第93回 慢性腰痛治療にゲームが効果あり!?

慢性腰痛治療は急性腰痛のように一筋縄ではいかないことは整形外科であれば皆認識していますが、投薬、ブロック注射、運動療法を組み合わせてなんとか患者さんの痛みの軽減を図るよう工夫していますが、今回テレビゲームが慢性腰痛に効果があったことを報告した千葉大学の論文を紹介します。40例の慢性腰痛患者を経口薬のみ投与した20例(男性12例および女性8例、平均年齢55.6歳)と経口薬に加えてニンテンドースイッチのゲームソフトのリングフィットアドベンチャーの中のエクササイズゲームを週1回40分行った20例(男性9例および女性11例、平均年齢49.3歳)にランダムに割り付けた8週間後の結果は腰痛、臀部の痛みおよび痛みの自己効力感がリングフィットアドベンチャーエクササイズ群が有意に改善されましたが、痛みの破局思考や運動恐怖症といった心理スコアには有意な改善は認められなかったそうです。痛みの自己効力感とは達成をもたらすような一連の行動を計画し実行する 能力に対する信念と定義され,人がある課題を 遂行する際に自分の可能性を認識していることを指します。私も早速リングフィットアドベンチャーを体験しましたがリングを持ちながら押したり引いたり、歩いたり、走ったりで結構汗もかく事ができる優れたゲームソフトであると感心しました。慢性腰痛の患者さんがこのゲームをクリアすることが痛みの軽減につながる可能性がありますので、ゲームのやりすぎには他の弊害も出てきますが、拡張現実(VR)のような近未来のデバイスを使用できるようなプログラムにも期待したいところです。

 

参考文献 Sato T, et al. Games Health J. 2021 Apr 22. [Epub ahead of print]

 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。