第47回 最近の小中高校の組体操中止の報道について

-学校安全WebのHPから-

以前は運動会や体育祭で組体操が行われてきましたが、2014年に大阪府八尾で起こった10段ピラミッドの崩壊動画がテレビのニュースなどで流されたことが契機となり、マスコミが一斉に組体操の危険性を取り上げたことから注目されるようになりました。最近の朝日新聞の一面に組体操を中止する小中学校が増加していることや、日本スポーツ振興センターの災害共済給付の記録から組体操の事故は2015年に約8000件あり、うち4分の1が骨折であったこと、1969年以降から9人が死亡、92人が生涯の残るけがを負ったとする記事が掲載されたので、日本スポーツ振興センターの学校安全WebというHPを調べると、「体育的行事における事故防止事例集」で詳細に検討され、対策も報告されていました。平成27年の学校の管理下における事故災害で種目別には徒競走(リレー、障害物競走を含む)が 36.5%と一番多く、騎馬戦等対 戦型(棒倒し、棒引き、綱引きなどを含む)の種目が 19.7%で2番目に多く、組体操、むかで競走、二人三脚や縄跳びなども3%から5%程度発生しており、組体操が一番事故が生じやすい、というわけではありませんでした。運動会、体育祭中の事故は5.2%で、むしろ練習中に生じることが多く。組体操競技別にはタワー16%、ピラミッド13%、サボテン7,5%、飛行機2%、倒立15%、肩車8%であり、タワー、ピラミッドと同様に倒立も事故が多いという結果でした。組体操の安定度を高めるためには、土台の正しい姿勢は体を真っ直ぐに立てること 、土台と乗り手の結合部分 はしっかりと固定させること、組体操実施時は「顔を上げる」「声を掛け合う」こと、指導者自らが体験すること、平面ピラミッドに関しては、小学校では3段、中学校以上で4段までが限界であるなどの対策が報告されていました。またフローチャートとして、専門的知識、指導力を持った指導者がいて十分な指導時間が取れて、組体操に向けた教員の意識が全体的に高い場合にのみ従来の組体操でも良いが、それ以外では新しいスタイルの組体操を指導するように提言してありました。準備期間が短いことも生徒、先生側も負担になっていると思いますが、事故が生じるような危険なことは止めてしまえ、と組体操自体を否定するのではなく、安全性を保てるような工夫をして組体操を次世代につなげていって欲しいと願っています。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。