第06回 特異的腰痛について -その1腰椎椎間板ヘルニア-

代表的疾患とその診断と治療-その1腰椎椎間板ヘルニア-

腰椎椎間板ヘルニアは、腰の椎間板の一部が突出して腰の神経を圧迫して炎症をおこすことにより、腰や脚に激しい痛みやしびれを引き起こす疾患です。年齢による椎間板の変性に加えて、前屈動作等の繰り返しで椎間板の中の髄核という組織が飛び出すことが原因となります。代表的な椎間板ヘルニアは座っていると痛みが強くなります。椎椎間板ヘルニアは、患者数は、日本国内で約100万人といわれ、比較的若い方に多いのですが、高齢者でも椎間板ヘルニアは存在しますし、なかには外側ヘルニアという特殊なタイプのヘルニアもあります。 腰椎椎間板ヘルニアで手術する人の割合は10-30%ぐらいといわれています。まず薬(痛み止め)、安静(座ることを避ける)、ブロック注射(神経根ブロックと硬膜外ブロック)、リハビリ(温熱療法,運動療法)でほとんどの方がよくなります。しかし手術を早くした方がいい、あるいは緊急で手術しなければよくならない場合もあります。それは足の麻痺が急に進んだ場合とおしっこをしたくてもでないという排尿困難が出た場合には緊急手術をすることもあります。ヘルニアは通常は片方の足の症状が多いのですがこのばあいはど真ん中に大きなヘルニアが出ている場合が多いです。ブロック療法には、神経根ブロックと硬膜外ブロックがあり、神経根ブロックは神経に直接針をあてて痛み止めを浸潤させますので、神経にあたった時や痛み止めを浸潤するときに痛みを伴うことはありますが痛み止めの効果はすぐ出ます。硬膜外ブロックは腰の骨の間か臀部のほうから薬液を神経の周りに浸潤させる方法ですので皮膚の上から針を刺した時の痛みはありますが、薬液が入るときには痛みはほとんどありません。わかりやすくいえば、根ブロックはピンポイントで効かせる方法で、硬膜外ブロックは広く効かせるときに使用します。

診断は整形外科医(特に脊椎専門医)であれば、問診と神経学的診察でどのレベルの障害かもある程度わかりますが、X線では診断できず、MRIが必須の検査となります。若年者のヘルニアで軟骨終板の剥離の診断のためにCTが必要な時があります。

手術は以前は顕微鏡、最近は内視鏡を使用しての低侵襲手術が行われています。内視鏡手術のメリットとして傷が小さいこと、早く起きれること、などが挙げられますが、これは手術される先生の得意な方法でやってもらうことをお勧めします。手術後は数日で起きれ、疼痛は速やかに改善しますが、術後しびれ、筋力低下は残存することはあります。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。