山口県臨床整形外科医会教育研修会

3/13小郡グランドホテルで山口県臨床整形外科医会教育研修会があり座長として参加しました 最初に山口大学整形外科の鈴木秀典講師のとうかにおける脊椎疾患治療についての講演を拝聴しました。最初に腰下肢痛の治療と頚椎疾患の治療についてのお話でした。ブロック治療の最新動向や腰椎ヘルニアのヘルニコア治療、慢性疼痛を扱うペインセンターの集学的治療の紹介、腰部脊柱管狭窄症の低侵襲治療成績、頚椎選択的椎弓形成術の治療成績と除圧術のピットホールなどお話ししていただきました。特に首下りのある頚椎手術は注意学会必要とのことが印象に残りました。 次の特別講演Iは大阪医科大学麻酔科教授の南先生の最新の痛みの診断と治療についての講演を拝聴しました。大阪医科大学麻酔科は手術麻酔、集中治療だけでなくペインクリニック、救急医療、緩和医療、在宅医療まで幅広く対応されているそうです。慢性疼痛は日本では我慢すべきものと考えられたり、注目度が低いとされますが働き盛りの人が慢性疼痛は10人に1人とされ医療損失も大きいと言われています。痛みの定義が改定され、組織損傷が実際に起こった時あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験というように変わったそうです。これは痛みが組織損傷がなくても生じることを提示されたことになります。子供の時の虐待や手術侵襲、仕事のストレスは痛みの過敏性に関与するそうです。漢方薬の有用性についても又自己主張が強い方には加味逍遙散、神経質な方には四逆散、怒りが強い方には抑肝散など漢方治療で様子を見ることもあるそうです。超高齢者や糖尿病患者さんにはブロック治療を行う時には濃度に注意が必要でありステロイドは併用しないとのことでした。糖尿病の方は神経が障害を受けているので手術後の症状の改善が低い傾向があること、頚椎手術後の末梢神経障害の手術も改善度が低いとのことでいわゆる神経のダブルクラッシュが生じると治療成績は低下するとのことでした。神経障害性疼痛の早期にはMMP-9,晩期にはMMP-2が関与するとのことで早期に中枢から抑制する鎮痛剤を使用することの必要性をお話しされました。手術後遷延痛は3ヶ月以上持続する疼痛で1-2割に発症し1パーセントが治療抵抗性とのことでした。術直後に痛みをなるべく抑制することが重要であること、重要変形性膝関節症の人工関節術後で痛みが遷延する1-2割の方は全身の痛みの閾値が低下しているそうですので痛みのないところを徐々に動かしていくリハビリが重要であるとのことでした。頭のdefault mode ネットワークが働かないと安静時痛が改善しないそうです。運動の中でもウォーキングがエビデンスもあり有用であるとのことでした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。