第26回 腰椎疲労骨折—成長期の腰痛症

成長期の子供の腰痛で注意すべきは腰椎疲労骨折です。以前は腰椎分離症といわれていましたが、これは初診のX線写真で腰椎斜位像にて椎弓(腰骨の後ろの部分の神経を取り巻く薄い板状の骨)部に亀裂(骨折線)があることからついた病名ですが、亀裂のない腰痛患者さんでもMRI検査を撮像すると信号変化があり、骨折しないうちに発見できるようになったことから現在では腰椎疲労骨折という名称の方が適切と考えられえています。

発生率は5%といわれており、スポーツ時の繰り返す腰の伸展や回旋運動により生じ、椎弓の下側から上に向かって垂直に骨折が進むことが多く、X線写真よりもCTで確定診断を行います。体の柔軟性も影響します。(大腿後面のハムストリングスという二頭筋の硬い人が多いです)野球、テニス、など右ききの選手は左の骨折が多く、サッカーやバスケは左右差がないと言われています。治療は腰の伸展と回旋を制限した硬性コルセットを3−6ヶ月装着しますが、小学校高学年で早期に発見できると骨癒合率は90%とも言われていますが、中高校になると癒合率は徐々に低下し、進行期には60%、終末期ではほぼ0%です。そのためスポーツ選手の急性腰痛、あるいは1ヶ月以上持続する伸展時や回旋時左右差のある腰痛は疲労骨折を積極的に疑ってMRI検査を早期にお勧めしています。MRIで椎弓部に信号変化があった場合にはCT検査にて骨折の有無を確認してコルセットによる治療を開始しています。しかしながら骨癒合率が時期によって異なり、スポーツを中止してコルセットで治療を行っても100%骨癒合が得られるわけではないので、本人、家族に十分説明をして治療法を選択していただきますが、スポーツのシーズン期では本人、家族を説得するのに時間を要します。コルセットを装着している期間は運動は全く禁止するわけではなく、腰痛が消失してから早期に体幹のリハビリテーションや下肢(ハムストリングス)のストレッチを行い、CTで骨癒合を確認してからスポーツ完全復帰を行います。以前高齢者の腰痛を見たら脊椎骨折を疑え、ということをお話ししたと思いますが、若年者のスポーツによる腰痛をみたら疲労骨折を疑うことも非常に重要です。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。