令和7年度山口市医師会・吉南医師会合同学校医研修会「不登校の背景にあるもの~思春期・青年期の心のあり方について考える~」

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令和7年度山口市医師会・吉南医師会合同学校医研修会があり参加しました。講師はてるクリニックの芳原輝之先生で「不登校の背景にあるもの~思春期・青年期の心のあり方について考える~」を拝聴しました。不登校の現状として小中学34万人、高校6.9万人と過去最多でクラスで1人は不登校という現状でコロナ禍以降増加傾向にあるそうです。原因としていじめなどより学校生活に対してやる気が出ない、不安・抑うつなどが多く、山口県でも2024年度4031人とのことでした。思春期の心の発達について、子どもの自我は幼少期は家族から、小学校前後から友人、学校など外部からの刺激により無意識に形成されてきます。学校や仲間集団との関係性構築がうまくいかなかった場合、発達過程を逆行し家族のふところ深く潜りストレスを減らそうとしますが親への心理的な過剰接近に繋がったり、精神発達上のストレスへとつながっていくそうです。思春期の発達は前進と後退の繰り返しでその子に応じた発達の形があります。学童期は勝つことと負けることを経験して褒められることと叱られることのバランスが崩れるると自己評価が低くなる、学童期から思春期で周りから見られる自分を認識するようになり、思春期で身体成長、同性・異性の意識、友人との繋がりへの依存、不安や衝動性、容姿などに興味を持つのでこの変化を肯定的に受け止めることも重要とのことでした。学校欠席する葛藤を持ちながら学校活動に参加できない不登校は子供の自我を外的に支える、家族と学校の支持機能がバランスを崩している状態と言えます。不登校の経過中にみられる諸現象として不登校の前に心の葛藤が高まると腹痛、頭痛、吐き気など心身症的な身体症状で表現し予期不安、脅迫症状、抑うつ症状など神経の変調が生じて親に助けを求められず(母親には過剰に甘えたり父親を避けるなど)、不安や焦燥感家庭に引きこもったり、家庭内暴力などが生じ、親も挫折を感じ、両親の対応に差がありすれ違いから母親が追い詰められやすいので、この機会に両親が話し合いお互いの心を開く努力が求められ、その後心理的葛藤が落ち着いてくると不登校の回復につながるとのことでした。子どもも家庭外の世界に目を向けて辛抱強く親が支えてあげ、外部からの働きかけが噛み合うと子供は外の世界に一歩踏み出せるそうです。不登校への援助には王道はなく子どもの立場に立ってが今何を必要としているかを親と医療者、関係者が話し合い子どもが変化するための固有の速度を尊重すること、子どもの心の中に、助けてもらったという実感ではなくしんどかったが何とか自分の力で乗り越えたという実感が残ることであることをお話しされました。非常に勉強になるとともに現代の不登校に対するアプローチの貧しさを痛感しました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。