第24回 高齢者の急性腰痛みおける骨粗鬆症性脊椎骨折の割合

以前このコラムで骨粗鬆症による脊椎骨折は高齢者の約40%に存在するといわれ、脊椎骨折の新規発生患者数は年間30万~100万人といわれており、脊椎骨折を生じた方が、再骨折する確率は2年以内で約40%と述べました。このデータは2003年見松らが70歳以上の急性腰痛の36 %であり、高齢者の腰痛に脊椎骨折が多いことに警鐘を鳴らした報告に基づくものです。そこで今回2014年当院に来院した高齢者の急性腰痛症における新規骨粗鬆症性脊椎骨折の割合を調べました。その結果、114例(男性18例、女性96例)、平均年齢77才の新鮮脊椎骨折の割合は60%でした。骨折椎体数は1椎体55例,,2椎体13例であり、1椎体ではなく2椎体離れた部位での骨折例もあり、また仙骨の骨折例もありました。骨折群と非骨折群の比較で腰椎骨密度は非骨折群より低いという結果でした。今回の検討の結果、2003年の時点で高齢者の腰痛における脊椎骨折の割合が40%であったのが、今回の検討では60%に上昇していたことは私にとっても驚きでしたが、逆にこの結果はこの10年間で骨粗鬆症患者さんの割合が増加している可能性を示唆していると思います。高齢者の腰痛は若い方の腰痛とは違う視点(脊椎骨折の頻度が多いことを念頭におくこと)で診断する必要があることを思い知らされました。(この内容は本年第28回日本臨床整形外科学会にて発表しました)

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。