第03回 ぎっくり腰とは?その原因は?

ぎっくり腰とは?その原因は?

欧米では魔女の一撃とも呼ばれており、重い物を持ち上げたり、腰をねじったりしたときに急に生じた腰痛をさしますが、整形外科的には正式な病名ではなく、急性腰痛症の一般名で原因の特定できない非特異的腰痛に分類されます。クリニックに来られるぎっくり腰の患者さんを問診すると多くは前屈みの姿勢が原因で生じていることが多く、靴下をはこうとして、子供を抱えようとして、あるいは持ったものが予想以上に重かった場合などにも生じます。Nachemsonらの研究では立位の姿勢での腰の椎間板内圧を1としたときに仰向けでは1/4ですが、前屈みで1.5倍、座って前傾姿勢をで1.85倍になります。くしゃみをすると腰痛が強くなったりするのもくしゃみをした瞬間椎間板内圧が上昇するためと考えられ,椎間板内の中心部にある髄核が脊柱管内に飛び出して椎間板ヘルニアになることもあります。私は数年前自分が椎間板ヘルニアになった瞬間のことを今でも鮮明に覚えていますが、ボート部のOB会で8人乗りのボート(エイトといいます)に乗って皆で漕いだ瞬間に左臀部から下肢に激痛が走り、動けなくなりました。私の動きが遅れたためにもともと足を靴で固定されて前屈みの姿勢で座っている姿勢に、さらに前にかがむ力が加わりヘルニアが脊柱管内に飛び出したと考えられます。これは日頃の腰を丸めた不良姿勢も大いに関係します。皆さんも前屈みになるときにはくれぐれも注意して下さい。
(文献:Nachemson,A. L.: The lumber spine an orthopaedic challenge,Spine,1(1), 59-71(1976).)

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。