ウェブセミナー変形性膝関節症の病態と治療

11/19ホテル松政でウェブ講演会があり参加しました。順天堂大学の石島旨章准教授の変形性膝関節症の痛みの病態と治療というタイトルでの講演を拝聴しました。変形性膝関節症の有病率は推定2500万人で1/3が痛みを有すると言われています。変形性膝関節症の日本のガイドラインは非薬物療法が最も推奨度が高いです。又病態とX線所見は必ずしも一致しないと言われています。慢性疼痛は組織の治癒期間(概ね3ヶ月)を超えて持続する痛みです。変形性膝関節症も力学的負荷に起因した炎症が急性期の痛みとしてありますが最近ではX線所見だけでなく、MRIやバイオマーカーなどにより病態がわかってきました。又初期の方が末期より炎症性サイトカインの発現は高いのですが滑膜炎は両者で変わらないので重症度により病態が異なること、変形性膝関節症患者の痛みの閾値が低下していることもわかってきました。変形性膝関節症患者の疼痛閾値低下は侵害受容器の障害か?中枢感作か?についての研究では疼痛が強いほど中枢感作が生じること、滑膜炎の程度と痛みの中枢感作は関連がありますが滑膜炎が改善しても中枢感作は改善しないこと、MRIでの大腿骨関節部の骨髄浮腫は軟骨下骨の病態を反映することなどがわかってきました。関節内での過剰な力学的負荷が関節軟骨の磨耗と軟骨下骨の刺激で滑膜炎を生じ関節外で脊髄、脳の中枢感作が生じて慢性疼痛が生じるメカニズムが解明されてきたそうです。

ウェブ講演の後に座長の山口赤十字病院整形外科の城戸聡先生のミニレクチャーがありました。内側型変形性膝関節の骨切術の歴史をお話しされました。open wedge osteotomyからclosed wedge osteotomyになり固定するデバイス、骨切の方法の改良により比較的安定した成績が得られるようになりました。closed wedge osteotomyの欠点として腓骨の骨切などあり再度ロッキングプレートと人工骨を使用したopen wedge osteotomy やhybrid HTOという方法も出ているそうです。

又脛骨顆部外反骨切術も紹介されましたが万能な手術はなく症例に応じた手術選択が必要とのことでした。


 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。