第100回 末梢動脈疾患(PAD)ガイドラインの改定

末梢動脈疾患(PAD)はこのコラムでも取り上げたことがありますが、そのガイドラインが日本循環器学会と日本血管外科学会から7年ぶりに改定されました。末梢動脈疾患とは冠動脈(心臓の血管)以外の四肢動脈、頸動脈、腹部内臓動脈、腎動脈、および大動脈の閉塞性疾患の総称です。日本人の65歳以上の3.4%、350万人以上と言われ、糖尿病患者では12.7%と頻度が高くなります。その中でも上肢の末梢閉塞性動脈疾患をLEAD、下肢の末梢閉塞性動脈疾をLEADと称し区別して分類し、特にLEADは頻度が高く重症化すると下肢壊死や切断につながる重要な疾患です。今回ガイドラインでは無症候性LEAD、間歇性跛行、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の3つに分類し、診断・治療の症候別アプローチを記載されています。PADは冠動脈疾患(心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞)に比べてはるかに国民の認知度が低いのですが、生活習慣病の治療されていても無症候性も多く、早期発見が遅れます。そのため、一般市民への啓発を目的として、市民・患者への情報提供も今回の改訂で新たに設けられました。足の冷感や間欠跛行(立位や歩行不可でふくらはぎの痛みで休憩必要)などがあれば早めに医療機関に相談してABI(上肢と下肢の血圧測定を行い比を取り0.9未満、1.4以上は異常、0.9-1.0未満は境界型)測定してもらうことをお勧めします。(ちなみに当院にはABI測定装置があり、フットケア指導士が私を入れて3人います)

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。