第4回九州沖縄地区OLS研究会ウェブセミナー

第4回九州沖縄地区OLS研究会ウェブセミナーが開催され拝聴しました。一般講演は熊本機能病院の古川先生の歯周病と全身疾患の関連性〜医科歯科連携に向けて〜という演題でした。歯周病とは歯垢(プラーク)や歯石に存在する歯周病菌が歯肉炎症を起こし、さらに歯周病に進行し歯周ポケットが生じて歯がぐらぐらになり抜歯が必要になる疾患です。喫煙、ストレスの多い生活、歯ぎしりなどの生活習慣は危険因子で、加齢とともに歯周病は増加します。歯周ポケットはプローべで3mm以上が異常です。歯周病と糖尿病、骨粗鬆症、社会心理的なストレスなどが関係しますが、対策としては口腔内ブラッシングや保湿などがあります。い歯科と骨粗鬆症の関連についてはビスフォスフォネート製剤内服有無の連携が重要でできればビスフォスフォネート製剤の前に歯科受診をすることが大切で、連携のとれるかかりつけ医をもつことも強調されました。口腔ケア依頼書も紹介されました。熊本県では県医師会が県歯科医師会と病診連携しており、登録してある歯科を紹介したり勉強会もされているそうで羨ましい限りです。次いで健愛記念病院整形外科の池田聡先生の「できる!医科歯科連携ー遠賀中間地区の場合ー」を拝聴しました。顎骨壊死の報告は2003の論文の36例の報告が最初でほとんどが悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療薬によるものがほとんどで骨粗鬆症治療薬による顎骨壊死は1例でしたがマスコミで大きく取り上げられたことから2010年に日本でビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)のポジションペーパーが発行されました。骨吸収抑制関連顎骨壊死(ARONJ)と称されビスフォスフォネート剤投与3年未満でリスクファクターが高い、ビスフォスフォネート投与3年以上は抜歯優先が望ましいとされました。ARONJの予防を目指して池田先生の地区では医師会に働きかけて医科歯科共通の診療情報提供書を作成されました。利用状況は40パーセント代とのことでした。昨年ARONJのポジションペーパーが変更されました。それによると骨壊死を伴った慢性骨髄炎であること、投与前に歯科受診を勧め、ビスフォスフォネート剤の一時中止で顎骨壊死の発生リスクを減少できるそうです。抜歯後は2カ月の休薬が望ましいとのことでした。抗生剤(グレースビット)の有用性についても明示されました。遠賀中間医師会ではお口のチェック表や診療情報提供書など紹介されました。骨粗鬆症患者は歯周病のリスクが高いこと、テリパラチドで顎骨壊死が治癒した報告もあるそうですので正しい情報を医科歯科ともに共有する必要があるということも教えていただきました。

特別講演は岸川整形外科の岸川院長の「腰痛疾患のメカニカルな診断と治療ー椎体骨折の痛みを評価するツールのご紹介ー」でした。岸川先生はマッケンジー法を行う整形外科有床診療所の院長先生です。興奮している神経の数で異なるので脊椎洞神経の刺激される腰痛のみか神経根まで刺激され下肢痛まで放散するか?が変わります。骨粗鬆症患者でビスフォスフォネート製剤で骨密度が増加しない場合にビタミンDが低下している場合が多いのでビタミンDを併用すると骨密度が増加する場合があるとのことでした。椎体骨折の保存的治療として非荷重で約1週間安静にして寝返りが痛くなければギャッジアップを行い、その後ギプスまたはコルセット装着して離床されるそうです。その間も体幹、下肢のエクササイズを行うことも紹介されました。入院施設がある病院も参考にして頂きたい内容でした。

 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。