かかりつけ医研修会 その1

日本医師会主催のかかりつけ医研修会に参加しました。脂質異常症、糖尿病、高血圧症、認知症、禁煙指導、健康相談、在宅医療、介護保険、服薬管理についてテレビ会議での講演を拝聴しました。動脈硬化の進展にはプラークが形成され、プラーク破綻、血栓形成へと進行します。危険因子として高LDL血症、高血圧、糖尿病、喫煙、内蔵型肥満が危険因子であり、それらの包括的管理が必要です。人間ドックでも高TG血症が24年で37倍に増加しており心筋梗塞の発症増加にも関与しています。脂質異常症の診断基準はLDLコレステロールが140mgdl以下、HDLコレステロール40mgdl以上、トリグリセライド150mg以上、non HDLコレステロール170mgdl以下です。non HDL コレステロールは食後でも評価可能とのことでした。一次予防では非薬物療法が基本ですがLDLコレステロール180以上では薬物療法でまずLDLコレステロール管理を目指し、達成後はnon HDLコレステロール管理を目指します。高LDLコレステロール血症には飽和脂肪酸摂取制限、トランス脂肪酸摂取制限、コレステロール摂取制限を指導する。薬物療法にはスタチン、小腸コレステロールトランスポーター阻害剤、陰イオン交換樹脂、プロブコール、フィブラート系薬、多価不飽和脂肪酸、PCSK9阻害剤などがあり、それぞれ効果と副作用を加味して使用します。高LDLコレステロール血症にはスタチンが第一選択であり、コントロール不良の場合には専門医紹介が必要です。LDLコレステロール/HDLコレステロールが25以上では心筋梗塞発症リスクが上昇するので治療が必要です。女性の高LDLコレステロール血症では食事、運動療法が優先されます。高齢者の高LDLコレステロール血症ではスタチン投与が一次予防二次予防に有用です。フレイル(虚弱)は心血管イベントの危険因子で、スタチンはサルコペニアの誘因とはいえないとのことでした。

 

糖尿病は男性で8年、女性で11年短縮し、50年で35倍増加しており、早期発見、早期からの対応が重要です。糖尿病の治療の目標は血糖、体重、血圧、血清脂質のコントロールと合併症の予防が重要です。糖尿病と糖尿病予備軍を合わせると2050万人と言われています。糖尿病は1型、2型、その他の特定機序、妊娠糖尿病の4つに分類されます。1型で中年以降発症のSPIDDMもあり、劇症1型糖尿病も注意が必要です。2型糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性に分類され、空腹時血糖126mgdl以上、HbA1c65パーセント以上などで診断されますが正確にはブドウ糖負荷試験が必要です。後頭部から肩の皮膚の浮腫性硬化、手掌腱膜の肥厚収縮するドュプイトレン拘縮、項部頸部腋窩に黒褐色の色素沈着などはインスリン受容体異常症Aを疑う初見です。糖尿病性末梢神経障害は足の痺れ、アキレス腱反射消失、足関節内果の振動覚低下のうち2項目で診断されます。足のつりにタウリン酸や芍薬甘草湯、セルシン眠前2mgなども有効です。糖尿病性網膜症は緑内障に次いで視力障害の二位ですので毎年眼科検診が必要とのことです。糖尿病性腎症も糖尿病発症から5-10年で起こリ透析後の予後も悪いので血糖、血圧、脂質管理、禁煙、減塩が予防に重要です。収縮期血圧が高いと冠動脈疾患発症リスクが上昇し、LDLコレステロール、トリグリセライド、HbA1c増加が脳梗塞発症リスクが上昇します。唾液分泌量が減り、歯周病の発症も悪化しやすく、飲酒喫煙ストレスなど生活習慣の関与が大きいです。糖尿病患者の5パーセントがNASH(非アルコール性脂肪肝炎)を発症します。急性合併症で糖尿病性ケトアシドーシス(血糖300mgdl以上で意識障害も合併)、高血糖高浸透圧症候群(著しい脱水)、足の感染症は重篤化しやすく注意が必要です。薬物療法は内服薬はインスリン抵抗性改善系、インスリン分泌促進系、糖吸収排泄調節系に分類されわが国では安全性に優れ制約の少ないDPP4阻害剤が主流になっています。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。