第22回 座りっぱなしが腰痛に及ぼす影響

腰痛の患者さんは重労働者に多いと思っておられる方も多いようですが、実はデスクワークの方も多いのです。日本の疫学調査では職種別腰痛有訴率は運輸71-74%、清掃69%、介護63&、看護46-65%、事務42-49%,建設29%という大規模研究があります。デスクワークの腰痛は長時間座位の姿勢(定期的に姿勢を変えないこと)が原因と考えられます。Calliietの研究で腰椎椎間板内圧は座位>立位>臥位の順に高く、他の研究では座位のうち、あぐらが最も椎間板内圧が高いので、特に冬場のこたつでの作業などは禁物です。また長時間座位は心血管、糖尿病や若年死亡など多くの健康リスクを高めることが分かっており、成人で週2.5時間の中等度の運動が推奨されていますが、80%は実行できていないのが現状です。最新の研究(Clinical Journal of the American Society of Nephrology)で1時間ごとに2分間、立ち上がって歩くことで死亡リスクが33%低下したという結果が出ました。腰痛もこれにならって休憩することも推奨されますが、もう二点注目すべきは座位姿勢と椅子選びです。いくら休憩をこまめに入れても普段の座位姿勢が悪ければ腰痛の解消にはなりません。また椅子の選択も重要になります。座位姿勢は椅子の後面にできるだけ座り、座面は沈み込まないでむしろやや上がっていたほうが骨盤が立つ(骨盤が前傾するペルビックサポート)効果があり、腰椎の前弯が保てます。実際の椅子の背面には腰椎前弯を保つ(ランバーサポート)効果を有するものは少ないので、骨盤の上縁の位置に後ろにクッションやタオルを置いたり、車の運転や新幹線、飛行機での長時間座位にも有効ですので試してみてください。 次回は椅子選びついてお話しします。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。