山口県臨床整形外科医会教育研修


山口県臨床整形外科医会教育研修会があり参加しました。最初に川崎医大整形外科の阿部教授の膝関節疾患に対する診断と臨床アプローチの講演を拝聴しました。膝痛の原因として怪我、オーバーユース、加齢に伴うものがあります。ファジアーノ岡山のチームドクターもされています。腸けい靭帯炎、大腿肉離れ、サッカーで肉離れが起こるメカニズムは股関節の可動域が狭いこと(特に内旋制限)やねじれの力が加わることなども関連するそうです。女子の前十字靭帯損傷は外反外旋(ニーイン、トウイン)で生じるそうです。前十字靭帯の診断は問診、MRI、ラックマンテストを総合して診断します。診断のためだけの関節鏡はされないとのことでした。手術はハムストリングか膝蓋腱を用いて行います。それぞれに一長一短があるとのことでした。又走るときに膝内側痛が生じる原因としてタナ、半月板損傷、鵞足炎があり、半月板損傷特に縫合術について詳しく教えていただきました。次いで杏林大学整形外科の市村教授の骨粗鬆症診療におけるup to date〜医療安全の立場から〜の講演を拝聴しました。周防大島の断水による水運びで骨粗鬆症性骨折が11名あったニュースを紹介され脆弱性骨折に気をつけること、腰痛で整形外科を受診する際に腹部大動脈瘤、癌の骨転移、化膿性脊椎炎などに注意する必要があるとのことで正に身につまされる思いがしました。又大腿骨近位部骨折後の反対側が7倍以上あること、X線で骨折がはっきりしない場合にはMRIなどの追加検査が必要です。エルデカルシトール投与で高カルシウム血症(症状で多飲多尿)の症例を紹介され他のビタミンD製剤より多いということ、又酸化マグネシウムも腎機能低下に伴う高マグネシウム血症の危険性が増すとのことで勉強になりました。糖尿病患者さんでビスフォスフォネート内服後朝食を30分待つ必要がありますが低血糖のリスクがあるのでビス剤の静注の方がいいとのことでした。又一年に一回のイバンドロンネート静注薬は急性期反応という発熱があるのでアセトアミノフェンを投与するとよいとのことでした。最近出た抗スクレロスチン抗体は心血管イベント、脳血管障害が一年以内に生じた方には投与しないことが望ましいとのことでした。
 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。