ペインフォーラム2018に参加しました

東京で6/3ペインフォーラム2018ー難治化させない疼痛治療とはーに参加しました。山口労災病院田口院長が疼痛治療の変遷~薬物治療の常識が変わった~が、運動器疼痛治療では痛みを慢性化させない。治療の目標はADLをあげることで鎮痛は目標であって手段ではないことなどを最初にお話されました。鎮痛薬の歴史として消炎鎮痛剤は発痛の場の治療から発痛の機能の治療に移行してきたというmechanism based medicineという概念をお話されました。次いでなかつか整形外科の中塚先生の痛みの原因診断で難治化を防ぐという講演を拝聴しました。慢性疼痛の経済的損失は1兆9500万円と試算されており日本でも痛みセンターができて取り組んでいます。痛みの分類としては原因による分類、時間による分類、機能的な分類があり、人間の身体に備わっている内因性鎮痛機構で下降性疼痛抑制系が重要であること、神経障害性疼痛には末梢性と中枢性があります。オピオイド治療ではモルヒネ換算120mg以上使用しない、トラマドール製剤の使用を考慮すること、変化がない場合には漫然と使用しないことを強調されました。慢性疼痛患者は痛みの為運動が制限され、筋拘縮が顕著となりADLが低下して抑うつ状態が助長され病状が深刻になるので薬物治療だけでなく多職種でチーム医療として治療することが望ましいとのことでした。運動療法として筋のリコンディショニングによる筋をターゲットにした運動療法を紹介されました。

次いで患者個々の慢性疼痛に対峙する~最前線の治療戦略~で腰痛編を山口大学整形外科の鈴木先生が、関節痛編を島根大学整形外科の内尾教授が講演されました。

慢性疼痛の中で腰痛は約6割です。腰痛の原因は様々で各組織に侵害受容器が存在しますが慢性腰痛は神経障害性疼痛が合併する混合性疼痛が多いこと、山口県腰痛スタディで整形外科医の中で原因の特定できない腰痛は従来の8割という概念から実際は2割であったということです。腰痛の中で椎間関節性腰痛が18パーセントであり、治療として椎間関節ブロック、後枝内側枝電気焼灼術を紹介されました。難治性慢性腰痛の治療として山口県ペインセンターで集学的治療(入院約3週間)を紹介されました。運動療法では運動の必要性とメカニズムを説明して軽い運動から徐々に運動量を増やして自信を持ってもらい、できるだけセルフエクササイズしてもらう取り組みを紹介されました。慢性の痛みに関する教育プログラムの構築を紹介されました。

内尾教授の講演です。運動器疼痛は2000万人で膝関節痛は約4割です。膝関節痛とX線画像は必ずしも一致しない、変形性膝関節症による疼痛は関節包、靭帯などに侵害受容器にある自由神経終末からの痛みと不安定性による痛みが複雑に絡み合って生じます。慢性疼痛は下降性疼痛抑制系の機能低下により中枢感作が生じることで生じます。痛みによって日常生活動作に障害が出るだけでなく、破局的思考が生じると脳に器質的変化を生じることがあります。減量する仕組みにエビデンスがありますが2.7kg以上減量すると筋力が減少するので筋力を落とさずに減量するには筋力増強訓練が必要です。関節裂隙は年間1.7mm減少するので消炎鎮痛剤による早期除痛は必要であるということもお話されました。最後に愛知医大の西原教授が慢性疼痛の精神心理的背景~より良いコミュニケーションを目指して~というお話をされました。慢性疼痛治療において器質的要因、機能的要因への身体的介入が第一ですが、難治性の場合に身体症症状、うつ病などの精神障害の診断をして患者さんの抱えている心理的な問題を評価することが重要です。運動器疼痛治療で認知症、うつ病、強迫性障害、人格障害、アスペルガー、ADHDなどがあります。最近ではアスペルガー、ADHDなどが多いそうです。

初期面接が大切で予診に時間をかけて観察すること、とりあえずの受け入れ作業、価値観をなるべく排除した問診をする必要があります。治療の中で受けた不信感が痛みの表現に影響する、失感情の方は痛みが慢性化しやすい、夫婦関係、家族関係が痛みに影響する、子供のころのストレスが慢性疼痛に関与する報告も紹介されました。痛みの治療を考える前に何を目標にするか?急性期は医療者主体でいいのですが慢性期は患者主体で投薬はあくまで補助的治療であることを認識する必要があり、医療者側の聴こうとするスタンス、感性を磨くことを強調されました。