのことです。

超高齢社会におけるヘルスツーリズムというシンポジウムがありました。ヘルスツーリズムとは科学的根拠に基づく健康増進(EBH)を理念に旅をきっかけに健康回復や健康増進を図ることです。最初に日本健康開発財団ヘルスツーリズム研究所の後藤先生がわが国のヘルスツーリズムにおける温泉利用の現状と課題の演題がありました。illnessをいかにwellnessに変えるか?欧州では温泉は医学として利用されていますが日本ではまだまだです。シャワー、サウナは医学効果はなく、温泉もエビデンスは不十分です。厚労省の温泉利用型健康増進施設、環境省の新・湯治プロジェクト、経済産業省のヘルスツーリズムがあります。ヘルスツーリズムプログラムは安心安全の配慮、温泉の関与、健康な食事の提供などに配慮してあることが条件となるそうです。綾部先生がヘルスツーリズムにおける安全かつ効果的な運動について発表されました。ヘルスツーリズムの中での運動のエビデンスは不足しているそうです。高齢者でも成人と変わらない週150-300分の中強度の身体活動を推奨されるようになりました。骨格筋筋量を高める有酸素能を高めることが注目されています。次いで地方行政が取り組みヘルスツーリズムの事例について玉野市の取り組みを報告されました。岡山県玉野市は人口も減少し検診率も低かったそうですのでヘルスツーリズムを利用してたまの湯温泉や地域資源を生かしたり、宿泊型新保健指導プログラムの開発も紹介されました。