第16回 ロコモティブシンドロームについて

最近少しづつ認知されてきたこの言葉ですが、どのくらいの方がご存知でしょうか?

2014.3.23 山口県健康づくりセンターで開催された健康づくり県民公開講座 学んで笑って健康づくり講座 で私が講演をしましたが、800名収容の会場は満席に近く、ロコモへの関心をうかがい知りましたので、その講演内容をお伝えすることで、ロコモについて知って頂ければ幸いです。

〜自分の足で一生 歩いていくために〜 さあ、はじめよう ロコモティブシンドローム予防

日本整形外科学会によるインターネット調査ではロコモの認知度は平成24年度で 17.3%、平成25年度で26.6%であり、厚労省や日本整形外科学会は平成34年度までに80%の認知度を目指しています。会場でもロコモの認知度は3割程度でした。ロコモとはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略で、主に加齢による運動器の障害のため、移動能力の低下をきたして、要介護になっていたり、要介護になる危険の高い状態のことをいいます。先進国の高齢社会(65才以上の割合が7%以上)から高齢化社会(14%)になるのにフランスでは115年、イギリスでは47年かかったのに日本では24年であり他に類を見ない速さです。ちなみに山口県での65才以上の高齢者は41万8000人で全国5位で,100才以上は624人です。要介護者はH24には500万人を超えるとされ、一方でロコモ予備軍もネット調査で4700万人と推測されており、メタボとメタボ予備軍をあわせた1980万人を凌駕する数です。

運動器症候群の運動器とは身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経などの身体運動に関わるいろいろな組織・器官のことです。呼吸器、循環器、消化器といった内蔵を支えるいわば車のエンジンやタイヤの役割に相当します。運動器の障害は生命の危険に至ることが 少なく、関心は高くなかった運動器に痛みや支障が発生してから、その大切さに気づくのが実状であり、自己の『自立と尊厳を支えている』のが運動器なのです。厚労省国民生活基礎調査 では全国民の有訴のうち、男女とも腰痛と肩凝りが最も多く、次いで関節痛です。皆さんは要支援・要介護状態の要因の第1位は転倒・骨折、関節疾患による「運動器の障害」だということをご存知ですか?

ここでロコモの原因となる3大疾病は腰部脊柱管窄症、変形性膝関節症、骨粗鬆症による骨脆弱性骨折です。健康な状態から要支援、要介護に至るまで,移動能力はひそかに衰えていきます。運動習慣のない生活ややせ過ぎ,肥満も運動器の障害の原因となり、運動器の痛みを放置しておくと重篤化しますので、ロコモをほっておくと・・・気づいたときにはもう要介護という状態になっている可能性があります。私も実は変形性膝関節症になっています。

では、ロコモの予防法はないのでしょうか?それがロコトレです。その前にまずはロコモの診断をする必要があります。

1)片脚立ちで靴下がはけない
2)家の中でつまずいたり滑ったりする
3)階段を上るのに手すりが必要である
4)横断歩道を青信号で渡りきれない
5)15分くらい続けて歩けない
6)2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である
7)家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である

上記の7つの項目のうちひとつでも当てはまればロコモが疑われます。 ロコトレの意義は運動器障害がある人もそのレベルに応じてでき、、自分でできる、自宅でもできる、特別な器具を必要としないことが特徴です。 トレーニングする前に姿勢とお腹に力を入れることを意識しましょう!(腹横筋を意識するにへそのした丹田を押さえたり、肛門を締めるのも効果があります)

ロコトレ1は片脚立ちです。ダイナミックフラミンゴ療法ともいいます 1分間片足立ち3セット行います。机や平行棒につかまりながら行ってください。股関節を持ち上げる腸腰筋、その他大腿四頭筋、腰背筋を意識します 転倒予防にも有効です。あまり前屈みにならないよう注意しましょう。

ロコトレ2 スクワットです。肩幅より足幅を広めにとりつま先は30度ひらいてゆっくり5~6回1日3セット股関節、膝、足関節を連動しておしりをひくように体をしずめます。

その他カーフレイズ(つま先立ち)、フロントランジ(片脚を一歩前に出して腰を深く下げる)もあります。 ロコモの予防・対策6か条として

1.まずは姿勢を見直す!
2.小まめにからだを動かす!
3.小さな痛みも見逃さない!
4.食事はからだ作りの基本!
5.ストレッチはゆっくりと!
6.スポーツ量は加減も大切!

があげられますので、無理しないレベルから始められるとよいでしょう。 ロコモ,ロコモ予備軍の方、ロコトレ,いつから始めますか、やるなら・・・今でしょ!! ご清聴ありがとうございました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。