臨床整形外科医会の骨粗鬆症講演会があり参加しました

10/20山口グランドホテルで臨床整形外科医会の講演会があり参加しました。最初は徳山中央病院歯科口腔外科の村木先生の骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の現状と予防に関する山口県内での取り組みを拝聴しました。医科歯科間の相互理解を目的にお話しされました。骨吸収抑制薬は骨折予防に有用ですが2003年にBROJと提唱されてから注目されていますがかん患者の骨転移の治療としての骨吸収抑制薬で生じる例が多いのですが最近では骨粗鬆症の治療薬での発症も多いとのことでした。義歯(入れ歯)の刺激で生じるものもあります。上顎にできた顎骨壊死は副鼻腔炎を伴うことが多いそうです。骨吸収抑制薬を飲みたくないという患者さんに対しては本人に治療再開の説得をされるそうです。皮膚に瘻孔ができる例や腫瘍と鑑別が必要な症例なども提示されました。高気圧酸素療法を併用することもあるそうです。提示された症例はビスホスフォネート製剤の五年という長期使用で口腔ケアをしていない例であり、口腔ケアを受けていたら防げたのではないか?という印象を受けましたのでやはり投与後早期から歯科との連携を痛感しました。歯科口腔外科学会の報告での顎骨壊死の発生数と骨粗鬆症学会監修の発生数に乖離があり医科側も顎骨壊死の認識を持つこと、抜歯の時に休薬することで抜歯後の治癒率が上がる可能性もお話しされました。8020(80才で自分の歯が20本)達成が全国的には50パーセントでしたが山口県では30パーセントぐらいだそうです。山口県内での歯科へのアンケートで歯科医師が骨吸収抑制薬を把握していない率も高いので先生達の取り組みでお薬手帳で目立つシールを貼ること、歯科開業医向け抜歯マニュアルなどの取り組みを紹介されました。最後に医科ではビスホスフォネート製剤の投与開始前に口腔管理の重要性を必ず説明してほしいことを強調されて終了されました。
次いで沖本クリニックの沖本先生のスポーツやリハビリを含めた運動と栄養を柱に骨粗鬆症をいかに予防・治療するかについて拝聴しました。骨粗鬆症は続発性は低代謝回転型が多く、若い方は高代謝回転型が多いそうです。加齢とともに骨量が減少する多くは皮質骨で見られ皮質骨に穴が開く多孔性が生じることがわかりました。皮質骨に効く薬はデノスマブとビスホスフォネート製剤だそうです。テリパラチドはデイリーは特に二年使用すると皮質骨の多孔化が生じることがわかってきたそうです。デノスマブはオーバシュートというリバウンドが生じることがわかってきました。日本でもデノスマブでオーバシュートで多発脊椎骨折が生じた報告があり注意が必要とのことでした。呉市のレセプトデータで骨粗鬆症で顎骨壊死がビスホスフォネート製剤使用例で0.29パーセントであったそうです。又呉市でも骨粗鬆症医科歯科連携の取り組みと行政も巻き込んだ歯のパノラマ撮影の取り組みも紹介されました。
ビタミンDは20my/ml未満が不足、20-30で低下ですが、日本のデータでは50パーセントが不足です。ビタミンD不足は長管骨骨折の危険因子だそうです。転倒予防効果、死亡率の低下効果もあるそうです。宇宙飛行士が骨密度の低下することは有名ですが宇宙から帰ってからも回復が遅いそうですが予防としてビスホスフォネート製剤が使用されるそうです。運動による効果はジャンプスクワットなどで骨に刺激があるほど骨皮質の外側が太くなるのでジャンプ系の運動は特に有用だそうです。閉経後にSERM製剤を使用すると予防的効果が高いそうです。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。