第56回 痛風と高尿酸血症について

今回は痛風のお話をします。痛風は古来エジプトのミイラの関節に尿酸塩が見つかっており、アレクサンダー大王、レオナルド・ダ・ビンチ、ニュートンなども痛風で苦しんだそうで欧州では歴史の古い疾患です。日本では明治時代以前は痛風患者はいなかったそうですが、1960年以降に食生活の欧米化により増加しています。痛風とは高尿酸血症が持続して尿酸塩結晶が沈着した結果生じる痛風関節炎・痛風結節のことで、高尿酸血症は性,年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義されます。高尿酸血症は痛風関節炎の明確なリスクであり、種々の生活習慣病においても血清尿酸値が臨床上有用なマーカーになると言われています。高尿酸血症の頻度は,成人男性において,30%弱であり、女性は50歳未満で1.3%、50歳以上で3.7%と圧倒的に少ないのですが閉経後に血清尿酸値が上昇するので注意が必要です。高尿酸血症は現在も増加傾向であり、それに伴い痛風の有病率は,男性において30歳以降では1%を超えていると推定され,現在も増加傾向です。食生活の欧米化によるプリン体の摂取量が増え、カロリーの過剰摂取による肥満が増加したことが原因とされています。

痛風性関節炎で代表的なのが第1足趾付け根(MTP関節)の関節炎で、他に足関節炎、膝関節炎があり、関節周囲に発赤、腫脹、熱感に高度の疼痛を伴い、痛くて歩くのがやっと、という状態で整形外科を受診されることが多いです。診断は問診と視診で比較的容易ですが、確定診断として採血で尿酸値を確認しますが、痛風発作時には必ずしも尿酸値が高値にならないことはしばしばありますが、安心は禁物でその場合には1ヶ月後に再度検査をします。また関節液が貯留している場合には関節液を穿刺して偏光顕微鏡という特殊な顕微鏡で痛風結晶を確認しますが、最近は超音波検査で関節内に痛風の結晶が直接確認できます。治療は急性期にはまず炎症を抑えるために消炎鎮痛剤を通常より頻回に使用します。炎症所見が改善しない場合にはステロイド剤を短期間使用することもあります。約2週間で炎症が落ち着いたら高尿酸血症の治療薬(尿酸降下剤)を少量から開始します。尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬の2種類がありますが、近年発売された尿酸生成抑制剤(フェブキソスタット)を使用する場合が増えてきました。定期的に尿酸値を計測して尿酸値を6mg/dL以下にコントロールします。食事はプリン体の多い食事指導(肉類、内臓類、ビール、アルコール多飲)を行い、十分な水分摂取と適度な運動を指示しますが、激しい運動は痛風発生させることもあるので注意が必要です。痛風も生活習慣病と関係がありますので生活習慣を改める(見直す)いい機会と思って是非治療を継続することをお勧めします。

参考文献
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。