日本体育協会公認スポーツドクター養成講習会応用編の二回目の二日目

ベルサール半蔵門で日本体育協会公認スポーツドクター養成講習会応用編の二回目の二日目です、開始1時間前に到着したら会場はがらがらでしたが300名受講しています。恵泉クリニック太田先生のスポーツ外傷・障害の最新情報ーその他外科的疾患ーの講義がありました。防ぎ得た外傷死についてお話しされ、意識障害に関心が向き、はでな外傷、目立つ損傷、訴えにとらわれないようにすることをまず言われました。外傷には3つのピーク(数秒から数分、数分から数時間、数日から数週)があること、治療はまず救命、機能温存、整容の順に行う、TAFな開緊、血を診るぞ(T:心タンポナーデ、A:気道閉塞、F:フレイルチェスト、開:開放性気胸、緊:緊張性気胸、血:血胸、腹腔内出血、骨盤骨折)という超緊急事態の解説をして頂きました。外傷初期診療ガイドライン(JATEC)、ALS、ABCDEsアプローチ(airway:気道確保、breathing:呼吸, circulation:循環, dysfunction of central nerve system:中枢神経障害,exposure and environmental :脱衣と体温保護)何を聞くか?(GUMBA:原因、訴え、飯、病歴、アレルギー)、外傷死の3兆候として低体温、アシドーシス、凝固異常)、FAST(エコーによる心嚢、胸腔、腹腔内出血検査)など非常に大事な内容を教えて頂きました。熱中症の新分類で1度:めまい、立ちくらみなどの熱失神、筋肉痛、筋肉の硬直など熱痙攣、2度:頭痛、気分不快、嘔気、嘔吐、倦怠感、虚脱感などの熱疲労、3度:意識障害、痙攣、運動障害などの熱射病、高体温があり、2度は入院が必要で3度は集中治療が必要です。スポーツ中の心停止は若年者に多いこと、心停止後の死線期呼吸に惑わされず、心マッサージ、AEDを行うことも教えて頂きました。
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次いで慶應大学スポーツ医学センターの松本教授のスポーツバイオメカニクスという講義がありました。スポーツ医学にはスポーツ外傷障害の治療のみでなく、パフォーマンスの向上、スポーツ栄養、水分、電解質、環境への適応、アンチドーピング、スポーツ心理、スポーツによる健康増進なども含まれます。スポーツバイオニクスとは造語ですがスポーツ動作解析や動作中の負荷を分析してその研究成果をスポーツ外傷障害の予防、シューズやスポーツ用具の開発、パフォーマンスの向上に役立てる学問です。スポーツの運動は体を動かすことですが、バイオニクスの運動は物体が動く様子のことなのでスポーツ動作に伴う動き、力を定量化することです。分解写真などの二次元解析、赤外線マーカーによる三次元解析、有限要素法による解析(FEM)があります。膝外反は二次元で解析すると20度以上になることがありますが三次元解析では10度以下なので三次元解析の方が有用とのことでした 前足部接地では後足部接地より過度の負荷によりシンスプリントの発症リスクが高くなる、テニスのスプリットステップは有意に反応が早くなるという研究も教えて頂きました。バイオニクスの現場でsutiffnessとは伸びにくさでstressは単位面積あたりに加わる力であるそうです。最後に2020年東京オリンピックに向けてパラリンピックへのサポート体制が必要であることを強調されました。
次いで聖マリアンヌ医科大学の別府先生が肘、手関節、手指のスポーツ外傷、障害の最新情報について教えていただきました。スポーツによる手関節痛はテニスは最近オープンスタンスが基本であること、ワイパースイングの影響などもあるそうです。手関節痛は尺骨のフォベアについている三角靱帯が大切で尺骨を中心に橈骨が回内回外するので尺側部の疼痛を生じやすいです。遠位橈骨尺骨靱帯の疼痛は前腕回内回外時のクリックや疼痛が特徴で手を握って回内力比べで痛みが誘発され、フォベアテストなどが陽性となります。尺側手根伸筋腱の亜脱臼や腱鞘炎も鑑別に必要です。尺骨頭圧迫する装具は中間位で装着するそうです
難治性のテニス肘は短橈側手根伸筋の筋付着部症ですが伸筋腱断裂、側副靱帯、輪状靱帯の刺激症状、滑膜ひだなどの原因を除外する必要があります。フリンジインピンジメントテスト陽性の場合は関節内病変の可能性があり、肘外側部痛症候群という概念を提唱されました。野球肘は成長期の小中学生は骨軟骨障害、高校生は靱帯損傷の場合が多く、早期発見であれば保存的治療でよくなりますが、進行期には手術になることが多いことから小学生、中学生に長く野球を続けるための10の提言を出されて、投球数の制限やシーズンオフは投げないようになど指導者に教育をされていますが、実際には守られていない事が多いそうです。テニスは健康に有益か否か?という論文を紹介され、テニスなどのラケットスポーツは他のスポーツより死亡リスクが47パーセント減、スイミング、エアロビクスは27、28パーセント減であったそうです。
午後からは国立スポーツ科学センターの蒲原先生による大会救護と救急医療についての講義がありました。競技会スポーツ現場における救急医療体制について、スポーツ現場での事故の要因の報告、円滑な競技会維持運営、傷害保険への加入についてお話しされました。マスターズ大会参加者の場合は、競技者における自己責任の原則があります。BLS:basic life support 1次救命処置とALS:advanced life supportがあり、BLSは胸骨圧迫、除細動器、AED使用、窒息の解除のことです。東京マラソンに携わっておられてこれまでに心肺停止が7名ありましたが、全例心肺蘇生で救命できたそうで、事前準備と当日の体制作りが重要であることを認識しました。
最後に筑波大学の渡部先生の呼吸器疾患とスポーツについて講演を拝聴しました。気管支喘息、運動誘発性喘息、呼吸器感染症、過換気症候群について主にお話しされました。ロンドン五輪では医務室での内科的疾患の中で急性上気道炎、皮膚疾患、急性胃腸炎、アレルギー性鼻炎の順でした。
運動誘発性喘息とは運動中や運動後に急性気道狭小化をきたす病態で運動誘発性気管支攣縮とも言われ、気道の温度変化や乾燥を引き金に生じます。水泳、長距離選手、自転車、サッカー、アイスホッケー、スケートなどに多いとのことでした、気管支喘息治療薬には第1選択のベーター2作用薬があり、短時間作用型吸入薬と長時間作用型吸入薬があり、ステロイド吸入も含めてアンチドーピング手続きが必要となります。市販の総合感冒薬にはエフェドリンが成分として含まれておりドーピング検査にかかるので注意が必要とのことでした。